BOX・FORCE

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第1章 NAMELESS編-序編-

[第18話:Tansy]

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"四神"の3体との戦闘から1週間が経った。
戦闘不参加の迅雷寺、蒼松、咲波、矢島。そして軽症の彩科院、菊野、スミレ、蓮田。そしてパンダは、彩科院邸の地下会議室に集められた。

「くそっ!」

バンッ!と大きな音を立てて、彩科院は隣にある椅子を蹴飛ばした。

「…仕方ねぇっすよ隊長。"BOX・FORCE"隊員の半数以上が重傷。内、樫間、獅蘭両隊長は相当派手にやられてる…」

矢島は戦闘不参加だった為、あまり強くはいえなかったが、戦闘により負傷した隊員達を庇った。

「そもそも、あいつだ。獅蘭の采配がこの結果を生んだ。出しゃばりやがって…」

彩科院がそう言うと、蓮田が彩科院に詰め寄った。

「あんた、いい加減にしろよ?自分はまともに戦闘に参加してないくせに、偉そうな事ばかり抜かしてんじゃねぇよ!…うちの隊長はな!普段采配なんてしねぇんだよ!だけど、チャンさんの評価とサポート受けて、自分なりに考えて出したんだよ!それを知った口で語るんじゃねぇ!」

蓮田は、普段出さないような声で、彩科院に激しく叫んだ。

「…んだとてめぇ。隊長だったらそんぐらいできて当たり前なんだよ!そんな事もできねぇで隊長抜かしてるくらいなら、辞めちまえって話なんだよ!」

彩科院は、負けじと蓮田に怒鳴った。
すると、その瞬間に会議室のドアが勢いよく蹴り壊された。

「…黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがってよぉ!そんだけ言うならテメェ1人であいつら殺してこいよっ!」

そう言って、松葉杖姿の獅蘭が、全身包帯やギブスに纏われた姿で現れた。

「今のままじゃダメだっ!今の俺たちじゃ、何千年かけてもあいつらには勝てない。今までのやり方じゃ勝てねぇ。俺たちは、新しく生まれ変わらなきゃならねぇ!」

傷だらけの体を引きずりながら、獅蘭はそう言った。

「…全く、同意見だ。」

そう言って、同じく全身包帯やら手当てだらけの樫間が現れた。

「これは、隊長だけの問題じゃない。組織全体が、あいつらに勝つ為に変化する必要がある。」

樫間は冷静にそう言った。

「…ほう。何か案がありそうだな?」

先ほどから、仲裁に入らず、大人しく座って見ていたパンダが、初めて声を出した。

「案ならあるヨ。」

樫間に続いて、同じく手当て姿のジャッキーが現れた。

「今回の戦闘を振り返ってみて、敵の攻撃タイプは大方わかっタ。そして、今回全員ではないが、混成メンバーでの戦闘を実行しタ。結果的には負けた形になったガ…。それでも、統制はとれていタ。つまり、敵の攻撃タイプに合わせて、我々も部隊を組みなおせばいイ。」

ジャッキーは淡々とそう言った。

「何?部隊を組み直すだと?」

彩科院は、ジャッキーに疑問の顔色を向けた。

「そうサ。偶然にも、各隊長はそれぞれ攻撃タイプが違ウ。その上、敵の攻撃タイプと同じダ。敵のエネルギーに打ち勝つには、こちらはそれ以上のエネルギーをぶつけなければならなイ。だったら、エネルギーの差が分かり易い、同じ攻撃タイプ同士で当たった方がいいだロ?」

