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第21話、開戦前夜

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 冒険者たちの魔獣狩りを見学して屋敷に帰るとオーロラさんがなぜか不機嫌なので。

「オーロラさん俺が何か悪いことをしたのか」

「だって危険な魔獣狩りに行くのに何も言わないで行ったでしょう。私、キャシーさんに聞いて1日中、心配したわ」

 まさかそんなことで心配して怒るとは思わず。

「ごめん、これからは行く前に言うことにするよ」

「分かれば良いわ。これからは出掛ける時は必ず行き先を言って下さいね」

 俺は内心、俺の事を思って心配してくれたことが嬉しかったのだ。


 だが魔獣狩りどころではない事が諜報部のイアンから連絡があり、ついにバーカビ国王、自ら軍隊を引き連れて俺を処罰するためにナル王都を出発したと報告があったのだ。

 早速、側近を集めて緊急会議を開いた。デニスが余裕たっぷりに。

「アラン様落ち着いてください。準備は万端でバーカビ国王軍を追い返して見せますので安心して下さい」

 バニーは自信満々で。

「今のクラーク子爵軍は1万の兵士がいます。それも訓練で鍛えたこの国で最強の兵士たちです。バーカビ国王軍を追い返すだけでなくナル王都まで攻める力があります」

 アニーまで。

「いっそのことナル王都まで進軍してバーカビ国王軍を滅ぼしましょうか」

 俺はバーカビ国王軍を追い返すだけで滅ぼしたなら面倒なので。

「俺はアーサー王国を滅ぼす気はない。追い返しして領地を守れれば良い」

 珍しく行政官のブラッドが意見を言い。

「アラン様、もしも我が軍がバーカビ国王軍を破りバーカビ国王が死んだ場合は、国は乱れて国民が路頭に迷い大変な事になります。その責任はバーカビ国王軍を破り、バーカビ国王を殺したアラン様にありますので国民を路頭に迷わせずに国を治める責任があると思います」

 確かにブラッドの言う通りでバーカビ国王が死んだ場合は、国は乱れて貴族同士の争いが激しくなり国民は逃げまどい難民なり路頭に迷うだろう。

 
 だが今更、戦いを止める訳にはいかないので何とかしなければいけないだろう。

 有力な貴族の中から次期国王を見つけて国王にすれば良いかもしれないが、果たしてそんな人物が見つかるだろうか。

 その後側近たちはバーカビ国王軍に勝ったつもりで勝った後の話をしている側近に俺は怒り。

「戦ってもいないのに勝ったつもりで戦後の話などするな。自信を持つのは良いが戦いには何が起こるか分からんのだ。油断していると勝てる戦いにも負けるだろう。負けたならどうなるか知っているのか」

 俺が起こった事などないので皆が驚いていたが、めったにこんな場所では発言しないベンが静かに。

「俺はいつもアラン様と一緒にいるが、アラン様はどんな時でも先を見て行動している。皆もアラン様を信用して付いて行くのが家臣として取るべき道だと思うがどうだろう」

 アニーが真っ先に。

「申し訳ございません。ベンさんの言う通りです。出過ぎたことを言いました」

 皆も俺に謝りデニスが代表して。

「勝手なことを申してすみませんでした。これからはアラン様の元、一致団結して行動することを誓います」

 バーカビ国王軍に負ければ俺の領地だけでなくカーク男爵とクエン伯爵の領民たちは今の豊かな暮らしから税金も上がりあの邪悪なバーカビ国王にどん底に落とされるだろう。

 それなのに側近たちは戦いに勝ったつもりでいるので俺は怒ったが、俺の気持ちを分かってくれたみたいなので。

「分かれば良い。先の事より今度の戦いに全力を尽くしてくれ」

 緊急会議は終わり、明日には全員が砦に向かいバーカビ国王軍を迎え撃つ準備をする事にした。


 その晩にオーロラさんに今日の出来事を話し。

「オーロラさんは俺がバーカビ国王軍に勝ってバーカビ国王を殺したなら、女王に即位して国を治める気はあるのか」

 オーロラさんはそんなことを言われるとは思っていなかったみたいで。

「私が女王になって国を治めるつもりはありません。私は女王になって国を治める器量はありませんので無理です。アラン様は知識も豊富で国民を思いやる気持ちをお持ちなので新しい国を作るべきです。その代わりアラン様を私の出来る限り支えるつもりです」

 確かに今の貴族では国王にしても国民は幸せになれないだろう。

 俺はオーロラさんに全てを話す事にして。

「オーロラさん聞いてくれ。今まで言わなかったが、俺はこの世界と違う文明の進んだ異世界で35歳まで生きた記憶を持っている。その前世の知識を使い領地の改革をしてきたのだ」

 オーロラさんは驚かず。

「やっぱり。アラン様はこの世界にない知識をお持ちで、この世界にない言葉を使うので昔、絵本で読んだ異世界からの転生者の英雄に似ているのでもしかしたなら異世界からの転生者かも知れないと思っていたのよ」

「まさかオーロラさんがそんなことを思っていたのか」

「当然でしょう。アラン様はこの世界の人と違いすぎるわ」

「側近たちもオーロラさんと同じように俺をそんな風に思っているのか」

「皆さんは思っていないと思うわ。アラン様は知識が豊富で頭が良いと思っているだけで私は絵本で読んだからそう思っていただけよ」

 いやー、オーロラさんが俺を転生者と思っていたことに驚いたが、側近たちは気が付いていないみたいでホッとした。

 だがこれからは言動に注意しなければいけないと思った俺なのである。
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