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1章 魔法少女と異世界の街

21話  魔法少女は商業ギルドに行く

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 領主の家を出てから20分くらい経っただろうか。まだ、着かない。

 領主の家と商業ギルドとはだいぶ遠い。
私は更に数分歩き、神速Ⅴで商業ギルドに進む。

「最初から神速で行けばよかった…」
今更思い出したことに少し後悔する。

 周りに驚かれるけど、気にしたら負けだ。よし、ギルドに入ろう。

「失礼します。」
小さく呟いてギルドに入る。

 結構賑わってる。何個か受付があるけど、どれも埋まってる。

「待つしかないよね。もっと早く行かなきゃだめだった?」
私は1番早く終わりそうなところを探す。

 すると1番右奥の受付に私に向かって手招きをする人がいる。こんな人が多いのに、なんであそこだけ人がいないんだろ?

「ソラさん、早く来てください。なんで私のことをじっと見てるんですか?」

「いや、だってこんなに人がいるのに行っていいのかと思って。」
受付まで行き、椅子に座りながらそう言う。

 パッと見た感じ20代後半くらいかな?茶色の巻き毛でふわふわな髪だ。
 なんか触ってみたい。

「っていうかなんで私を待ってたの?」
私はその疑問について尋ねる。

 だってそうだ。今日、私がここギルドに来ることは誰も知らないはずだ。

「先程、フィリオから手紙が来たのよ。だからあなたを待っていた。それだけよ。」

 えっ、手紙が来たの?あとこの人、領主のこと呼び捨てしてなかった?気のせいじゃないよね。

「それでは、お店かその土地を買いたいんでしたよね。」
淡々と言う。

「この、中心より少しだけ離れたこの辺りの道沿いのこことかどうですか?これが店の間取りです。」
紙を私に渡しながら早口で言う。

 早い早い。もっとゆっくりでお願いしたい。
でも、聞き返せそうにない。

「うーん、もっとこう、軽い感じのお店にしたいから、レストランって感じではないのにして欲しいんだけど。」
私は要望を出す。

「はい。要望にあったお店を探しますね。あと、私の名前はマリンです。」
隙を見つけて自分の名前を教えてくれた。

 そういえば聞いてなかったな、名前。
マリンか。いい名前だね。

 マリンさんは奥に行って資料をゴソゴソと探る。
いい資料を見つけたのか、それを手に取ってこちらに戻ってくる。

「ソラさん、これなんてどうです?店内は広く、でも軽い感じの雰囲気で入りやすいお店ですよ。」
マリンさんは軽く説明して、資料を見せる。

 …まぁ、いい感じの店なんじゃない?でも、値段だよね。高過ぎたら買えないし。

「大丈夫ですよ。紹介状もあるんですよね。あと、私からも値引きしておきますよ。」
ウインクをして笑いかける。

 そういえばあったね、紹介状。私から頼んだのに私が忘れてどうするの。
 渡し忘れていた紹介状をマリンさんに渡す。

「はい、確認しますね。」
手紙を開封し、中身を確認した。

 それを手早く読み始め、手紙を仕舞う。

「間違いなく、フィリオの手紙ですね。お安くしますよ。」

「じゃ、いくらにしてくれるの?」
机に腕をかけ、言う

 私は今から少し交渉をしようと思う。安くしてもらうためにね。

「本当のところ、一括で支払う場合、金貨50枚ですけど私とフィリオの権限で金貨35枚にしようと思います。」
「15枚も安くなりましたね」と笑顔で言う。

 でもまだちょっと高い。もう少し安くしてもらいたい。

「25枚じゃダメ?」
私は半額の値段を頼む。
 でも、これは流石に無理だと思う。
 なのになんで聞いたのかって言うと、先に重いお願いを言った後に、それより軽いお願いを言うと叶いやすいからと聞いたことがあるからだ。

「半額ですか?さすがにフィリオの権限ではそこまでは無理です。こちら側が損をしてしまいます。それでは商売が成り立ちません。」
ですよね。知ってました。

「なら、32枚ならどうです?」
さっきより7枚もした。

 こう言うとなんかお得な感じがするけど、実際は3枚安くなっている。

「…仕方ないですね。金貨32枚で行かせてもらおうと思います。それでは支払いを。」
よし、承諾された。

 …スネイク討伐で稼いだお金が大半飛ぶな。
また稼げばいっか。

「はい、金貨32枚と。」

「一括ですね。」

 なんか他の商人がこっちをみてるような気がするけど…
 あぁ、こんな子供が金貨32枚なんて大金を一括で支払ったからか。そんなの私だって見たくなるよ。

「皆さん見てますね。」

「私みたいな子どもが大金を払ったからじゃないですか?」

「違いますよ。を値引きしようとしたからですよ。あと、50枚っていうのは嘘です。」
え、嘘?一等地?どういうことなの。
 私は意味が分からず頭が混乱する。

「元は80枚ですけど、ソラさんがどれだけ交渉しようとするかを確認したかったんですよ。」

「本当に交渉してくるとは思わなかったですよ。」
ふふふと軽く笑っている。

 何で笑ってるの。
私は目を細めてマリンさんを見る。

「そんな怖い顔しないで。結果的に安くなったんだしいいでしょ。」
まぁ安くなったんだから文句は言えないよね。

「それでは明日、店を内見致しましょう。」
それ、最初にすることだった気が…

「分かりました。ついでに掃除とかもしていきたいんだけど。」
内見と掃除、2回に分けてやるのは面倒臭いので、そう聞く。

「別にいいですよ。それでは明日、昼前にはギルドに。」

 そうして明日、内見兼、掃除をしにギルドで待ち合わせすることになった。
 
 このときの私はまだ、マリンさんがギルドマスターだということを知らなかった。
 
———————————————————————

 実はマリン、ギルドマスターなんです。
領主を呼び捨てにしたりしているので気づいたかもしれませんけど。
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