ジャッキーの解説に、一同は戸惑いの顔色を見せるも、数人は納得したように頷いた。

「…なるほど。面白い考察だ。それで、新たな編成案はあるのか?」

パンダが、ジャッキーに問いかけた。

「もちろン。まず、第1部隊。相手は"バキオラ"とかいう銃タイプの敵ダ。メンバーは、樫間、咲波、僕、リズの4人ダ。名付けて、『リコリス改』サ。」

ジャッキーがそう言うと、矢島が間に入った。

「ちょっと待ってくれ。君は隊長から降りるのか?」

矢島の問いに、ジャッキーは答えた。

「前にも言ったかもしれないけド。僕らはあくまで支援部隊ダ。僕は、その"支援部隊"としての役割を果たす為にこの道を選んダ。何か問題でモ?」

ジャッキーは、覚悟の目つきで矢島を見た。

「…そうか。すまない。続けてくれ。」

矢島がそう言うと、ジャッキーは続けた。

「…順番が前後するけど、次は第3部隊『ローズ改』ダ。」

ジャッキーがそう言うと、獅蘭が反応した。

「…俺か?」

獅蘭の問いに、ジャッキーは続けた。

「そうサ。メンバーは獅蘭、沫梨、白峰、チャンの4人。前回の戦闘での連携は見事だったと思うヨ。獅蘭、リベンジするんダ。"ウルセウス"は、君らに任せるヨ。」

ジャッキーにそう言われ、獅蘭は包帯の巻かれた拳を握りしめ、その拳を見つめ言った。

「…次は絶対殺すっ!」

ジャッキーは続けた。

「そして、第4部隊『ガーベラ改』。メンバーは、彩科院、桂、迅雷寺、菊野の4人ダ。」

ジャッキーがそう言うと、彩科院は不満そうな顔を見せた。

「…俺は1人だってあのガキを殺せる。邪魔はいらねぇ…」

彩科院がそう呟くと、それに続いて菊野が言った。

「…桂流剣士と共同戦線なんて…」

それを聞いた桂は、菊野にそっと言った。

「どうか、私たちの力を信じて欲しい。『菊野流と桂流。この2つの剣術は、いつか必ず大きな敵を倒す鍵になる。』これは、亡き私の尊敬する、先代隊長の菊野華路氏の言葉だ。」

桂の言葉を聞いて、菊野は桂を見て、言った。

「"菊野華路"…父の言葉…?」

「そうだ。先代は、最期に私にその言葉を残した。先代の言う大きな敵。それ即ち、"ヴァリアル"なる敵の事ではないかと、私は思う。」

桂がそう言うと、菊野は俯いて黙ってしまった。

「…最後に、順番が前後したネ。第2部隊『リリィ改』ダ。メンバーは、蒼松、矢島、蓮田、スミレの4人ダ。」

ジャッキーがそう言うと、蒼松が口を開いた。

「俺たちの相手は?」

蒼松の問いに、ジャッキーが答えた。

「そこなんだガ…。君らに相手してもらうのは、5人いると言われている"四神"のうち、まだ詳細の掴めない残り2人ダ。」

ジャッキーがそう言うと、パンダが話し始めた。

「ジャック。流石に無謀すぎないか?その正体の掴めない2人が、それぞれ別の攻撃をしてきたらどうする?他の部隊は、1人ずつ戦うとして、もしそうなったら隊員数的にも2人で戦うことになるぞ?」

パンダがそう言うと、矢島はやれやれという表情を見せて言った。

「パンダ室長。お言葉ですが、俺らをナメないでもらいたい。1人だろうが2人だろうが化け物だろうが、俺ら4人で敵倒せばいい話っすよね?任せてくださいよ。」

矢島は、まっすぐパンダを見てそう言った。

「ま、そういう事サ。各部隊、これからは1ミリも気が抜けない戦いになるだろウ。まだ負傷を強いられている隊員も残念ながらいル。回復次第、各隊で勝つための準備をするんダ。」

