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6話 エリー・フラメウ その2

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「エリー様は、アレク・ボゴス侯爵と婚約関係にありますよね?」

「それがどうかしたの?」

「いえ、アレク様がこのことを知ったら悲しまれるんじゃないかな、と思いまして……」

「はあ、何を言っているのよ……? マックス様と会話するだけで、アレク様が怒るわけないでしょ!」


 どこまでもエリー令嬢は喧嘩腰の態度だった。同じ伯爵家のはずなのに、敬語という概念を知らないらしい。いえ、マックスには敬語を使っているから、分かってはいるはずね。

「それに……あなた、ミリス・ローブルでしょ? アレク様に捨てられた、あの……」

「知っていたんですね、エリー様」

「当たり前でしょう、そんなこと。でも、残念ね~~ミリス嬢。私の方がアレク様にとっては可愛く映ったらしいのよ。あなたみたいなクールな女性は必要ないんだってさ!!」

 決して私はクールではないと思う。なぜなら、彼女の言葉に対して怒りの感情がふつふつと湧いていたから。ここで言い返さなくて、いつ言い返すんだ? という気持ちさえある。


「最低ですね、エリー嬢。明るく社交性に優れているという噂が流れていますが……これではただの世間知らずと変わりません」

「な、なんですって……!?」

 私が反撃の言葉を放とうとした瞬間、妹のファレナから強力な返しが放たれた。エリー令嬢はそれを聞いて、やや動揺しているみたいだ。


「あなたは確か……ミリス嬢の妹よね? クールな美人姉妹とか言われて調子に乗ってるのかもしれないけれど、アレク様には全然、認められなかった出来損ないじゃない!」

「……すごいことを言いますね、エリー様」

「うるさいっ! 本当のことでしょう!? 特に姉のミリスは完全に捨てられたのよ! いい気味だわ」


 もう、エリー令嬢の言いたい放題だった……装飾店に居た、他の貴族達は巻き込まれるのを危惧して、出て行くほどに。軽く営業妨害になっているわね。

「ミリス嬢、あなたはアレク様の愛する者には含まれなかった……負け犬なのよ」

「私は彼に選ばれなかったのは事実だと思います。でも、それで良かったとも思っています今となっては……」

「はっ、自分の家系に泥を塗っておいて負け惜しみかしら?」


 別に負け惜しみでも何でもない。アレク様への愛情は今では消えかかっている。むしろ、「愛する者」として彼が選んだエリー令嬢の性格に驚いているくらいだ。大丈夫なのかしら……と。

「いい加減にしてもらおうか、エリー嬢。これ以上、二人を侮辱するのなら許さないぞ? 彼女達は私の大切な幼馴染なんだから」

「えっ……マックス様……?」


 予期せぬ人物からの叱責……エリー令嬢はそんな表情になっていた。いえ、この状況ならマックスと私達が特別な関係がなくとも叱責されるに決まっている。エリー令嬢は想像以上に阿保なのだと思い知らされた。
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