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28話 陛下との会話 その1
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「なるほど、そういうことか……大体、話は分かった。というよりも、ある程度伝わって来ていたがな」
「左様でございまいたか、父上」
「……」
私とヨハン様は現在、彼の父上……つまり、国王陛下とお会いしていた。場所は国王陛下であるオランゼ様の私室だ。私は緊張感で潰されそうになっていた。ヨハン様とは幼馴染の関係にあるので、オランゼ様とお会いしたことは何度もあるのだけれど……流石に今現在お会いすると、自分が成長している分、言葉が上手く出て来るのか不安だった。
「それで、エレナ嬢は土地を慰謝料代わりにしてほしいと言ったのだな。なるほど、相当な機転だったな」
「いえ、陛下……そのようなことは……」
やはり、あまり言葉が出てこない。まともに話せないわ。
「父上、エレナ嬢は国王陛下の御前ですので緊張していると思われます」
「そうだったのか? エレナ嬢?」
「も、申し訳ありません……国王陛下」
「いや、謝る必要はないがな。そんなに緊張する必要はないが……まあ、緊張するなというのも酷な話か」
良かった、オランゼ様は理解を示してくれたようだ。彼は私との会話を一時、中断し、ヨハン様と話し始めた。
「それで、ヨハン。お前はどうするつもりなのだ? あのエメラダ夫人が土地の引き渡しを今さら拒むとは考えられんが……」
「そうですね……私も父上と同じ意見です。エメラダ夫人が土地の引き渡し自体を拒むとは考えていません」
「それならば、特に大きな問題はないのではないか?」
「……父上?」
一瞬、ヨハン様は首を傾げた。オランゼ様の言葉の意味の理解に時間が掛かったからだ。
「父上、申し訳ありませんが……どういう意味でしょうか? エメラダ夫人のことで、土地さえ貰えば問題ないと、父上はおっしゃるのですか?」
「違うのか? エレナ嬢の慰謝料が支払われればそれ以上、バークス公爵家を糾弾しても意味がないだろう。バークス公爵家の息子であるリグリットはおそらくもう、公爵の座に就くことは出来ぬ。それだけでも、十分な罰を与えていると思うがな」
「それは……」
「もしかとは思うが、ヨハンよ。バークス公爵家に、必要以上に介入することを考えているのではあるまいな?」
「……」
オランゼ国王陛下からの厳しい一言だった。ヨハン様は俯いてしまっている。私も何も言えなくなっていた。この場でヨハン様をフォローできるのは私しか居ないのに……。不思議なほどに言葉が出てこない。それは緊張感から出ない状況とは明らかに異なっていた。
一体、どうすればいいんだろうか?
「ヨハン、お前がバークス公爵家に責める理由はなんだ? そちらに居るエレナ嬢の為ではないのか?」
「その通りです……だからこそ、ガイア・バークス公爵やエメラダ夫人を……」
「お前の気持ちはわからんでもない。しかし、エレナ嬢の為にという感情が先行し過ぎて、本質を見失っていないか?」
「本質を……見失う?」
私もヨハン様もついつい、オランゼ国王陛下の話に聞き入ってしまっている。
「そうだヨハン。お前はバークス公爵家の者達をどこまで罰せば良いのか、見失っているだろう? 今回の件はかなり大きな事件と言える。身内が絡んでいるからこそ、客観的な視点を忘れてはならないぞ」
客観的な視点か……確かに私達は直接、ガイア様やエメラダ夫人に会いに行っていた。そういうところが、反省するべき点だったということ? オランゼ国王陛下が言いたいことの全貌はまだ見えない。ただ、国王陛下はこれ以上は積極的にバークス公爵家を裁く気はないようだった。
「左様でございまいたか、父上」
「……」
私とヨハン様は現在、彼の父上……つまり、国王陛下とお会いしていた。場所は国王陛下であるオランゼ様の私室だ。私は緊張感で潰されそうになっていた。ヨハン様とは幼馴染の関係にあるので、オランゼ様とお会いしたことは何度もあるのだけれど……流石に今現在お会いすると、自分が成長している分、言葉が上手く出て来るのか不安だった。
「それで、エレナ嬢は土地を慰謝料代わりにしてほしいと言ったのだな。なるほど、相当な機転だったな」
「いえ、陛下……そのようなことは……」
やはり、あまり言葉が出てこない。まともに話せないわ。
「父上、エレナ嬢は国王陛下の御前ですので緊張していると思われます」
「そうだったのか? エレナ嬢?」
「も、申し訳ありません……国王陛下」
「いや、謝る必要はないがな。そんなに緊張する必要はないが……まあ、緊張するなというのも酷な話か」
良かった、オランゼ様は理解を示してくれたようだ。彼は私との会話を一時、中断し、ヨハン様と話し始めた。
「それで、ヨハン。お前はどうするつもりなのだ? あのエメラダ夫人が土地の引き渡しを今さら拒むとは考えられんが……」
「そうですね……私も父上と同じ意見です。エメラダ夫人が土地の引き渡し自体を拒むとは考えていません」
「それならば、特に大きな問題はないのではないか?」
「……父上?」
一瞬、ヨハン様は首を傾げた。オランゼ様の言葉の意味の理解に時間が掛かったからだ。
「父上、申し訳ありませんが……どういう意味でしょうか? エメラダ夫人のことで、土地さえ貰えば問題ないと、父上はおっしゃるのですか?」
「違うのか? エレナ嬢の慰謝料が支払われればそれ以上、バークス公爵家を糾弾しても意味がないだろう。バークス公爵家の息子であるリグリットはおそらくもう、公爵の座に就くことは出来ぬ。それだけでも、十分な罰を与えていると思うがな」
「それは……」
「もしかとは思うが、ヨハンよ。バークス公爵家に、必要以上に介入することを考えているのではあるまいな?」
「……」
オランゼ国王陛下からの厳しい一言だった。ヨハン様は俯いてしまっている。私も何も言えなくなっていた。この場でヨハン様をフォローできるのは私しか居ないのに……。不思議なほどに言葉が出てこない。それは緊張感から出ない状況とは明らかに異なっていた。
一体、どうすればいいんだろうか?
「ヨハン、お前がバークス公爵家に責める理由はなんだ? そちらに居るエレナ嬢の為ではないのか?」
「その通りです……だからこそ、ガイア・バークス公爵やエメラダ夫人を……」
「お前の気持ちはわからんでもない。しかし、エレナ嬢の為にという感情が先行し過ぎて、本質を見失っていないか?」
「本質を……見失う?」
私もヨハン様もついつい、オランゼ国王陛下の話に聞き入ってしまっている。
「そうだヨハン。お前はバークス公爵家の者達をどこまで罰せば良いのか、見失っているだろう? 今回の件はかなり大きな事件と言える。身内が絡んでいるからこそ、客観的な視点を忘れてはならないぞ」
客観的な視点か……確かに私達は直接、ガイア様やエメラダ夫人に会いに行っていた。そういうところが、反省するべき点だったということ? オランゼ国王陛下が言いたいことの全貌はまだ見えない。ただ、国王陛下はこれ以上は積極的にバークス公爵家を裁く気はないようだった。
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