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第20話、其の頃の帝国の様子

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  此処は、ガリア帝国の帝都ザーマイだ。
帝国の中心部には、帝都を見下ろすように高い帝城がそびえ立っている。

 帝城は所々に黄金が飾られていて、今は夕日に黄金が照らされて、帝城全体が赤色を帯びた黄金に輝いて見え、その偉容を誇示していた。

  其の帝城の皇帝の間では、皇帝のワガミガィ・ダスケジュ皇帝が両側に美女を侍らせてにやけた顔で、側近たちの話を聞いているのだ。

  側近の第一将軍が。

「もう少しで5カ国の連合軍が降伏して来ると思われます。もうそろそろアスクルト王国を蹂躙する準備をしてはいかがでしょうか」

 第二将軍が。

「いや、いや、もう少し様子を見てはいかかがかな、諜報員によるとどうやらアリーナ女神の神託があり、200年ぶりに聖女が現れたらしいのですが、真かどうか調べてみてからでも遅くは無いと思います」

  第三将軍が。

「何を言うのか! 前回の戦いでは、王国に領内まで攻め込まれて、屈辱的な講和を結ばされた事を忘れたのか。あの時の屈辱を晴らして王国を亡ぼす為の準備は十分出来ている、陛下御決断を!」

  両側の美女の乳房を弄んでいた皇帝は今までのにやけた顔と違い、鷹のような冷たい鋭い目つきで。

「もう決まっている事だ、アリーナ女神を信仰するアスクルト王国を始め、アリーナ女神を信仰する国々は跡形も無く消し去り、此のムーヴ大陸の全土をガーダ武神の信徒にして帝国が此の大陸の支配者に成るのだ」

  第二将軍が慎重に、皇帝の逆鱗に触れない様に。

「陛下の言う通りに準備は整いました。いつでも陛下の命令一つで出陣は出来ますが、どうも聖女の出現が気になるのですが、陛下はどうお考えでしょうか」

  皇帝はいかにも蔑んだ目で第二将軍を見て。

「あれは、王国の茶番劇だ、本当にアリーナ女神の神託などあるものか、本当にあるのなら今頃は我が帝国は滅んでいるわい。我が帝国が益々力を付けて大陸の覇者に成る日が近づいているのが、アリーナ女神など架空の神で,いない証拠だ。1年後には帝国はこの大陸の支配者になり、わしが大陸の覇者になるのだ、分かったか」


  皇帝の間にいた側近全員が平伏して。

「ハッ!!分かりました」

  其れを見届けると皇帝は両側にいた美女を引き連れて自室に戻り二人の美女に。

「一人になりたいので下がれ」

  皇帝は一人になると溜息をつき。

「皆の手前ああ言ったが、王国に急に現れた聖女が本物だったならどんな力を持っているのか調べる必要があるな」

  と独り言を呟いたのだ。

  次の日、皇帝は歴史学者を呼び寄せて、200年前に現れた聖女の事を聞いたのだ。

  歴史学者は語り出した。

「200年前は、文献に残された記録によりますと、魔物を意のままに操る人間と魔物の混血人が現れて大勢の魔物を従わせて、人間たちに襲い掛かり、大陸の人間を殺して魔物の国を作ろうとしたらしいのです」

  そこで、学者は一息つき。

「その時にアリーナ女神の神託を受けた聖女が現れて、火の魔法と水魔法や他にも魔法を使い、魔物と人間の混血人や魔物を全滅させたと言う記録が残っています。本当にあった事なのか、それとも、アリーナ女神の権威を上げる為に作られた、多くの魔物の襲撃を撃退した事実を元にした作り話かは、昔の事なので真実は分かりません、私の知っているのは此処迄です」

  そう言うと、学者は皇帝から褒美の金貨を受け取り皇帝の間から辞したのだ。

  皇帝が一人になると静かに、帝国一の妖艶な美女でガーダ武神の巫女と呼ばれている、ソフィーナ皇妃が隣に座り。

「貴方、何を恐れているのです?貴方にはガーダ武神の加護があるのですよ。ガーダ武神の加護の元に貴方がこの大陸の支配者として君臨する事は決まっているのです。要らぬ迷いは捨て、今の帝国の軍事力を持ってすれば簡単な事です。後は貴方の決断だけですのよ」

  そう言ってソフィーナ皇妃は皇帝にしなだれかかったのでした。

  皇帝は愛するソフィーナ皇妃を抱き寄せて。

「迷ってなどいないが、慎重を期しただけだ。此の大陸の支配者になり、わしの最愛のソフィーナ皇妃そなたに全てを捧げよう」

  ソフィーナ皇妃は口元をほころばせて。

「私の愛するワガミガィ皇帝様、身に余るお言葉に感謝申し上げます。貴方にガーダ武人の神の力が宿る事を祈ります」

  こうして帝国は、ワガミガィ・ダスケジュ皇帝の決断の元、アスクルト王国に侵略することになったのである。
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