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第1章 NAMELESS編-序編-
[第1話:Lycoris]
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『新宿上空にNAMELESSと思われる巨大生命体出現!』
「…やれやれ。」
耳元でけたましく鳴り響く無線を聴きながら、青年はため息と共に新宿の地下道を走った。
「樫間、現在新宿地下移動中。現場の詳細を至急。」
彼の名は樫間 紘紀。
23歳にして特殊戦闘部隊「BOX・FORCE」第1部隊隊長。
NAMELESSとは、簡潔に説明すると異常発生型特殊生命体。「人類の負の遺産」とも言われ、目まぐるしい環境変化によって生み出された生命体とされている。
そのNAMELESSに対抗する為の組織。
それが"BOX・FORCE。
彼らは"箱装"と言われる武器を、箱型の結晶から解放させ、特殊なエネルギーを使ってNAMELESSと戦う。
樫間は、30段ほどの階段を駆け上がり、地上へ出た。
そこには逃げ惑う一般市民の姿と、その上空に黒い球体型の生命体。その生命体こそが、
"NAMELESS"である。
樫間は、首にかけたネックレスの先に付いた透明な箱のようなものを、右手で強く握りしめた。
すると、樫間の両手に黒い銃が二丁、現れる。
その銃を構え、NAMELESSに向けて2発弾丸を打ち込んだ。
命中するなり、NAMELESSの体は急速に凍りはじめた。
「樫間、これよりNAMELESS撃退行動へ移る。」
そう告げると、樫間は大通りの中央へ飛び出し、空に浮かぶNAMELESSを見上げるなり、呟いた。
「…3分もあれば十分だな。」
樫間は凍って動きが鈍くなっているNAMELESSに、容赦なく氷の弾丸を撃ち込んだ。
弾丸が当たる度に、NAMELESSはどんどん固まっていく。
樫間が引き金を引く度に、次第に周辺の気温が下がっていくように感じた。
やがて、NAMELESSは完全に1つの氷の塊となり、動かなくなった。
NAMELESSは、浮遊する力を失って地面に落下していく。
地面にぶつかると思われた瞬間、樫間と同じような特殊なエネルギーの光を放ち、拳に炎を纏った少年と、刀を持った少女が現れた。
「美しく、儚く、燃え散れ。」
少年はそう呟くと、落下するNAMELESSに、炎の拳を振るった。
すると、NAMELESSはまるで雪のように微塵に砕け散った。
最後に残った小さな丸い結晶のようなものに、少女は刀を向けた。
「"桂流雷鳴獅子"っ…!!」
少女が刀を縦に振ると、その結晶に激しい雷が落ち瞬く間に砕け散った。
「NAMELESSの生命反応なし。"リコリス"任務完了。帰還する。」
樫間は、耳元につけた通信機を使い何者かに通信を行った。
「遅くなった。隊長。」
いつの間にか拳の炎は消え、少年は静かに樫間に言った。
少年の名は、白峰 渉。
樫間が隊長を務める、第1部隊"リコリス"のメンバー。
「かっしーごめんね?また美味しいところだけ私らが持ってっちゃって~」
雷を纏っていた刀は消え、少女は笑って言った。
彼女の名は、迅雷寺 椎菜。
白峰と同じく"リコリス"のメンバーである。
「できる隊長ってのは、仲間に手柄を取らせてあとは報告とか後始末をしてればいいんですよ。」
樫間は2人に微笑みながら言った。
それは当たり前の事のように、3人は安堵の表情を見せ、現場を後にした。
3人は戦闘を終えると、とあるビルの一室にある、"BOX・FORCE"本部に集まった。
そこには、パンダの被り物をした成人男性程の体型の者が、複数のモニターを見つめ深く椅子に座っていた。
「ご苦労様。…2分28秒…また記録更新だな、樫間。」
パンダの被り物の者は、声からしてどうやら男のようだ。
彼?の名は、クリスティーナ・パンダ。
BOX・FORCEの研究室長兼最高補佐官。
パンダの被り物をしている為、その正体は隊員にも不明である。
「…次は2分以内に消します。」
クリスティーナ・パンダに告げられた結果に対して、少し不満げに樫間は答えた。
「そう言えば、さっきお前達が戦闘中に、緊急の隊長会議が開かれることになった。
