21 / 36
第21話、開戦前夜
しおりを挟む冒険者たちの魔獣狩りを見学して屋敷に帰るとオーロラさんがなぜか不機嫌なので。
「オーロラさん俺が何か悪いことをしたのか」
「だって危険な魔獣狩りに行くのに何も言わないで行ったでしょう。私、キャシーさんに聞いて1日中、心配したわ」
まさかそんなことで心配して怒るとは思わず。
「ごめん、これからは行く前に言うことにするよ」
「分かれば良いわ。これからは出掛ける時は必ず行き先を言って下さいね」
俺は内心、俺の事を思って心配してくれたことが嬉しかったのだ。
だが魔獣狩りどころではない事が諜報部のイアンから連絡があり、ついにバーカビ国王、自ら軍隊を引き連れて俺を処罰するためにナル王都を出発したと報告があったのだ。
早速、側近を集めて緊急会議を開いた。デニスが余裕たっぷりに。
「アラン様落ち着いてください。準備は万端でバーカビ国王軍を追い返して見せますので安心して下さい」
バニーは自信満々で。
「今のクラーク子爵軍は1万の兵士がいます。それも訓練で鍛えたこの国で最強の兵士たちです。バーカビ国王軍を追い返すだけでなくナル王都まで攻める力があります」
アニーまで。
「いっそのことナル王都まで進軍してバーカビ国王軍を滅ぼしましょうか」
俺はバーカビ国王軍を追い返すだけで滅ぼしたなら面倒なので。
「俺はアーサー王国を滅ぼす気はない。追い返しして領地を守れれば良い」
珍しく行政官のブラッドが意見を言い。
「アラン様、もしも我が軍がバーカビ国王軍を破りバーカビ国王が死んだ場合は、国は乱れて国民が路頭に迷い大変な事になります。その責任はバーカビ国王軍を破り、バーカビ国王を殺したアラン様にありますので国民を路頭に迷わせずに国を治める責任があると思います」
確かにブラッドの言う通りでバーカビ国王が死んだ場合は、国は乱れて貴族同士の争いが激しくなり国民は逃げまどい難民なり路頭に迷うだろう。
だが今更、戦いを止める訳にはいかないので何とかしなければいけないだろう。
有力な貴族の中から次期国王を見つけて国王にすれば良いかもしれないが、果たしてそんな人物が見つかるだろうか。
その後側近たちはバーカビ国王軍に勝ったつもりで勝った後の話をしている側近に俺は怒り。
「戦ってもいないのに勝ったつもりで戦後の話などするな。自信を持つのは良いが戦いには何が起こるか分からんのだ。油断していると勝てる戦いにも負けるだろう。負けたならどうなるか知っているのか」
俺が起こった事などないので皆が驚いていたが、めったにこんな場所では発言しないベンが静かに。
「俺はいつもアラン様と一緒にいるが、アラン様はどんな時でも先を見て行動している。皆もアラン様を信用して付いて行くのが家臣として取るべき道だと思うがどうだろう」
アニーが真っ先に。
「申し訳ございません。ベンさんの言う通りです。出過ぎたことを言いました」
皆も俺に謝りデニスが代表して。
「勝手なことを申してすみませんでした。これからはアラン様の元、一致団結して行動することを誓います」
バーカビ国王軍に負ければ俺の領地だけでなくカーク男爵とクエン伯爵の領民たちは今の豊かな暮らしから税金も上がりあの邪悪なバーカビ国王にどん底に落とされるだろう。
それなのに側近たちは戦いに勝ったつもりでいるので俺は怒ったが、俺の気持ちを分かってくれたみたいなので。
「分かれば良い。先の事より今度の戦いに全力を尽くしてくれ」
緊急会議は終わり、明日には全員が砦に向かいバーカビ国王軍を迎え撃つ準備をする事にした。
その晩にオーロラさんに今日の出来事を話し。
「オーロラさんは俺がバーカビ国王軍に勝ってバーカビ国王を殺したなら、女王に即位して国を治める気はあるのか」
オーロラさんはそんなことを言われるとは思っていなかったみたいで。
「私が女王になって国を治めるつもりはありません。私は女王になって国を治める器量はありませんので無理です。アラン様は知識も豊富で国民を思いやる気持ちをお持ちなので新しい国を作るべきです。その代わりアラン様を私の出来る限り支えるつもりです」
確かに今の貴族では国王にしても国民は幸せになれないだろう。
俺はオーロラさんに全てを話す事にして。
「オーロラさん聞いてくれ。今まで言わなかったが、俺はこの世界と違う文明の進んだ異世界で35歳まで生きた記憶を持っている。その前世の知識を使い領地の改革をしてきたのだ」
オーロラさんは驚かず。
「やっぱり。アラン様はこの世界にない知識をお持ちで、この世界にない言葉を使うので昔、絵本で読んだ異世界からの転生者の英雄に似ているのでもしかしたなら異世界からの転生者かも知れないと思っていたのよ」
「まさかオーロラさんがそんなことを思っていたのか」
「当然でしょう。アラン様はこの世界の人と違いすぎるわ」
「側近たちもオーロラさんと同じように俺をそんな風に思っているのか」
「皆さんは思っていないと思うわ。アラン様は知識が豊富で頭が良いと思っているだけで私は絵本で読んだからそう思っていただけよ」
いやー、オーロラさんが俺を転生者と思っていたことに驚いたが、側近たちは気が付いていないみたいでホッとした。
だがこれからは言動に注意しなければいけないと思った俺なのである。
546
お気に入りに追加
1,170
あなたにおすすめの小説
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~
九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】
【HOTランキング1位獲得!】
とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。
花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる