BOX・FORCE

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第2章 七魔編-七魔団結成-

[第6話:Lucifer]

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「…樫間 紘紀…やばい奴と共にしてしまったようだな…。」

道影と樫間の戦いを側から見ていた堀崎は、そう呟いた。

「…あれは、並の人間じゃない。"BOX・FORCE"という組織にいたというだけじゃない。彼自身の潜在的な強さなのかもしれない…。」

葉坂も、賞賛の言葉を贈った。


「…次は新宿。歌舞伎町へ向かう。」

樫間は、何事もなかったように3人にそう言った。

「…仲間は何人集めるつもりだ?」

道影が樫間に問いかける。

「全部で7。この"七魔箱(デビルズ・ボックス)"の所持者を集めた時、"七魔団"の完成だ。」

樫間はそう言った。
樫間、堀崎、葉坂、道影の他にあと3人、"七魔箱"の所持者がいる。

「ほう。で、仲間集めて何する気だ?」

道影は、興味深そうに樫間に問いかけた。

「…"BOX・FORCE"を攻める。それが俺の目的だ。」

樫間は、簡潔に言った。

「…"BOX・FORCE"…?なんだそりゃ。新手の勢力か?」

道影はどうやら、"BOX・FORCE"の事を知らないようだ。
道影は、キョトンとした顔でそう呟く。

「…俺が元々いた組織だ。2年前と7年前の…その元凶が"BOX・FORCE"にいる。そいつを潰す為に"七魔団"を結成する。」

樫間の言葉の意味を、道影はまだ深くは理解していなかったが、そこに否定の意思表示はなかった。

「…まあ、よく分んねぇけど要はその"ボックスなんちゃら"を倒せばいいんだろ?上等じゃねぇか。」

道影の目は、興味と闘志を示している。

こうして4人は、樫間の示す新宿・歌舞伎町へ向かった。




_新宿・歌舞伎町。
時刻は18時を回ろうという所だったが、この街は夜の闇というものを知らない。
数々の店の明かりや、ネオンの光に包まれた街の中に、スーツ姿の1人の女性がいた。

「…はぁ…。事務職のバイト、結構高収入で良かったんだけどなぁ…。結局また、私のミスでクビかぁ…。…私、本当人生ついてないなぁ…。」

細身でスラっとしたスタイルの良いスーツ姿とは裏腹に、金髪にパーマがかったショートボブの姿のその女性は、深いため息をついてそう呟いた。

(…最近本当全然ついてない。この前のドラマのオーディションは最終で落ちたし、今度の演劇の本命の役には選ばれないし…おまけにバイトは次々クビになるし…。
それもこれも、この怪しい"箱"のせい…なのかな…?)

彼女は、パンツスーツのポケットに右手を入れると、中にしまった"箱"を触り、その存在を確認していた。

(…とはいえ…何か捨てちゃいけないような…神秘的な力があって…捨てたらもっと罰当たりな感じになったらどうしようって感じだし…。)

頭の中で処理し切れない程のスピードで、彼女は色々な事を考えていた。
しかし、思い出したかのように首を振った。

(いけない。もうすぐ18時。時間に遅れるわけにはいかないわ。)

そうしているうちに、彼女は歌舞伎町の中にあるキャバクラの前に辿り着いた。

「…えーっと…、ここかな…?…夜職はちょっと抵抗あるけど…生活していく為ならしょうがないか…。」

どうやら、彼女は今日からここで働こうとしているようだ。
彼女がそう呟いた瞬間…

「…あの…すみません。」

彼女の背後から、突然低い男性の声でそう聞こえた。
彼女は驚いて、ビクッとしながら声のする方に振り向いた。

「お姉さん、ここで働いてんの?俺、今から行こうと思うんだけど、一緒に遊ばない?」

その男の姿は、いわゆるヤクザを思わせるような派手な服装であった。

(…やばい…私…殺される…!?)

