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13話 それぞれの想い その1

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「ファレナ……?」

「マックスさん……いえ、まずはミリス姉さまへの返答をお願いいたします」


 私がダンスをの誘いをマックスにした時、ファレナは確かに寂しげな様子を見せていた。これってもしかして……。

「そ、そうだったな……ミリス、ダンスについては快く受けさせてもらうよ」

「ほ、本当に……!? ありがとう、マックス!」

「……姉さま、良かったですね。私もとても嬉しいです」

「ありがとう、ファレナ」


 予想外……という程ではないのかもしれないけれど、この錯綜した状況でマックスが私のダンスの誘いを受けてくれたのは、素直に嬉しい。彼のことをスケコマシ、女たらしと言ったことに謝罪しなければならないかもしれない。

 だって、一応の答えをマックスは示してくれたんだから。その後の軌道修正は後から行っても良いわけで……。


「なるほど……マックス公爵令息はミリスと。ほほう、これはこれは……なかなかに面白いですね」

「アレク侯爵……褒め言葉として受け取っておきます」

「いえいえ、もちろん褒め言葉ですよ……ははははっ」

「そうですか、それなら良かったです」

 気のせいかマックスとアレク様が皮肉を言い合っているように見えたけれど、どういう想いが錯綜しているのだろう? この二人に関してはあまりよく分からないわ。

「ぶ~~~! マックス様! どうして、ミリス令嬢の誘いを受けるんですか? ミリス令嬢のことが好きなんですか?」

 大きな声ではしたない言動をしているのはエリー令嬢だ。こちらは完全な嫉妬でしかなかった。まったく……アレク様が近くに居るというのに、遠慮するという感情がこの人にはないのかしら。まあ、ここは多少の優越感を感じながら、マックスの手を取ることにする。

 エリー令嬢には散々な目に遭わされたし、このくらい、罰は当たらないわよね。

「マックス、一緒に踊ってくれるということで良いのよね?」

「ああ、もちろんさ。男に二言はないよ」

「ありがとう」


 私はこの瞬間、確かに幸せを感じることが出来たのだと思う。幼馴染で憧れでもあったマックスと、こうして踊ることが出来るのだから。

「……」


 ただ、視界の隅に見える、ファレナの表情だけは何とも言い難かった。先ほどは祝福してくれていたけれど……現在の彼女はやはり、悲しそうに見えたから。
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