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5話 ラークス・コルド第四王子殿下 その2

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「レミリム嬢、シャロン嬢……よく来てくれた。礼を言う」

「とってんでもないことでございます、ラークス王子殿下」


 私達はラークス王子殿下に頭を下げる。ラークス王子殿下は外見的に、心からお礼を言ってくれたのだとしても、とても威圧的に見えてしまう……これは非常に可哀想だと言うべきだろうか。


 私だって、彼の心の中を読めなければ、とても怖がっていたと思うし……難しいわね、人間って。でも、彼の雰囲気を見ていると良くない噂が出てしまうのも、悪いとは言えない。

「ラークス王子殿下」

「なんだ?」

「姉のシャロンより伺っております。私とその……接触をご希望されていた、と。そちらは合っておりますでしょうか?」


 既に心の声で分かってはいるけれど、とりあえず質問してみた。


「ああ、合っている……」

「左様でございますか、光栄です」


 ラークス様はぶっきらぼうに言っているように見えるけれど、心の中は違っていた。


(しまった……! これでは悪い印象しか持たれないのではないか? しかし……私の見た目で笑顔になっても、それはそれで不気味だろうしな……)


 なかなかお茶目なことを考えているようだ。本来の性格はもっと、明るいのかもしれない。ただ、それを表に出す方法が分かっていないだけで……。私はどうやら、大きな誤解をしていたようだ。人の噂なんて所詮はそんなものね。

 しかし……このままでは話が進みにくいけれど、どうしたら良いのかしら。私達が心を読めることは王家でも一部の方しか知らないと聞いているし。余計なトラブルを回避するためにそうしているらしい。

 とにかく今は私が主導で進めた方がいいわね。


「ラークス王子殿下はどのようなご理由で、私との接触を望まれていたのでしょうか?」

「それは……」


 あ、俯いてしまった。心の中を読めばおそらく答えは分かるけれど、こればかりはラークス様の口から直接聞いておきたかった。


「最近まで婚約者が居た、ということは知っている。婚約破棄をされた直後、だということもな……」

「は、はい……その通りです」


 フィリップ様との婚約破棄はしっかり伝わっているようだった。王子殿下なのだから、その辺りの情報はすぐに伝わるのだろうけど、少し恥ずかしい。

「私は以前からレミリム嬢のことが気になっていたのだ……私のような怖い噂のある男に、こんなことを言われても困るかもしれないが、良ければ好意的に解釈して欲しい……」


 寡黙という噂のラークス様から出た言葉……「好意的に解釈」とおっしゃっているのが、どこかおかしかったけれど、私は好意的に捉えていた。

 なんだろう? よく分からないけれど、彼の言葉には温かみがあったのだ。どこかの元婚約者とは大違いね。
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