彼女は口を真一文字に結びながら、必死に逃げようと頭では思っていた。
が、体が動かない。

(…どうしよう…逃げなきゃ…なのに…体が動かない…。)

彼女の瞳には、今にも溢れそうな程の涙が浮かんでいた。

その瞬間_

「悪ぃな。俺はその女性に用がある。遊ぶのは諦めてくれ。」

男の腕が彼女に伸びた瞬間、その声と共に男の腕が掴まれた。

(…えっ…。)

彼女は涙で歪む視界の中で、自分に声をかけた男の腕を掴む、もう1人の男の姿を捉えた。
その男は、青白い髪に灰色のローブを羽織った姿をしていた。

「あぁ?誰だテメェ。俺が今からこの姉ちゃんと遊ぼうとしてんだよ。邪魔すんじゃねぇよ!」

ヤクザ風の男は、そう叫んだ。
しかし、青白い髪の男は手を離すどころか、更に強く握った。

「…ごちゃごちゃうるせぇよゴミが。2度も同じ事言わせんな。殺すぞ。」

ヤクザ風の男の掌は、血流が止まりそうな風に変色し、震えていた。

「…おいテメェ、良い度胸してんじゃねぇか。うちのシマで暴れてみろ…生きて帰れねぇぞ!」

ヤクザ風の男は、絞り出したような声でそう言うと、腰に隠し持った拳銃を取り出そうとした。

しかし、その男が静かになるのに1秒もかからなかった。
ヤクザ風の男は、脳天を撃ち抜かれたように脱力しながら倒れ、掴まれていた腕は不自然に曲がっていた。

青白い髪の男は、冷静に彼女に声をかけた。

「そう言う事なんで、ちょっと付き合ってもらえますか?」

男は、彼女が返事をするよりも先に、彼女の体を抱えて姿を消した。

(…えっ…えええええええええ!?!?!?!?)

彼女は、あまりの衝撃に気を失ってしまった。



彼女が気がつくと、そこは月明かりに照らされたとあるビルの屋上であった。

「…こ、ここは…私は一体…。」

彼女がそう呟くと、周りには先程の青白い髪の男と同じ、灰色のローブを来た人が他に3人囲んでいた。

「…少々手荒な真似をして、申し訳ない。俺は、樫間 紘紀。"七魔団"団長だ。」

彼女を連れ去ったのは、樫間であった。
樫間の他にも、堀崎、葉坂、道影が顔を連ねていた。

「…樫間…いや、紘紀さん。この人、本当に俺たちと同じ"七魔箱"の所持者なの?そうには見えないけど。」

葉坂は、女性を目の前にして緊張しているのか、なぜか樫間を丁寧に呼んでそう言った。

「お姉さん、名前は?」

葉坂を他所に、道影が彼女に声をかけた。

「…私は…東雲 香織(しののめ かおり)。」

彼女は、そう名乗った。

「…あなた達は一体…"七魔箱"…?…"七魔団"?劇団の方か何か?」

東雲は困惑していた。
聞き慣れない言葉の数々と、ここまでの出来事で
完全に脳内が追いついてきていない。

「…いきなり色々で分んないですよね。申し訳ないです。"七魔箱"っていうのは…こういうの、東雲さんの元に届いてたりしないですか?」

堀崎は、東雲を優しく宥めながら、"ベルフェゴール"の箱装を自分の掌に乗せて見せた。

「…あっ…もしかして…この"呪いの箱"の事?」

東雲は、パンツスーツのポケットから思い当たる物を取り出した。

「…やっぱりか。…樫間、彼女が"5人目"で間違いなさそうだ…。」

堀崎が樫間に向かってそう言った時、東雲の"七魔箱"から、黒いオーラが放たれた。
そのオーラがみるみる大きくなると、羽のように大きな翼の形に広がった。

『…余の名は"ルシファー"。その娘に力を授けよう。』

その声と共に、樫間や堀崎のと同じように、東雲の体内にオーラが入り込んでいった。

「キャッ…!!」

東雲は、物体的な衝撃よりも精神的な衝撃で、その場に倒れ込んでしまった。

「…おいおい、なんだよ今のは…。」

東雲に起きた一部始終を目の当たりにした道影は、驚いたようにそう呟いた。

「…お前…"箱装"使ってた癖に見るのは初めてなのかよ…。まあ良い、後で説明する。」

堀崎は、驚く道影にそう言った。


すると、ビルの下の道路にパトカーのサイレン音が鳴り響いた。

「…まずい、もしかしたら一連の状況を見た人が通報したのかもしれない…。」

葉坂は周りをキョロキョロしながら、慌ててそう言った。

「場所を変える。ついてこい。」

樫間はそう言って、再び東雲を担いだ。

5人の姿は、一瞬にしてビルの屋上から消えてしまった_

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