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25話 土地の貰い受けについて その1
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「土地……それを慰謝料として、提出ですか」
「はい。私個人の提案としてですが、聞き入れていただけないでしょうか?」
「エレナ……」
私の提案に対して、エメラダ様はもちろん、ヨハン様ですら驚いているようだった。自分で言うのもなんだけど、それなりに良い提案だったと思うのだけれど。バークス家にとっても、悪い話ではないはず。バークス家にとってみても悪い条件ではないはずだけれど。
「エメラダ夫人にとっても、悪い条件ではないと思いますが? 如何でございますか……? ヨハン様もそう思いませんか?」
後押しとして、ヨハン様にも意見を求めた。彼は優しく頷いてくれた。
「確かにな、エレナの言う通りだ。エメラダ夫人、どうだろうか? 土地の提供という形で」
「土地の提供……具体的にはどの部分の土地を、提供を望まれているのですか?」
「そうだな……それは私が決めることではない。エレナは何か、欲しい土地があるのか?」
「そうですね……バークス家の土地を貰えるということでしたら、東の海岸線か、南の国境線を含む土地をいただきたいと思っております」
「海岸線か、国境線……!? な、なるほど……うふふふふ、そうですか……」
エメラダ夫人の表情はとても怖いものになっていた。明らかに不満があるようだったけれど、ヨハン様の手前、大きく反論することが出来ないようだ。狙い通りの態度をようやく取ってくれた瞬間かもしれない。ヨハン様を前にしても、まったく譲らない構えだったエメラダ夫人。
その牙城を少し破りつつあると言えるのだろうか。ただ、私自身が破り過ぎるのは良くないことだと思っている。私はエメラダ夫人よりも身分が低いからね。やはり、肝心な部分ではヨハン様が頼りになってしまう。彼には悪いけど、頑張っていただきたい。
私の土地を慰謝料にする提案は上手くいきそうだし、このまま進めていければ……。
「少し、考える時間をいただけませんか? エレナ嬢の私達に降り注ぐであろう、慰謝料流用疑惑を回避する狙いというのも理解は出来るのですが……やはり、事は大きいので私だけでは判断が難しくなります」
まあ、普通はそうなるわよね……この場での即答は出来ないだろうし、相手に時間を与えてしまうのは仕方のないことか。ヨハン様もその辺りは分かっているようだった。エメラダ様の言葉に頷いていたから。
「もちろん、この場で決めるというのは出来ないだろう。ゆっくりと、バークス家で話し合ってくれ。ゆっくりとな……」
「ええ、そうさせてもらいますわ……」
ヨハン様とエメラダ夫人……二人の視線の間に火花が飛び散っているような感覚を受けてしまった。ヨハン様は「妙な策を練るのは得策ではないぞ?」と忠告しているようで、エメラダ夫人は「あら、そんなことを私達がする必要がありますか? 何せエレナ嬢は被害者であるにも関わらず、私達、バークス家のことを考えて現金ではなく土地の受け渡しを提案してくれたのですから……」と言っているように思えた。いえ、多分本当にそう思っていたのだと思う。
バークス家がしっかりと責任を取っているということを分からせる為に、土地の明け渡しを提案したことについては、当然のように見破られているわね。まあ、エメラダ夫人ならそれくらい容易に読めるか。
「はい。私個人の提案としてですが、聞き入れていただけないでしょうか?」
「エレナ……」
私の提案に対して、エメラダ様はもちろん、ヨハン様ですら驚いているようだった。自分で言うのもなんだけど、それなりに良い提案だったと思うのだけれど。バークス家にとっても、悪い話ではないはず。バークス家にとってみても悪い条件ではないはずだけれど。
「エメラダ夫人にとっても、悪い条件ではないと思いますが? 如何でございますか……? ヨハン様もそう思いませんか?」
後押しとして、ヨハン様にも意見を求めた。彼は優しく頷いてくれた。
「確かにな、エレナの言う通りだ。エメラダ夫人、どうだろうか? 土地の提供という形で」
「土地の提供……具体的にはどの部分の土地を、提供を望まれているのですか?」
「そうだな……それは私が決めることではない。エレナは何か、欲しい土地があるのか?」
「そうですね……バークス家の土地を貰えるということでしたら、東の海岸線か、南の国境線を含む土地をいただきたいと思っております」
「海岸線か、国境線……!? な、なるほど……うふふふふ、そうですか……」
エメラダ夫人の表情はとても怖いものになっていた。明らかに不満があるようだったけれど、ヨハン様の手前、大きく反論することが出来ないようだ。狙い通りの態度をようやく取ってくれた瞬間かもしれない。ヨハン様を前にしても、まったく譲らない構えだったエメラダ夫人。
その牙城を少し破りつつあると言えるのだろうか。ただ、私自身が破り過ぎるのは良くないことだと思っている。私はエメラダ夫人よりも身分が低いからね。やはり、肝心な部分ではヨハン様が頼りになってしまう。彼には悪いけど、頑張っていただきたい。
私の土地を慰謝料にする提案は上手くいきそうだし、このまま進めていければ……。
「少し、考える時間をいただけませんか? エレナ嬢の私達に降り注ぐであろう、慰謝料流用疑惑を回避する狙いというのも理解は出来るのですが……やはり、事は大きいので私だけでは判断が難しくなります」
まあ、普通はそうなるわよね……この場での即答は出来ないだろうし、相手に時間を与えてしまうのは仕方のないことか。ヨハン様もその辺りは分かっているようだった。エメラダ様の言葉に頷いていたから。
「もちろん、この場で決めるというのは出来ないだろう。ゆっくりと、バークス家で話し合ってくれ。ゆっくりとな……」
「ええ、そうさせてもらいますわ……」
ヨハン様とエメラダ夫人……二人の視線の間に火花が飛び散っているような感覚を受けてしまった。ヨハン様は「妙な策を練るのは得策ではないぞ?」と忠告しているようで、エメラダ夫人は「あら、そんなことを私達がする必要がありますか? 何せエレナ嬢は被害者であるにも関わらず、私達、バークス家のことを考えて現金ではなく土地の受け渡しを提案してくれたのですから……」と言っているように思えた。いえ、多分本当にそう思っていたのだと思う。
バークス家がしっかりと責任を取っているということを分からせる為に、土地の明け渡しを提案したことについては、当然のように見破られているわね。まあ、エメラダ夫人ならそれくらい容易に読めるか。
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