上 下
57 / 58

57話 妹との和解 その4

しおりを挟む

「メープル……」

「なんですか? シャルナ姉さま?」


「まさかあなたに、そんなことを指摘されるとは思いもしなかったわ」


「いや~~~、褒めないでくださいよ。照れちゃうじゃないですか!」


 決して褒めてるわけじゃないんだけどな……でも、ある意味で感心してるのは事実だ。あの、幼い頃から甘やかされて育ってきた妹のメープルが……。私はそんな彼女を反面教師にして、他の貴族との関係性を良好なものにしたりとパーティーの席で楽しめた経験なんてほとんどなかったのに。

 あのユアン様やベノム様と過ごしたパーティーを除いては……。


「念のため言っておくけど、褒めてはいないからね?」

「分かってますよ、姉さま。今まで色んな迷惑を姉さまに掛けてきたんですから。こんなことくらいで褒められるなんて微塵も思っていません」

「……」


 メープルはどこまで本気話しているのか、それが読めなかった。彼女は昔から甘やかされて育ってはきたけど、男性経験や恋愛経験という意味では私なんて比べ物にならない。だから……そっち方面での指摘というのは、無下にするわけにもいかないのよね。癪ではあるけれど……。

 でも、今回は私もやらかしてしまったわけだし、お互い様かもしれない。メープルもやらかしたし、私もやらかしてしまった……ただ、それだけのこと。それによってユアン様を傷付ける結果になってしまったけれど、おそらくメープルがフォローをしてくれたのだと思う。

「ねえ、メープル……その、言っておきたいことがあるんだけれど」

「……? なんですか?」

「その……ありがとう。フォローしてくれたみたいだし。主にユアン様の件について」

「シャルナ姉さまから、ありがとうっていう言葉が出るとは思いませんでしたよ」

「私だって言いたいわけじゃないわよ……」

「分かってますよ」


 メープルには本当に今まで迷惑を掛けられてきた。今回のことくらいではとても帳消しになんて出来ないくらいに。でも彼女はリシド様の再々教育で確実に変わりつつはあると思う。その点に関してはしっかりと認めようと思っている。


「でも、メープル。私達は血の通った姉妹だわ」

「ええ、そうですね」

「これから少しでも、歩み寄っていければ良いと考えているのだけれど……どうかしら?」


 これは妹への本心の問いかけでもある。こんな気持ちが浮かんでくるなんて、少し前の私からは想像できなかった。私も少し成長した……というよりも、色んな人に出会えて物事の見方が変わったのかもしれない。さて、メープルの答えはどうなるかしら?


「もちろんです姉さま。姉さまは今後、私にとっても利益になる人なので……仲良くしたいとは思ってますし」

「あなたは本当に……」

「あははははっ」

「ふふふっ、まったくもう……」


 打算なのか本心なのか分からない微妙な答えが返って来た。まあ、それでこそメープルと言えるのかもしれないわね。私達の関係性が少しでも良くなるように……私は努力していきたいと思う。今はそんな感情に支配されていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。 はずだった。 目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う? あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる? でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの? 私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

処理中です...