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1話 婚約者を奪われたシャルナ

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 おかしい……なぜ、このようなことになっているのか理解できない。


「そういうことだからな、シャルナよ。済まないが、お前との婚約は破棄させてもらおう」

「ごめんなさい、姉さま。リシド様は可愛い私の方が好みのようですので」

「……」


 私の婚約者であるはずの、リシド・ブレイク公爵の腕にくっついているのは、私の妹であるメープル・アモネート。私達はアモネート家の伯爵令嬢であり、年齢は17歳と16歳。小さい頃から、お父様やお母さまにも可愛がられ育てられてきた。

 その可愛らしい外見と態度を武器に、昔から私の好きになった物を奪ってきた妹でもある。今回のリシド様の場合は政略結婚という側面が強いけれど、どうやらメープルはそれすらも奪おうとしているようだった。

「公爵様……本気、なのですか?」

「済まないな、シャルナよ。私は妻としては、メープルのように守ってあげたくあるタイプが好きなのだ。お前はいささか、しっかりし過ぎているのでな」

 メープルのような妹を持てば、しっかりせざるを得なくなる。リシド様はその辺りに気づいていないようだった。


「ごめんなさい、姉さま。姉さまとの婚約は破棄になるけれど、私との婚約が発生するからアモネート家としては、全然問題ないと思いますよ~?」

「メープル、あなたは……」


 おそらく、お父様やお母様もメープルには甘いので同じことを言うと思う。私は怒りを通り越して呆れてしまっていた。いままでは可愛い妹として我慢していたけれど、流石に限度というものがある。


「そうですか、残念ですリシド様……メープルも婚約おめでとう」

「ありがとう、姉さま! 大丈夫ですよ、姉さまの分まで幸せになりますから!」

「そう……用件がそれだけなら、私はこれで失礼させていただいても?」

「ああ、構わないとも」

「それでは、失礼いたします」


 私は二人に頭を下げると、そのままブレイク公爵家を後にした。彼ら二人の大きな笑い声を聞きながら。悔しい……リシド様を奪っておいて、なんのお咎めもなしになりそうなところが余計に。もちろん、リシド様自身は公爵家系であり、妹と婚約を締結するので、慰謝料などは発生しないだろう。


「こんなことがあっていいの……? 私の人生って一体……!」


 あの妹のせいで、私はこれまで楽しい思い出というのがほとんどなかった。お父様やお母様の愛情すら、あまり感じずに育てられたし。それでも可愛い妹の為ということで我慢してきたけれど、今回の仕打ちはあまりにも酷い。私は屋敷へ向かう馬車の中で、思わず涙を流していた……。
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