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10話 シャルナとユアン その2

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 私はユアン王子殿下と楽しく話を続けていた。先ほど、彼からはとても怪しい一言が飛んできていたけれど、そのことについては、とりあえず保留にして。


「シャルナ、この串の肉は中々に旨いのではないか?」

「本当ですね、ユアン様。作っている料理長さんの腕の良さが際立つ焼き加減と言いましょうか……」

「確かに、最高の焼き加減ではあるな。他にもサラダの味付けも見事だ」

「とても美味しいですね」

「うむ」


 そんな私達を無言で見つめている二人の存在。妹のメープルとリシド・ブレイク公爵の二人だ。ユアン王子殿下が来るまでは、これでもかとイチャイチャしていたのに、すっかり影を潜めてしまった。正直、ユアン王子殿下が来たからといって、必要以上に態度を変える必要はないと思うのだけれど。


 私は二人の態度を不思議に思いながらも、ユアン王子殿下との話しを続けることにした。彼が現れたら、妹はどう思うのか……それは少し楽しみだったけれど、予想以上に無言になったのは驚きでもあった。



-----------------------------



(メープル視点)


 おかしい……こんなことがあって、良いのかしら? シャルナ姉さまが、ユアン第二王子殿下と親しそうに話しをしている。こんなに楽しそうに話している姉さまを見たのはいつ以来かしら? いえ、私の記憶が正しければ、過去の姉さまの17年間で今ほど楽しんでいた時はなかったはず。

 とっても力が抜けて、心の底から笑っているのがよく分かるというか……。


「まさか、シャルナがユアン王子殿下とここまで仲が良かったとはな……ん? メープル、どうしたのだ?」

「い、いえ……なんでもありません、リシド様」


 信じられない……あのとても二枚目で有名なユアン王子殿下が、まさかシャルナ姉さまにここまでの好意を見せているなんて。私の方がお洒落だし、絶対に可愛いのに……! 私はいつの間にか、姉さまへの対抗心を強く持っていた。

「メープル……?」


 リシド様がさっきから、何かを話しているようだけれど、私の耳にはほとんど届いていなかった。

 ムカつく……それが私の素直な感情だ。姉さまは私の引き立て役でしかないんだから、彼女が二枚目なユアン王子殿下と仲が良い姉さまの邪魔をなんとかしてやろうと、画策していた。


 まずは、何をしてやろうかな? 私が転んでみて、手を差し伸べてくれたユアン王子殿下の手を持って、悔しがらせてみようかしら? そのあとは思いっきり王子殿下に甘えて、嫉妬する姉さまを余裕綽々で眺めてあげようっと!

 私の計画は決まった。あとは実行に移すだけね……。
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