この後0時からだ。よろしく頼むぞ樫間。」
樫間が時計を確認すると、23:47を示していた。
「了解。」
樫間はそう答え、部屋を後にした。
先程の部屋より、さらに上の階の一室。一面ガラス張りで、夜景がこれでもかと言うほど辺りに輝いていた。
「失礼します。第1部隊"リコリス"隊長、樫間です。」
そう言って部屋に入ると、そこには先程のクリスティーナ・パンダと、他に3人の男がいた。
1人目は、右眼に眼帯をつけた男。少し華奢な体型に、物珍しい柄のTシャツの上から、パーカーを羽織っていた。
彼の名は、蒼松 聡悟。
第2部隊"リリィ"隊長。
2人目は、大人しそうな雰囲気だが、髪色全体が黄色、毛先が赤と派手な見た目の男。なにやら誰かとスマートフォンで連絡をとっている。
彼の名は、獅蘭 継斗。
第3部隊"ローズ"隊長。
3人目は、癖毛の髪の襟足を1つにまとめ上げ、樫間を睨みつけるような目つきで見ている男。
彼の名は、彩科院 鬼介。
第4部隊"ガーベラ"隊長。
樫間が席に着くと、部屋の奥の大きな扉から、1人の男が現れた。
すると、全員が先程の緊迫した空気感をより一層強め、慌ただしく起立した。
「楢迫さん、全員揃いました。本日も宜しくお願い致します。」
パンダが言うと、その男はニコニコ笑いながらパンダの横の席に着いた。
「みんなよく集まってくれた。いつもご苦労様。」
彼がそう言うと、
「失礼します!」
皆が口を揃えそう言い、椅子に座った。
彼の名は、楢迫 祠。
BOX・FORCE総本部長を務める男。表向きには、政府の環境担当大臣を務める。
「隊長会議は半年ぶりくらいかな?いや~、みんな元気そうで安心したよ。」
楢迫はそう言うと、徐に立ち上がり話し始めた。
「NAMELESS出現当初に比べて、最近は割と落ち着いてきてる気がするんだ。これは間違いなくみんなの活躍のおかげだと僕は思ってるよ。
しかしね?逆にこうも思うんだ。NAMELESSはこれから、何か大きな力を持って我々に対抗する為に、今は準備をしているのだ、とね。
まあ、これは僕の憶測に過ぎないんだけどさ。」
そう言うと楢迫は、何かを思い出したような反応をして、席に座った。
「もし、これが本当に起きるとしたら、今のみんなには今以上に強くなってもらわなければならない。みんなの力が強いのは、僕が1番理解してるつもりだよ。けれど、みんなの力には、1億人以上の命が懸ってるんだ。
僕は、誰一人としてNAMELESSの犠牲になって欲しくはない。だから、これからの戦いには、みんなのレベルアップをもっと意識してもらいたいんだ。」
楢迫は、先程までの浮かれたような表情を止め、皆に真面目に目線を向け始めた。
「その中でも僕は、樫間君。君の部隊には大いに期待している。なにせ1番若いチームだからね。もちろん、他のチームのみんなの事は同じように期待してるつもりだよ。
だけど、僕らは負けられないんだ。負けちゃいけない組織なんだ。だからこそ、強くなる可能性が大いにある樫間君の部隊にはとても期待している。」
樫間は、突如自分に向けられた言葉に驚きを隠せずにいながらも、真っ直ぐ楢迫の話を聞いた。
「そこで、今回隊長会議を開いた理由なんだけど、樫間君のチームには、これから3週間、他のチームと一緒に行動してもらいたい。もちろん、みんなが理解してくれてこそなんだが、どうだ??」
楢迫の問いに、いち早く答えたのは蒼松だった。
「異議なしですね。」
蒼松は、何を言われても受け入れます。と言ったような、やれやれという身振りで言った。
続けて、彩科院が答える。
「ついてこれるなら構いません。但し、邪魔はするんじゃねぇぞ、樫間。」
彩科院は、またも樫間を睨んだ。
「継斗、君はどうする?」
緊迫した空気感を変えるように、楢迫は獅蘭に問いかける。
「…はい。構いません。」
獅蘭は、どこか興味のなさそうな声で答えた。
「では、決まりだね。樫間君のとこには、これから1週間毎に、各隊に付いて一緒にNAMELESS殲滅を行ってもらう。みんな、仲良くやってね!」
楢迫は各隊長に笑顔を振りまいてみせたが、反応は無し。
「じ、じゃあまずは、聡悟のところからにしよう。よろしくね、聡悟!」
蒼松はそう言われると、立ち上がって右手を差し出した。
「かしこまりました。頼むぜ紘紀!」