ジャッキーはそう言って締め括った。

「…ふん。足手纏いになるなよ。」

彩科院はそう言って桂達を睨んだ。

「上等じゃねぇか。今度こそあのクソ野郎をぶっ殺してやるっ!」

獅蘭は闘志に燃える表情でそう言った。

「…未知の敵との戦闘…」

蒼松は不安混じりの笑みを見せた。

「…"バキオラ"…貴様は必ず、俺たちが消す。」

樫間は静かにそう呟いた。



その日の夜、矢島は蒼松を連れて、夜の高速道路のドライブを楽しんでいた。

「相変わらず、いい車ですね。」

助手席の蒼松は、ハンドルを握る矢島にそう言った。

「だろ?賭けてる技術とパーツ、愛が違うんだよこいつは。」

矢島は得意げにそう言うと、ニヤリと笑ってギアをさらに1段階上げた。

「…俺さ、ガキの頃に見た映画に憧れて、ずっと海外でストリートレーサーになりたかったんだ。」

矢島は、視線をまっすぐ正面に向け、そう言った。

「俺の親父は、地元じゃ名の知れた暴走族の頭だった。車には詳しいし、喧嘩も強い。そんな親父は、お袋と出会って結婚して、俺が生まれて間もなく、事故って死んだんだ。」

矢島は、どこか寂しそうな表情でそう語った。

「かつて因縁のあった相手にやられたそうだ。親父の知り合いから聞いた話だけどな。その相手は、"ハンター"と呼ばれていて、当時はかなり恐れられていたらしい。奴に目をつけられたら、生きては帰れないそうだ。奴の愛機は、白のボディに黒いウイングがついて、エンジンも装甲もかなり特殊な"マツダ RX-8"だそうだ。」

矢島がそう話していると、窓が閉まっていても分かるほどの、大きなエンジン音が鳴り響いた。

「…矢島さん、その"RX-8"って…」

蒼松は、そう言いながら矢島の奥を見た。
するとそのエンジン音は、矢島の車の真横から響いた。
矢島はチラッと右側を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。

「…ああ。間違いねぇ…こいつだよ。」

矢島がそう言うなり、その"RX-8"は思いっきり矢島の愛車にぶつかった。

「…クソがっ…」

矢島の愛車は、衝突によりフロントガラスとサイドのウインドに、亀裂を走らせた。

「…フロント蹴っ飛ばせ…」

矢島はそう呟くと、右腕で思いっきりサイドのウインドを叩き割った。

「…くそっ!」

蒼松はそう言って、フロントガラスを蹴破った。

「…おもしれぇ…ぶっ潰してやるっ!」

矢島はそう言うと、急にハンドルを切り、愛車を相手の車にぶつけた。
二台の車は、物凄いスピードでぶつかり合う。

「…しっかり捕まっとけよ。こいつだけは、何がなんでもぶっ潰してやるよっ!」

矢島がハンドルについた小さなカバーを指で開けると、そこにはボタンが3種類ついていた。

「俺の"車(オンナ)"を、なめんじゃねぇよ!」

そのボタンのうち左側の1つを押すと、スピードがさらに上昇した。

数十m前方に矢島は出ると、物凄い勢いでハンドルを切り、サイドブレーキを引いた。

車はぐるっと180°回転し、相手の車の前をバックで走行した。

「…こっからがら本番だっ!」

矢島はそう言うと、急にギアを入れ替えアクセルを思いっきり踏んだ。

すると、矢島の愛車のタイヤが、激しく回転を変え、相手の車に向かって一直線に逆走した。

「…えっ…矢島さんっ!ぶつかるって…!」

蒼松がそう叫ぶも、矢島には聞こえている様子はない…。

「…果てろっ!」

矢島の愛車は、物凄い勢いで相手の車と衝突した。
その衝撃で、矢島の愛車は前方が大破。一方、相手の車はほぼ損傷なしの状態。

矢島がゆっくり顔を上げると、相手の車の運転席には、サングラスをした男がニヤリと笑みを浮かべていた。

「…やろぉ…」

そう言うと、矢島は気を失った。

「…や…じま…さん…」

蒼松は苦しそうに矢島の生存を確認した。

相手の車は、そのまま勢いよく後進し、矢島たちを後にして走り去った。
男は、走り去りながら 何者かに通信を入れた。


「…バキオラか?」

『…は…い…』

「どうした、電波が悪いな。」

『…それ…は…あなた…の方…じゃない…ですか…?』

「そうかもな。蒼松と矢島を長引かせた。2日後に再度"BOX・FORCE"を奇襲する。その時は、ラスコ・ロームを出せ。」

『…了解…けど…あなたが…余計なことを…しなくても…"彼"は…勝てる…』

「そうかもしれないな。しかし、これは戦争だ。敵の戦力を減らす為なら、出来ることは徹底的にやるべきだ。…期待してるぞ。」

『…了解…..リス…ティ…』

男の車は、爆音と共に闇夜に消えた…。



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