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3話 新たなる道へ その2

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「エレナ様、今後の予定でございますが……マルーク・ウェベリ侯爵が主催の舞踏会になりますが、ご出席なさいますか?」

「ま、マルークってまさか……!?」


 メイドの一人であるパームがニコリと笑っていた。私が驚くのを想定していたようだ。


「はい、そうですね。マルーク様はエレナ様の幼馴染になるかと思います。あの頃は侯爵令息でしたけど、今は侯爵になられているのですよ?」

「ええ、そんなことが……! 私と同じ歳よね? 19歳で侯爵家の当主って……」

「ええ、そうですね。非常にめずらしいことだと思われます」

 リューガ王国の長い歴史を考えれば、あり得ないことではないのかもしれないけれど、19歳で侯爵様って……24歳で国王陛下になったマグリト様より凄いかもしれないわね。

 側室の教育で必死だったから、全然知らなかったわ……。


「そうなんだ、知らなかったわ……パーム」

「エレナ様は最近は王族の方々との婚約ですとか、教育ですとか、パーティ出席とかがありましたから……こちらにまで意識が向かないのは仕方ないと思います」

「ま、まあそれは……確かに」


 幼馴染のマルークが侯爵になっており、彼が主催の舞踏会があることを知らなかったなんて失礼かとは思うけれど……最近の私はかなり忙しかったしね。

 マグリト様の溺愛を一心に受けて……それでいて、婚約期間中だから身体を差し出せとは一切言われなくて。マグリト様はそういうところでは非常に紳士なお方だった。彼との思い出は単純に楽しかったと言える。側室の教育については辛かった時も多いけれど、マグリト様の優しさに救われた時も多かったっけ。

 いけないいけない……マグリト様のことは忘れないといけないんだった。


「エレナ様、やはりマグリト国王陛下との思い出は簡単には忘れられませんか?」

「うっ……それは……」


 パームは私の専属のメイドの一人だ。彼女に嘘を吐くことは難しいと言えた。はあ……流石はパームね。


「まあ、そうね……マグリト様との思い出は単純に面白かったもの。途中から私に寄り過ぎだとは感じるようにはなったけれど、なかなか抜け出すのは辛かったわ」

「その気持ちは分かります。私も同じ立場になれば、抜け出せるかは不明ですので……」

「そうね……幸せを感じていたのは事実だわ」

 最初は王家の資金を使っていても、側室だし問題ないと考えていた。何よりも、あのマグリト様が行っていることだから間違いはないと思っていたの。でも……国民の税金を上げたという事実を知ってからはそれが変わってしまった。私の贅沢は国民の血税を浪費しているだけだと思わされてしまったのだ。

 だから、マグリト様との別れを決意したわけで……。

「マグリト様も私のことは忘れて、正室のラジェル様との仲を深めて欲しいわね」

「そうですね……そう願いたいところです。ところで、マルーク・ウェペリ侯爵の舞踏会は出席されますか?」

「そうね、出席することにするわ」

「畏まりました、そのように手配いたします」


 私の新しい道の開拓……マルークとの再会はそれに繋がるかもしれない。なんだかんだ言って、楽しみではあった。
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