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40話 それからの出来事 その1

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 それから、しばらくの時間が経過した。私はベノム様との婚約を確かなものとする為、アモネート家とブリスド宮殿を何度も往来することになった。あれほど帰りたくないと思っていた場所だけれど、立場が変わると不思議なものだ。

 特に戻っても良いという気持ちになってくるのだから。もちろん、メープルやお父様、お母様に囲まれての生活はしたくないけれど。

 国王陛下や王妃様が挨拶に向かった時のお父様とお母様の様子は、今でも忘れられなかった。


「け、ケビン様……! それに、マルガリータ様まで……!」

「こ、このようなところにいらっしゃるとは……! こ、光栄の極みにござります!!」

 その時の二人の慌て方は本当に面白かったわ。国王陛下にも、そんなに慌てる貴族があるか! って注意されていたけれど。まあ、婚姻の挨拶なんだからもう少し普通に接して欲しかったというのはある。


 婚約に関する両者の挨拶は滞りなく終了し、私は現在、ベノム様の隣を歩いていた。ブリスド宮殿内の庭園を歩いている。

「騎士団長閣下、お疲れ様でございます!」

「うむ、本日も見張りを怠らないようにな」

「畏まりました! お任せください!」


 第三王子殿下でありながら、騎士団長務めている武闘派のベノム様。庭園周辺の警備を行っていた兵士達はすれ違う時には、必ずベノム様に挨拶をしていた。私の存在もあるので、話し込んだりはしないみたいだけれど。


「こうして、シャルナ嬢と歩いているのが不思議な気分だ」

「そうなんですか?」


 ベノム様は私のことをまだ、シャルナ嬢と呼んでいる。完全に呼び捨てにするのは照れ臭いようだ。まあ、その点に関しては時間が解決してくれるだろう。


「ユアンと……を選ぶと思っていたからな。私の心の中では、婚約を果たし庭園を一緒に歩いているのはユアンになるだろうと踏んでいた」

 それはリュート様やバール様にも言われたことだ。やっぱり、ベノム様もずっと感じていたことなのね。


「何度か聞いて申し訳ないが、本当に私で良かったのか?」

「はい、ベノム様。私はベノム様と未来を進んでいきたいと思っておりますので」

「そうか……しかし、私は側室の子になるが……もしかすると、トラブルになる可能性だってあるのだぞ?」

「トラブルについては、ベノム様以外のお方と婚約したとしても同じだと思いますが」

「それはそうかもしれんが」


 王族との婚約、結婚というのは多かれ少なかれトラブルの原因にはなるはず。ユアン様と婚約していたとしてもそれは変わらないだろう。それに……


「私は妹のメープルというトラブルメーカーとずっと過ごして来ましたので。トラブルには慣れています」

「ふふ、なるほど。そういう風に言われると妙に説得力があるな」


 王族の問題を直接解決は出来ないだろうけど、トラブルメーカーで鍛えられた精神力がある。ベノム様の支えとなって生きて行けたらと考えていた。

 ベノム様との婚約は無事に終了した。これからは、より責任感を持って生きて行く必要があるわね。

 ところで……リシド様に再々教育を受けているはずの、メープルは大丈夫かしら?

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