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25話 婚約の証 その2

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「ふふふ」


 アメジストの指輪……私はその指輪を薬指に付けていた。それを眺めるだけで、思わず頬が緩んでしまう。マックスとの婚約が決定した証だ。


「姉さん……顔がニヤけているわよ」

「ニヤけていてもいいじゃない。ふふふふ」

「まったく……幸せそうで何よりです」


 ファレナは少しだけ頬を膨らませていた。あれから、彼女からはマックスの件について、一切の遠慮はしないで欲しいと言われている。何でも、姉妹で仲が悪くならないようにとの配慮みたい。とてもありがたいことだわ……私は彼女に対して酷いことをしてしまったのだし。

 マックスを手に入れる代償として、ファレナとは微妙な関係が続くかと思っていたけれど。その懸念がすぐに解消されたのは良いことだった。というより、私がそのように考えると予想して、ファレナは事前に動いたのでしょうけれど。

「婚約は本当におめでたいことだわ」

「ありがとう、ファレナ。あなたから祝福されるのが、私は一番嬉しい」

「そう言われると、とても恐縮してしまうけれど……マックスさんは、あれから大丈夫なの?」

「大丈夫って?」


 何のことを言っているのだろうか? 私は自然と聞き返してしまった。

「決まっているでしょう? 女性関係についてよ」

「そのことについては問題ないわ。マックスは反省してくれたようだし……何より、私が目を光らせているからね」


 ふふふふ、決して浮気なんてさせないわ。マックスが本当に浮気をするなんて思ってはいないけれど、浮気に近いことだって決してさせない。

「もしもしてしまった場合は……ふふふふふ」

「姉さん……なんだか怖いわよ……」


 私の瞳はいつの間にか、猫みたいに細くなっていたのだと言う……。



-------------------------



「それで、マックス? 今日のパーティーだけれど、問題は起こらなかった?」

「大丈夫だよ、ミリス。何名かの令嬢に誘われたりもしたけど、ちゃんと断ったさ」

「そうなんだ、良かったわ」


 ファレナと別れた後、私は所定の場所でマックスと落ち合っていた。彼は先ほどまで、とあるパーティーに出席していたのだ。そこで何人か令嬢に踊りや話をしないかと誘われたそうな。

 マックスがどうこうというより、誘った令嬢に問題があるわね……もう、彼に婚約者が居ることは伝わっているはずなのに。


「おモテになる貴族様はやっぱり大変ということですね」

「私はミリスしか見えていないさ」

「本当に? これからもずっと……?」

「ああ、約束だ。このお互いの、アメジストの指輪に誓ってね」

 私はアメジストの指輪に視線を移していた。そう……これが彼との物理的な絆ということになる。価格も高かったけれど、そういう問題ではなくて。そして、不意にマックスに唇を奪われる。

「……」

「……」


 私達の関係はこれからもずっと続けていけそうだ、そう確信させる一時であった。それから……アメジストの指輪以上の「絆」も近い内に生まれそうね。なんちゃって。


                                          おしまい
 
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みんなの感想(78件)

みー
2021.08.24 みー

うわー、妹に告白されたのが素直に嬉しいとか、姉より先に出会ってたらもしかしたらがあるかもとか、不安しかないわ。

ルイス
2021.08.29 ルイス

今後が不安になる言動が多かったでしょうか……申し訳ないところです

解除
2021.08.17 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

ルイス
2021.08.21 ルイス

読んでいただきありがとうございました!
マックスのことを嫌いにならないでいただいて、とても嬉しいです!

解除
セライア(seraia)

椿様、私だったら、あのキスで不信感が確定して平手打ちしてます😆

作者様、マックスへの好感度は上がることなく下がり続け、最後のパーティー云々で更に下がってます、ごめんなさい🙇💦

ルイス
2021.08.29 ルイス

最後まで読んでいただき大変嬉しいです!
マックスの好感度は最後まで上がることはなかったようで、反省点になりますね……
八方美人の段階で駄目だったのかもしれませんね

解除

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