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第4話、王宮で、3

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 私が王宮に来てから1年が過ぎて14歳になり、身体も恥ずかしいのですが胸も膨らみ少し女性らしくなりました。

 この1年間は常識、歴史、経済、算数などの勉強をしましたが、教師が教える事は無くて、此方が教わるくらいですと言われて、学問は教師並みの学力があると認められたのです。

 これも沢山の本を何回も読み返したおかげで、此れだけは図書室に閉じ込めて虐待した二人に感謝したのです。

 然し、貴族としての礼儀作法や決まり事は勿論、一番大変だったのはダンスでした。

 最近やっと何とか踊れるようになった所なのです。

 今日は、初めて王家から食事に招かれました。

 サヨが言うには、マナーや礼儀作法が身に付いているか どうかを確かめる為に招かれたみたいなので、緊張しているのです。

 王妃様からプレゼントされた淡い水色のドレスを着て、王家の食堂に向かいました。

 食堂は、豪華なシャンデリアに照らされた暖かい雰囲気の素敵な部屋でした。

 私が部屋に入ると、陛下夫妻と王太子様と初めてお目にかかる、私より年下の男の方がいたのです。

 私は、教えられた淑女のカーテシーを披露したのですが、王家の4人はどうしたのか、私を見て固まっていたのです。

 私は、何か失敗したのかと思いましたが、王妃様が笑顔になり。

「サヤカ見違えたわよ、暫く合わない間にすっかり女性らしくなって、妖精みたいに綺麗になったわね」

 陛下と王太子も声を揃えて。

「久しぶりに会って、まるで別人みたいに綺麗になっているので吃驚したよ」

「お褒めに預かり、ありがとうございます、これも、ひとえに皆様のお陰です、お礼を申し上げます」

 初めて会う子供の男性の方が。

「まるで、妖精か女神様みたいに綺麗な美少女だー、こんな綺麗な女性は初めてみたよ、アッ、ゴメン僕は第二王子のサイギッダで10歳だよ」

 私も慌てて、令嬢らしくカーテシーをして。

「初めまして、サヤカと申します、王家の皆様には大変お世話になっております、宜しくお願い致します」

 王太子様が感心して。

「完璧なカーテシーで令嬢だな、短期間でよく此処までになったものだ、素晴らしいよ、これなら何処に出ても恥ずかしくないよ」

 陛下は私の髪が崩れない様に優しく撫でて。

「サヤカ、よく頑張った、わしが名前を付けた子だけに嬉しいよ」

 王妃様は私を優しく抱き寄せて。

「サヤカが本当の娘だったら嬉しいのに残念だわ、でも私の事を母親だと思って甘えてね」

「勿体ない、お言葉です、ありがとうございます」

「チョット、言葉使いが綺麗で完璧すぎるわね、今度は砕けた言葉も教えなくてわ」

 陛下が大きな声で笑い。

「ワッハハ、あまり無理な注文ばかり言うのじゃないよ、サヤカが困っているじゃないか、其れより座って食事を始めよう」

 食事は食前酒(私は未成年なので果実のジュースでした)前菜に始まり、正式なフルコースの料理でした。

 私は、基本に忠実にゆっくりと優雅に見えるように食事を楽しんだのです。

 最後に出されたデザートはチョコレートの可愛いケーキでしたが、ケーキには14歳おめでとうと、クリームで書かれてありました。

 私は嬉しさの余り、涙を流して喜んだのですが、王妃様が涙を流している私を見て。

「サヤカ、どうしたの、大丈夫?」

「はい、大丈夫です、自分の誕生日は分からないのですが、ケーキに書かれている14歳のお祝いの言葉に嬉しくて感激してしまいました」

 陛下がニコニコして。

「ケーキはトムウッドの発案だよ、それにしても誕生日が無いのも此れから困るな」

 私は陛下の言葉で思い出したのです。

「そういえば、私を虐待していた母娘が鞭で私を打っている時に、お前みたいな呪われた子がアリーナ女神様の誕生祭に生まれるのが間違いなのよ、と言っていました」

 王太子のトムウッド様が。

「えっ? アリーナ女神様の誕生祭なら10月10日だからサヤカの誕生日はもう少し先だね」

 王妃様が何か考えていましたが顔を上げて。

「サヤカの年齢の事ですけれど、私は今度の10月10日で15歳だと思いますよ、最初は虐待されていたので、発育が遅れていて幼く見えましたが、女性の印は去年から始まりましたし」

 陛下も少し考えて。

「そうだな、此処に来たときに12~3回の春を覚えていると言ったが、幼児の時のは覚えていないだろうから、今度のアリーナ女神様の誕生祭に教会に行って洗礼を受ければ15歳かどうか分かるだろう」

 それから私の食事のマナーも完璧だと言われて令嬢としての教育は卒業しましたが、アリーナ女神様の誕生祭に教会に行って洗礼を受ける事になったのでした。
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