樫間も、それに応える形で左手を出した。
「よろしくお願いします。」
樫間と蒼松は、お互いに固く握手を交わした。
「…やれやれ。」
耳元でけたましく鳴り響く無線を聴きながら、青年はため息と共に新宿の地下道を走った。
「樫間、現在新宿地下移動中。現場の詳細を至急。」
彼の名は樫間 紘紀。
23歳にして特殊戦闘部隊「BOX・FORCE」第1部隊隊長。
NAMELESSとは、簡潔に説明すると異常発生型特殊生命体。「人類の負の遺産」とも言われ、目まぐるしい環境変化によって生み出された生命体とされている。
そのNAMELESSに対抗する為の組織。
それが"BOX・FORCE。
彼らは"箱装"と言われる武器を、箱型の結晶から解放させ、特殊なエネルギーを使ってNAMELESSと戦う。
樫間は、30段ほどの階段を駆け上がり、地上へ出た。
そこには逃げ惑う一般市民の姿と、その上空に黒い球体型の生命体。その生命体こそが、
"NAMELESS"である。
樫間は、首にかけたネックレスの先に付いた透明な箱のようなものを、右手で強く握りしめた。
すると、樫間の両手に黒い銃が二丁、現れる。
その銃を構え、NAMELESSに向けて2発弾丸を打ち込んだ。
命中するなり、NAMELESSの体は急速に凍りはじめた。
「樫間、これよりNAMELESS撃退行動へ移る。」
そう告げると、樫間は大通りの中央へ飛び出し、空に浮かぶNAMELESSを見上げるなり、呟いた。
「…3分もあれば十分だな。」
樫間は凍って動きが鈍くなっているNAMELESSに、容赦なく氷の弾丸を撃ち込んだ。
弾丸が当たる度に、NAMELESSはどんどん固まっていく。
樫間が引き金を引く度に、次第に周辺の気温が下がっていくように感じた。
やがて、NAMELESSは完全に1つの氷の塊となり、動かなくなった。
NAMELESSは、浮遊する力を失って地面に落下していく。
地面にぶつかると思われた瞬間、樫間と同じような特殊なエネルギーの光を放ち、拳に炎を纏った少年と、刀を持った少女が現れた。
「美しく、儚く、燃え散れ。」
少年はそう呟くと、落下するNAMELESSに、炎の拳を振るった。
すると、NAMELESSはまるで雪のように微塵に砕け散った。
最後に残った小さな丸い結晶のようなものに、少女は刀を向けた。
「"桂流雷鳴獅子"っ…!!」
少女が刀を縦に振ると、その結晶に激しい雷が落ち瞬く間に砕け散った。
「NAMELESSの生命反応なし。"リコリス"任務完了。帰還する。」
樫間は、耳元につけた通信機を使い何者かに通信を行った。
「遅くなった。隊長。」
いつの間にか拳の炎は消え、少年は静かに樫間に言った。
少年の名は、白峰 渉。
樫間が隊長を務める、第1部隊"リコリス"のメンバー。
「かっしーごめんね?また美味しいところだけ私らが持ってっちゃって~」
雷を纏っていた刀は消え、少女は笑って言った。
彼女の名は、迅雷寺 椎菜。
白峰と同じく"リコリス"のメンバーである。
「できる隊長ってのは、仲間に手柄を取らせてあとは報告とか後始末をしてればいいんですよ。」
樫間は2人に微笑みながら言った。
それは当たり前の事のように、3人は安堵の表情を見せ、現場を後にした。
3人は戦闘を終えると、とあるビルの一室にある、"BOX・FORCE"本部に集まった。
そこには、パンダの被り物をした成人男性程の体型の者が、複数のモニターを見つめ深く椅子に座っていた。
「ご苦労様。…2分28秒…また記録更新だな、樫間。」
パンダの被り物の者は、声からしてどうやら男のようだ。
彼?の名は、クリスティーナ・パンダ。
BOX・FORCEの研究室長兼最高補佐官。
パンダの被り物をしている為、その正体は隊員にも不明である。
「…次は2分以内に消します。」
クリスティーナ・パンダに告げられた結果に対して、少し不満げに樫間は答えた。
「そう言えば、さっきお前達が戦闘中に、緊急の隊長会議が開かれることになった。
この後0時からだ。よろしく頼むぞ樫間。」
樫間が時計を確認すると、23:47を示していた。
「了解。」
樫間はそう答え、部屋を後にした。
先程の部屋より、さらに上の階の一室。一面ガラス張りで、夜景がこれでもかと言うほど辺りに輝いていた。
