上 下
58 / 681
2章 魔法少女と竹林の村

57話  魔法少女は見つける

しおりを挟む

 寝落ちする人達が増え始め、食事会も終わりが見え始めた。

 予想外にアボデルさんがお酒に強くて、ずっと起きてお酒を呑んでいたというのは、また別の話。

 私も当然寝落ちしてしまって、今、朝早く起きてしまったというわけだ。

「まだ、日は昇りきってないね。」
庭に出て、私は空を見上げる。

 みんな寝ちゃってるし、起こさないようにしないと。

「そういえば、どうやってカロォークはあんなところまで来たんだろう?」
1つの疑問が頭に浮かび、1人、首を傾げる。

 そうだ。あんな巨体で、あんな所まで来れるわけがない。
 あそこに行く方法としては、竹藪の奥の、私がまだ知らない向こう側から来る。
 もう1つが、私が行ったように村の裏口からの道。

 元からあそこにいるんだったら、もっと前から被害が出てるはずだし、突然竹の味を覚えたかもしれないけど、そんなこと考えてたらキリがない。

 どこからか、やって来たってこと?

「謎が深まる……考えれば考えるほど、横に広がっていく。」
つくづく探偵の人は、すごい仕事をしてるんだなと、思い直した瞬間だった。

 さっきの話の続きは、えっと、そうだ。カロォークは、どこからやって来た?って話か。

 もし、その先にカロォークの巣でもあったら……またこの村は、カロォークの被害に遭っちゃう。
 そういう人間の都合で排除されちゃうのも、可哀想ではあるけど、あれに同情の念を抱くのはちょっと……

 私はカロォークの姿を思い出し、体を抱いて振るわせる。

「でも、行ってみたほうがいいのかな?」
私は地面に落ちていた小石を、池に投げて言った。

 倒す手段はある。
いなくても、いないということが分かるから、行って意味がないということはないはず。

 なら、アボデルさんに大体の地図を貰って、行ってみようかな?

「最後の一仕事といきますか。」
バッと立ち上がり、アボデルさんのところに向かおうと、振り返る。

「どんな一仕事をするのです?ソラ殿。」
「アボデルさん⁉︎」
いきなりのことで、思わず叫んでしまった。
 急いで口を塞ぎ、私は「聞いてたんですか?」と問いかける。

「まぁ、聞いてはいた。」

 それなら、早く言ってほしかった。
どこから聞いてたか、聞かないのかって?そんなことしたら、悲しくなっちゃうじゃん。

「それで、一仕事というのは?」
そう聞き返されたので、私はさっきまでの考えを話すことにした。


「そうか、それはありがたいことだ。重ねて礼を言おう。」

「それは、終わった後に言ってください。」

 まだやってもいないことでお礼を言われても、変な気分にしかならない。

「あの竹藪は、この村が出来た時からあったそうだ。この先に何があるかなんて、考えたことも無かった。」
だが、と真剣そうな顔になって、話を続ける。

「この先には、魔物の原点があると、聞いたことがある。」
そういい、竹藪の地図らしきものを手に持ち、私の元に歩いてくる。

 原点?それも魔物の?それって核石ってことになるのかな。核石から魔物が生まれて、核石にまた戻る……

 そう考えていると、アボデルさんが地図を広げた。

「これが竹藪の地図だ。」
それを見ると、一面緑でとんでもないことになっていた。

「この先、まだ未踏の地。そこにカロォークがいるやもしれん。」
指先で、くるっと楕円を描いて、右上のあたりを囲った。

 この辺り、ってことは……

 カロォークを発見した場所に点を打ち、線でななめ45°に引くと、アボデルさんが指で描いた楕円の中心に、ピッタリと合う。

「ありがとうございます、じゃあ行ってきますね。」
思い立ったら吉日。思ったことは、すぐに行動したほうがいい。

「ソラ殿、気をつけて行ってきてくれ。」

 私は、神速を駆使しながらうまい具合に竹藪をくぐり抜ける。

 迷うことはないのかって?魔力を落として置いてるから、道導みちしるべになってくれる。

 そんな風に走り続けていると、やはり神速の凄さとありがたみがヒシヒシと伝わってくるわけで、えっと、何が言いたいのかというと、そうだ。

「もう、着いてしまった。」
何度地図を確認しようとも、目の前にはどでかい竹、霊木ならぬ、霊竹のようなものがある。地図を確認すると、そこにも巨大な竹が描かれている。

 早い、あまりにも早すぎる。

「この竹に、何か秘密でもあるの?」
適当に一周ぐるっと回ってみようと、普通に歩き始める。

「危なっ!落とし穴?なんでこんなところに…」
若干斜めの地下通路みたいなものがあり、ここが目的の場所だと言わんばかりの、謎の通り道がある。
 
「見つけちゃった、のかな?」
恐る恐る、魔力感知を使ってみるけど、魔力が強すぎて感知ができない。

 こういう時の魔力感知って、なんでこんなに役に立たなくなるんだろう。

「もっといいスキル頂戴よ。」
謎の仕組みに文句を言いながら、仕方なく穴の中に入る。

 カロォークがいたら、片っ端からレールガンを撃てばいいし、出力上げれば同時に倒せたりしない?

 色々な気持ちが合わさり合い、結局は好奇心が勝ったため、ウキウキで探索を開始した。

———————————————————————

 なんかめっちゃ急にテンポが良くなりました。
これは私の都合です。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

処理中です...