上 下
44 / 681
2章 魔法少女と竹林の村

43話  魔法少女は討伐に向かう

しおりを挟む

 今日は、約束の討伐の日。

 依頼を無事達成させるために、私は万全な状態にしておいた。

 昨日は夜、魔力は使わなかった。(髪を乾かすためには使ったけどね)1人枕投げもしなかったよ。

 温泉にもゆっくり浸かって、(それはいつものこと)何があっても大丈夫なようにしておいた。

 今の私は、最強ってことだよ。

「ソラ殿、今日は来てくれて、感謝する。」

「行くって言ったからね。」

 逆に行くって言って来ない人って、なに?私は、そんな約束を破るような、酷い人じゃないよ。

 いい人だよー…….多分。

「ソラ殿1人に行ってもらうのは悪い、チャール。着いて行ってやれ。」

「分かりました、アボデル村長。」
チャールさんは、アボデルさんの頼みを快く受け入れた。

 そこから何やかんやあって、アボデルさんの家を出発して、チャールさんを案内係として進み始める。

 カロォークがいる場所は、昨日の竹林とは真逆で、ちょっと開けたところだ。

 まぁ、開けてなければ、カロォークは大きさ的に入らないよね。

 ちゃちゃっと倒して、ちゃちゃっと帰ろう。

「チャールさんは、カロォークって見たことあるんですか?」

「はい、一度だけ。」
私は気になって聞くと、そう返って来た。

 へー、見たことあるんだ。どんな印象だったか聞いてみようかな?

「実際に見てみて、どう思いました?」

 怖かった?気持ち悪かった?色々あるけど、どうなんだろ。

「最初は、驚きました。この村に、あんなに大きな魔物が現れて…なんとも言えない恐ろしさがありました。」
初めて見た時のことを、話し始める。

「よく分からないけど、凄い重圧があって、竹の力を吸い取っていくんです。そして周りには、枯れ果てた竹が落ちていて…」
想像してみると、ちょっと気持ち悪くなって来た。

 …待って、力を吸い取る?
え?あの、やたらと種類が豊富な竹の能力を、カロォークは持ってるってこと?

 それって結構まずくない?

「絶望して、言葉が出なくなって、息を顰めてやり過ごしました。」
逃げたら襲ってくるかと思って…、とその時のことを思い出して、一気に震えている。

「でも、今回はソラさんがいるから、大丈夫ですね。」
ニコッと笑って、安心です、と言った。

 荷が重たいよ。私は魔法少女だけど、普通の17歳の女の子だよ。そんな子供に、その重荷は辛いよ。

 やれるだけやってみるけど、ダメならそれは仕方ない。
 その後に、作戦とかも考えるつもりではいるけど、ダメそうなら、諦めるしかない。

「期待しすぎないでくださいね。」
私は改めて、そう口にして歩き進める。

 話してる間にも、着実と進んでいって、立ち入り禁止の看板と、ロープの張られてる場所に着く。

「跨いでいってください。」
気をつけて下さいね、と私を気にかけてくれるけど、逆に、自分の足元が疎かになったせいで、躓いた。

「大丈夫ですか⁉︎」
膝についた砂を払いながら、イテテ、と苦痛を漏らす。

「ちょっと貸して下さい。」

「はい?」
私はチャールさんに、膝から手をどかすよう言って、ステッキをかざす。

 ちょっと掠ってるだけだけど、念には念を。

 これから、カロォークの討伐があるんだから、小さなことでも、解決出来るなら、なるべくしといたほうがいい。

「ヒール。」
ステッキから、癒しの魔力が注がれ、擦りむいた膝が、あっという間に塞がる。

「おぉ、凄いです。これが魔法ですか?」

「まぁ、ね。」
もっと凄いのもあるけど、まぁ、今はこういうのが魔法、っていうのが分かってくれればいい。

 竹林までとはいかず、竹藪程度の竹の量で、そこを歩いて進んでいく。

 獣道はできるだけ避けて、カロォークがいそうなところを探し回る。

「カロォークの好物は、上質な竹とアボデル村長が言ってましたので、こっちにある、美風竹びふうたけの方に行きましょう。」
右の方向に指を差し、そうっと、警戒しながら進む。

 美風竹?なんだろう、その竹。言葉からすると、美しい竹ってことなのかな?

 上質と美しいって、ちょっと違くない?
美味しさで言ったら、食べられるだけの方が良くない?

 でも、力をつけるためだったら、再生するあの竹を使った方が、個人的にはいいと思う。

「ソラさん?」

「いや、なんでもないです。」
私も急いで、チャールさんを追って美風竹の元に行く。

「…いませんね。」

「そうですね。」
やっぱり、能力を欲してるか、食糧を欲してるかの2択かな?

 そうなると、力だと私は予想する。

「あの、竹の中でも、1番強い力のある竹って、なんですか?」
私は、当たりをつけるために、チャールさんにそんな竹がないかを、聞いてみる。

「そうですね……僕的に、1番厄介なのは、変形竹へんけいだけだと、思うんですけど…」

「じゃあ、それってどこにありますか?」
そこの周りに、カロォークがいるかもしれない。

「変形竹は、その名の通り、自由自在に変形していて、その竹の存在を認識するだけで、数年かかったんですよ。」
すいません、と申し訳なさそうに、俯いてしまう。

 そんな貴重な竹なの?分からないだけで、いるのかもしれないけど、見つけられないんだったら、いないも同然だ。

 他の竹を、探すしかないのかぁ。

 そんな感じで、美風竹のゾーンを抜けていく。

 ちなみに、美風竹というだけあって、ツルツルして、光ってて、綺麗だった。

 お土産で持って帰ろうかな?

 この街と、私の住む街で、交易でもしてくれたら嬉しいんだけど…何かいい案ないかな?

 いやいや、そんなことより今は依頼だよ。

 首をぶんぶんと振って、考えを振り払う。

「ソラさん、近いかもしれません。」
チャールさんの顔色が変わり、トーンを低めて警戒した様子で、周りを確認する。

 私も同じく周りを見ると、

———————————————————————

 そろそろ敵が登場しますよ。
まだまだ、終わりには遠いですけどね。

 ということは?ですよ。どうなると思います?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...