「失礼します。第1部隊"リコリス"隊長、樫間です。」
そう言って部屋に入ると、そこには先程のクリスティーナ・パンダと、他に3人の男がいた。
1人目は、右眼に眼帯をつけた男。少し華奢な体型に、物珍しい柄のTシャツの上から、パーカーを羽織っていた。
彼の名は、蒼松 聡悟。
第2部隊"リリィ"隊長。
2人目は、大人しそうな雰囲気だが、髪色全体が黄色、毛先が赤と派手な見た目の男。なにやら誰かとスマートフォンで連絡をとっている。
彼の名は、獅蘭 継斗。
第3部隊"ローズ"隊長。
3人目は、癖毛の髪の襟足を1つにまとめ上げ、樫間を睨みつけるような目つきで見ている男。
彼の名は、彩科院 鬼介。
第4部隊"ガーベラ"隊長。
樫間が席に着くと、部屋の奥の大きな扉から、1人の男が現れた。
すると、全員が先程の緊迫した空気感をより一層強め、慌ただしく起立した。
「楢迫さん、全員揃いました。本日も宜しくお願い致します。」
パンダが言うと、その男はニコニコ笑いながらパンダの横の席に着いた。
「みんなよく集まってくれた。いつもご苦労様。」
彼がそう言うと、
「失礼します!」
皆が口を揃えそう言い、椅子に座った。
彼の名は、楢迫 祠。
BOX・FORCE総本部長を務める男。表向きには、政府の環境担当大臣を務める。
「隊長会議は半年ぶりくらいかな?いや~、みんな元気そうで安心したよ。」
楢迫はそう言うと、徐に立ち上がり話し始めた。
「NAMELESS出現当初に比べて、最近は割と落ち着いてきてる気がするんだ。これは間違いなくみんなの活躍のおかげだと僕は思ってるよ。
しかしね?逆にこうも思うんだ。NAMELESSはこれから、何か大きな力を持って我々に対抗する為に、今は準備をしているのだ、とね。
まあ、これは僕の憶測に過ぎないんだけどさ。」
そう言うと楢迫は、何かを思い出したような反応をして、席に座った。
「もし、これが本当に起きるとしたら、今のみんなには今以上に強くなってもらわなければならない。みんなの力が強いのは、僕が1番理解してるつもりだよ。けれど、みんなの力には、1億人以上の命が懸ってるんだ。
僕は、誰一人としてNAMELESSの犠牲になって欲しくはない。だから、これからの戦いには、みんなのレベルアップをもっと意識してもらいたいんだ。」
楢迫は、先程までの浮かれたような表情を止め、皆に真面目に目線を向け始めた。
「その中でも僕は、樫間君。君の部隊には大いに期待している。なにせ1番若いチームだからね。もちろん、他のチームのみんなの事は同じように期待してるつもりだよ。
だけど、僕らは負けられないんだ。負けちゃいけない組織なんだ。だからこそ、強くなる可能性が大いにある樫間君の部隊にはとても期待している。」
樫間は、突如自分に向けられた言葉に驚きを隠せずにいながらも、真っ直ぐ楢迫の話を聞いた。
「そこで、今回隊長会議を開いた理由なんだけど、樫間君のチームには、これから3週間、他のチームと一緒に行動してもらいたい。もちろん、みんなが理解してくれてこそなんだが、どうだ??」
楢迫の問いに、いち早く答えたのは蒼松だった。
「異議なしですね。」
蒼松は、何を言われても受け入れます。と言ったような、やれやれという身振りで言った。
続けて、彩科院が答える。
「ついてこれるなら構いません。但し、邪魔はするんじゃねぇぞ、樫間。」
彩科院は、またも樫間を睨んだ。
「継斗、君はどうする?」
緊迫した空気感を変えるように、楢迫は獅蘭に問いかける。
「…はい。構いません。」
獅蘭は、どこか興味のなさそうな声で答えた。
「では、決まりだね。樫間君のとこには、これから1週間毎に、各隊に付いて一緒にNAMELESS殲滅を行ってもらう。みんな、仲良くやってね!」
楢迫は各隊長に笑顔を振りまいてみせたが、反応は無し。
「じ、じゃあまずは、聡悟のところからにしよう。よろしくね、聡悟!」
蒼松はそう言われると、立ち上がって右手を差し出した。
「かしこまりました。頼むぜ紘紀!」
樫間も、それに応える形で左手を出した。
「よろしくお願いします。」
樫間と蒼松は、お互いに固く握手を交わした。
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