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4話 出会い その2
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「いや、なんと言えばいいのか……」
「そ、そうね……」
「はい、そうですね」
私とファレナ、マックス公爵令息の3人は初めてのお見合いの気分で装飾屋で会話していた。先ほどは明るく振舞えたけれど、すぐに恥ずかしくなってしまったのだ。なんて話せば良いのか分からなくなって……。
ちょうど、紳士服とドレス売り場の境目という何とも微妙な場所に居た為、衆人環視が酷かった。まあ、今の私達はそんなところに気を配っている余裕はなかったのだけれど。
何せ、憧れだった幼馴染のマックス・オリヴェイラと再会したのだから。今の暗雲立ち込める私にとっては救世主のような存在かもしれない。
「ミリス、ファレナ。大きくなったね……元気そうで何よりだ」
マックスからの真っすぐな一言。私はその言葉を聞いて平常心に戻れた。彼の前で緊張することなんてなかった……いつも通りでいいはずだ。
「ええ、マックス。本当に久しぶりね」
「マックスさん、お久しぶりです……何年振りでしょうか……?」
「そうだな、もう5年くらい会ってないんじゃないかな?」
もうそんなになるのか……月日が経つのは早いものね。私もマックスもファレナも気が付けば、貴族として結婚をしてもおかしくない年齢になったということか。ファレナは2歳年下だけど。
「ふむ……間違っていたら、申し訳ないんだけどさ」
「はい?」
「なによ、どうしたの急に」
マックスは私達の顔を見ながら、難しい顔になっていた。何を考えているのかしら?
「クールな美人姉妹……伯爵令嬢というのは、君たちのことかな?」
「なっ……! 誰がそんなことを……!?」
私は再会して早々、マックスからの意外過ぎる言葉に驚きを隠せなかった。ファレナは落ち着いているようだけれど、私の方はとてもクールではなくなっている。
「おそらく間違ってはいないと思います。そのような話があることは知っているので」
「えっ? そんな話、あったっけ?」
「はい、ありましたよ」
「へえ……そんなことが……」
美人と評されるのは悪い気分でないけれど……まさか、「クール」なと付いているとは。やっぱり対外的な評価もクールで通っているのね。ファレナの方はともかく、私はクールなのかな本当に。時々、不思議に思うことがある。
「なるほど……でも確かに、その評価は頷けるかな。クールというのは置いておいて、美人という部分を否定する者はほとんど居ないだろう」
「ええっ、マックス……?」
「マックスさん……そんなことは……」
突然、マックスに美人と評され驚いてしまったけれど、ファレナの態度も微妙に引っかかった。あの冷静な彼女が頬を染めているような……気のせいかな?
「ああ~~~! マックス様じゃない!」
「んっ?」
そんな時、彼の名前を大声で叫ぶ人物が居た。先ほど、店内でうるさくしていた貴族令嬢だ。私はその人に視線を向ける。
「あ、あなたは……」
驚いた……先ほどの貴族令嬢は、エリー・フラメウ伯爵令嬢だったからだ。つまりはアレク・ボゴス侯爵の浮気相手ということになる。アレク様は居ないようだけれど、こんなところで彼女に会うなんて……しかも、マックスに妙に好意的だし。
彼女は嬉しそうにこちらに向かって来ていたのだから。
「そ、そうね……」
「はい、そうですね」
私とファレナ、マックス公爵令息の3人は初めてのお見合いの気分で装飾屋で会話していた。先ほどは明るく振舞えたけれど、すぐに恥ずかしくなってしまったのだ。なんて話せば良いのか分からなくなって……。
ちょうど、紳士服とドレス売り場の境目という何とも微妙な場所に居た為、衆人環視が酷かった。まあ、今の私達はそんなところに気を配っている余裕はなかったのだけれど。
何せ、憧れだった幼馴染のマックス・オリヴェイラと再会したのだから。今の暗雲立ち込める私にとっては救世主のような存在かもしれない。
「ミリス、ファレナ。大きくなったね……元気そうで何よりだ」
マックスからの真っすぐな一言。私はその言葉を聞いて平常心に戻れた。彼の前で緊張することなんてなかった……いつも通りでいいはずだ。
「ええ、マックス。本当に久しぶりね」
「マックスさん、お久しぶりです……何年振りでしょうか……?」
「そうだな、もう5年くらい会ってないんじゃないかな?」
もうそんなになるのか……月日が経つのは早いものね。私もマックスもファレナも気が付けば、貴族として結婚をしてもおかしくない年齢になったということか。ファレナは2歳年下だけど。
「ふむ……間違っていたら、申し訳ないんだけどさ」
「はい?」
「なによ、どうしたの急に」
マックスは私達の顔を見ながら、難しい顔になっていた。何を考えているのかしら?
「クールな美人姉妹……伯爵令嬢というのは、君たちのことかな?」
「なっ……! 誰がそんなことを……!?」
私は再会して早々、マックスからの意外過ぎる言葉に驚きを隠せなかった。ファレナは落ち着いているようだけれど、私の方はとてもクールではなくなっている。
「おそらく間違ってはいないと思います。そのような話があることは知っているので」
「えっ? そんな話、あったっけ?」
「はい、ありましたよ」
「へえ……そんなことが……」
美人と評されるのは悪い気分でないけれど……まさか、「クール」なと付いているとは。やっぱり対外的な評価もクールで通っているのね。ファレナの方はともかく、私はクールなのかな本当に。時々、不思議に思うことがある。
「なるほど……でも確かに、その評価は頷けるかな。クールというのは置いておいて、美人という部分を否定する者はほとんど居ないだろう」
「ええっ、マックス……?」
「マックスさん……そんなことは……」
突然、マックスに美人と評され驚いてしまったけれど、ファレナの態度も微妙に引っかかった。あの冷静な彼女が頬を染めているような……気のせいかな?
「ああ~~~! マックス様じゃない!」
「んっ?」
そんな時、彼の名前を大声で叫ぶ人物が居た。先ほど、店内でうるさくしていた貴族令嬢だ。私はその人に視線を向ける。
「あ、あなたは……」
驚いた……先ほどの貴族令嬢は、エリー・フラメウ伯爵令嬢だったからだ。つまりはアレク・ボゴス侯爵の浮気相手ということになる。アレク様は居ないようだけれど、こんなところで彼女に会うなんて……しかも、マックスに妙に好意的だし。
彼女は嬉しそうにこちらに向かって来ていたのだから。
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