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11話 パーティーにて その3

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「マックス……」

「あ、ミリスとファレナじゃないか。やあ、こんにちは」

「ええ、こんにちは」


 マックスはアレク様とエリー令嬢と挨拶をしているようだった。彼も困っているようだったけれど、エリー令嬢を拒絶し切っていない彼に対して、私はジト目をしてみる。

「ジ~~~~」

「あの……ミリス? なんだか怖いんだけれど……大丈夫かい? 調子とか悪くない?」

「むしろ、こっちが聞きたいくらいなんだけど? マックスの方こそ大丈夫なの?」


 詳細について言うつもりはないけど、主にこの状況的に大丈夫なのかと問い詰めたかった。本来なら、私が怒れることではないし、エリー令嬢との付き合いや他の令嬢との付き合いも大切だろうから、面と向かっては言いにくいことなんだけれど。

 でも、彼は確かに私達のことが大切だと言ってくれた。だから、少しだけ私は普段よりも一歩、脚を踏み入れていたのだ。

「ミリス嬢……また、現れたの?」

「これはこれは、エリー様。ご無沙汰しております……」

「……ご無沙汰しています」


 エリー令嬢は私の皮肉交じりの挨拶に無言を貫いていたけれど、やがて小声で返した。パーティーの席で完全に無視を決め込むのはマズイとの判断だろうか。

 そして……私にはもう一人、顔を合わせることになった人物が居た。


「アレク様……いえ、今はボゴス侯爵閣下と言った方が正しいでしょうか」

「随分と他人行儀な呼び方じゃないか。いつも通り、アレクと呼んでくれて構わないぞ、ミリスよ」

「いえ、ボゴス侯爵様。姉のミリスを含めて、ローブル家とは何の関係もはいはずです。ゆえに、ボゴス侯爵と呼ばせていただきます」

「おやおや、これは手厳しい。ミリスの妹君のファレナ嬢だったか。噂通り、とてもクールだな」

 気のせいか、アレク様はファレナのことを見下しているように見えた。その為に、私は咄嗟に二人の間に割って入る。

「アレ……ボゴス侯爵、ファレナに対してはこれ以上の接触はお止めいただけますか?」

「ああ、わかったよ。ふふ、本当に噂通りの姉妹だな」

「本当ですよね、こんなのが人気者っていうんだから、世の中間違っている気がします!」

「……」

 私とファレナ、そしておそらくマックスもだと思うけど、同じような表情を取ってしまった。どういう風に扱えば良いか分からない、といった表情だ。

 この二人に一般的な常識を言うのは意味がないかもしれないわね。まあいいわ……それよりもまずは、マックスのことをハッキリさせないと駄目ね。

「ねえ、マックス……お願いがあるんだけれど」

「何かな? ミリス?」


 ちょっと恥ずかしいけれど……彼の気持ちを確かめるにはちょうど良いかもしれない。

「良ければ私と踊ってくださらない?」


 令嬢の方から言うのは、本来とは逆になるけれど、この国ではあり得ることだった。でも、言った私が早くも後悔しかけている……想像以上に恥ずかしかったから……。

「なっ……! ズルい……!」


 エリー令嬢の声が聞こえて来た気がするけれど、とりあえず無視しておくことにした。さて、マックスの返答はどうなるかしら……?
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