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42話 それからの出来事 その3

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(メープル視点)


「違うだろう、メープル! 挨拶の仕方はそうじゃない、ちゃんと教えたはずだ」

「こ、こうでしょうか……?」

「違う違う、何度も言わせないでくれ……ちゃんとメイドの侍女の動きを真似るんだ!」

「うう……難しい。姉さま、恨みますよ……」

 私はリシド・ブレイク公爵の屋敷で再々教育とかいうのを受けさせられていた。人生はイージーモードを掲げていただけにこの再々教育と言う名の束縛はキツイものがある。

 どうして私がこんな目に……お父様もお母様も姉さまも、みんな薄情者だわ……! 外出を許されずに、ひたすらリシド様や侍女たちと猛特訓の日々が続いている。朝から晩まで再々教育は続くので、私の自由な時間はほとんど与えられていなかった。

 本当にどうしよう……前は逃げ出せたけれど、今回逃げ出すと罪人になりかねないから、それだけは出来ない。16歳という年齢で地下牢行きはごめんだしね。何とか今は、早く休憩時間になってくれることを願っていた……。



--------------------------------------



「はあ……終わりました~~……」


 それからしばらくして、休憩時間になった。私は隅に置かれた質素な椅子に腰を掛ける。応接室の1つを改装し教育部屋にしたもので、急造の家具で間に合わせているのだ。

「まだ、本日だけでも終わりではないがな」

「うう、思い出させないでくださいよ!」


 休憩時間だけは楽しいことを考えたいのに……リシド様は本性はドSなのかもしれない。そうだとしたらお別れしたいんだけ……。


「それはともかくとしてだな、メープル」

「なんですか~~?」

「お前の姉のシャルナだが……とうとう、意中の王子殿下を発表したらしいじゃないか」

「そういえばそうでしたね……」


 前に聞いたことのある内容だった。私のことじゃなくて姉さまのことだし、特に興味津々にはなれない。でも、せったくの話題でもあるので、もう少し乗ってみようと思う。何か面白いことになるかもしれないし。

「ベノム王子殿下を選んだんですよね」

「そうだな、あれには私も驚かされたよ。シャルナのことだから、ユアン第二王子殿下を選ぶと思っていたからな」

 そうだろうか? あの、シャルナ姉さまならベノム第三王子殿下に気持ちが向かってもおかしくはないと思う。なぜなら……


「シャルナ姉さまはあれで意外と夢見がちなんですよ」

「いや、メープルが言っても説得力を感じないが。彼女はしっかり者で、貴族との会合でもかなり気を使っていたそうじゃないか。その様子を見ていたベノム王子殿下に惚れられたという逸話があるくらいだ」

「だからですよ……だから、インパクトの大きい告白? とか、そういうのには弱いんです」

「インパクトの大きい告白……?」

「はい。前のパーティーの席でベノム王子殿下が私を叱責しましたよね?」

「そういえばそうだったな」

「あの現場でのあれだけの叱責……近くで聞いていたシャルナ姉さまにとっては、非常にインパクトの大きな事柄になったはずです。しかも、自分にとって都合の良い事柄でもあるんです。無意識の内にベノム様のことを好きになってもおかしくありませんよ。ほら、姉さまって恋愛経験とかはないでしょうし」

 私が唯一、姉さまに勝っている部分といえば、恋愛経験だ。恋愛経験というか外見を活かしての肉体関係というか、そんな感じだけれど。

 リシド様が頷いているのを見て、ある程度説得力はあったのかな? と思えた。

 そんな風に考えることが出来るなんて……私も少しは成長を果たせたのかもしれない。

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