上 下
60 / 681
2章 魔法少女と竹林の村

59話  魔法少女とお礼

しおりを挟む

 こう何度も神速を使うと、速さの感覚が完全になくなるね。
 速すぎてもうよく分からなくなってきた。

 神速は便利過ぎるから、ほんとに使わないといけない時だけにしよう。

「……今はその時ということで。」
言い訳を1人でしながら、私は村に神速で戻る。

 今回は仕方ない。これだけ遠いんだから神速を使わないと、時間までに村に帰れなくなっちゃう。

 だからこれは仕方のないことなんだよ。

 そのままのスピードで竹藪を掻い潜り、またすぐに村に着いてしまった。

 時間は昼時。真上に太陽が昇っていて私の肌をジリジリと焼いてくる。

「これは早急に上着を確保しないと……」

 あの謎の店の人には悪いけど、何度もお世話になりそうだね。こんな短時間で、また上着がなくなるんだもん。

「ここの人は理解があってよかった。なかったら酷いことになってたよ。」
村人たちに感謝をしながら、私はアボデルさんの家に向かう。

 そろそろ私も街に戻らないとって思うけど、1つしたいことがあるんだよね。
 ほら、この村ってどこにも交流がないから今回みたいに危機が迫ってもどうにも出来ない。

 依頼届を出しに行ったっきりの被害者まで出てしまっている。これはなんとかしなくては。

 ということでアボデルさんの家に着き、コンコンとノックをして扉を開ける。

「失礼します…アボデルさーん。いますかー?」
反応がなかったのでガラガラと玄関の扉を開き、中に人がいないかを確認する。

「って、寝てる……」
アボデルさんが、居間で寝転び少しいびきをかいて寝ていた。

 これって、入ってもいいものなのだろうか?住居侵入罪とかならないよね?

 そもそもこの世界に住居侵入罪があるの?無いでしょ。

 まぁ常識的に考えて、勝手に入るのはよくなよくない。

 仕方ないからここからアボデルさんを起こすことにする。

「あの、戻ってきたんですけど、今大丈夫ですか?」
普通に考えればどこからどう見ても大丈夫じゃないけど、今の私にそんな考えは無かった。

「……あぁ、すまない。寝てしまっていた。」
私の声で起きたアボデルさんが、そう言ってすぐに部屋に通してくれた。

 そこで、私がさっきしたことを説明した。

 竹藪の奥、この巨大竹の周りに洞窟があって核石から魔物が生まれていたことや、魔水のことも一応伝えておいた。

 この村の周りのことだ。ちゃんと伝えないと、また何かあった時に対処ができなくなっちゃう。

「ふむ……そんなものがあったとは。」
      
「一応、そこにいたカロォークも討伐しておきました。」
討伐の証として一応核石のかけらを持ってきといたから、ステッキから取り出して見せる。

「本当に何から何まで感謝しかない。」
そう言ってまた頭を下げる。

「そろそろ、私も帰りたいんですけど、一つ相談乗ってもらってもいいですか?」

「ソラ殿の頼みなら。」
そう言ってくれるので、私は遠慮なく話すことにする。

 何をしたいかというと、この村とあの街をつなげたいと考えている。

 そのためには、私の力で竹林を移動させて開けさせる必要がある。
 その許可を貰いたい。

 その許可を貰ったら、次はフィリオのところに行って貿易の許可を貰おうと思う。

 まぁ、それが貰えなかったら普通に道を作るで終わらせよう。

「そんな事をしてもらってもいいのか?この村にとって嬉しい事しかないが……」

「別にいいですよ。そうした方が私もこの村に行きやすいですし。」

 竹は簡単に動くし、街に戻ってフィリオに押しつけちゃえばなんとかなる。
 そこまで距離が離れてるわけでもないから、馬車の速度とか分かんないけど半日もかからないと思う。

「じゃあ街に戻りますのでまた会いましょう。」
私は少し急ぎめに立ち上がり、アボデルさんの家を出る。

「ソラ殿、気をつけてな。」
そう言ってくれたので、手を振っておいた。

 ちょっとカロォークに時間かけすぎた……カフェの食材とか足りてるかな?
 一応少し多めに渡してるけど、無くなってたら申し訳ない。

 久しぶりにロアとも会いたいし、帰ったらその日はゆっくり過ごそうかな?そうしよう。

 最近忙しすぎたからね。17歳の女の子に、肉体労働は似合わない。やっぱり子供は元気に遊ぶのが1番だね。

「でもまた忙しくなりそう。」
門を出たあたりで、そんな風に呟いてみる。

 だって貿易に関わるんだから、絶対大変でしょ。

「フィリオに押し付けようかな。」
本気でそんな考えをして、最後はよしそうしようと決断する。

 私も悪魔じゃないから、最初から最後まで押し付ける気はない。途中から押し付けるんだよ。

 最初はちゃんとやるよ?本当だよ?
誰かにそんな言い訳のような言葉を吐き、少し神速は使わずに走って行くことにした。

———————————————————————

 すみません、今回めっちゃ短めです。
話が思いつかなかったんです。許して下さい!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員奈央。私に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に吊り上げてしまった……私の好みドンピシャなイケメン!!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

【猫画像あり】島猫たちのエピソード

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~ シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。 2024年4月15日午前4時。 1匹の老猫が、その命を終えました。 5匹の仔猫が、新たに生を受けました。 同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。 島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

泥酔魔王の過失転生~酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない!~

近度 有無
ファンタジー
魔界を統べる魔王とその配下たちは新たな幹部の誕生に宴を開いていた。 それはただの祝いの場で、よくあるような光景。 しかし誰も知らない──魔王にとって唯一の弱点が酒であるということを。 酔いつぶれた魔王は柱を敵と見間違え、攻撃。効くはずもなく、嘔吐を敵の精神攻撃と勘違い。 そのまま逃げるように転生魔法を行使してしまう。 そして、次に目覚めた時には、 「あれ? なんか幼児の身体になってない?」 あの最強と謳われた魔王が酔って間違って転生? それも人間に? そんなことがバレたら恥ずかしくて死ぬどころじゃない……! 魔王は身元がバレないようにごく普通の人間として生きていくことを誓う。 しかし、勇者ですら敵わない魔王が普通の、それも人間の生活を真似できるわけもなく…… これは自分が元魔王だと、誰にもバレずに生きていきたい魔王が無自覚に無双してしまうような物語。

処理中です...