上 下
48 / 60

48話 セルガスとのデート その2

しおりを挟む

「つまりですね、アーチェ嬢……」

「は、はい……」


 派閥についての話は食事をしに入った、レストラン内でも行われた。すっかりデートという気分ではなくなっているけれど、偶にはこういう雰囲気も良いかもしれないわね。何より、重要な話だしね。


「あなたが側室にられた場合、その背後に存在する貴族達は……決して、あなたの味方というわけではないでしょう」

「それは……そうですよね」

「ええ……スザンヌ王妃も同じく派閥は構成されていると思いますが、これも真にスザンヌ様のことを想っている貴族は、果たして何人居るのか、といったところでしょうね。ですので、決してあなただけに限った話ではありませんが」

「……」


 私は側室になることの重圧をセルガス様から、聞かされていた。似たような話はお父様からも聞いたことはあるけれど、セルガス様の方が生々しい。それは、私が手を伸ばせばすぐに側室になれる位置まで来ているからだと思うけれど。

「あなたが背後に着く派閥を全て背負いきれるというのであれば、ネプト様との愛を成就させても良いと思います。もちろん、側室になれば必ずスザンヌ様とも対立はするでしょう」

「そ、それは……」

「あの方から見れば、あなたは浮気相手でしかない。以前に、スザンヌ様と話されたようですが、よくスザンヌ様は笑顔で対応出来たと思っております」

「私は……ネプト様と一緒になりたいと、一時期は本気で考えました」

「ええ、そうなのでしょうね」


 レストランの空気がどんどん重くなっていく……周囲には護衛が居るので、私達の話は聞かれてはいないはずだけれど。


「その考えは純粋に考えた結果でした……そんなに間違っていたのでしょうか……?」

「間違いではないでしょう。ただし、スザンヌ様からすれば……アーチェ嬢は浮気相手に映ってしまうでしょうね。そこに悪気がなかったにしろ、ニーナ嬢とやっていることは変わりません」

「ニーナと……そ、そんなことは……!」


 私は慌てて強く否定してしまった。でも、見方を変えれば確かにその通りだ。私はあれほどまで、ニーナのことを拒絶したのに……その後に、同じことを別の女性にしてしまったことになるのか。

「もちろん、あなたに悪気はないでしょうし、側室というのは王家でも認められた立ち位置ですから、法律上の問題は特にありません。あなたが他の貴族達に咎められる必要はない。しかし、ニーナ嬢は違う……まあ、その辺りは明確な違いと言えますかね」

 セルガス様は正論で、私をフォローしてくれていたけれど、私はなんと返せば良いのか分からなかった。今後、どのようにすれば良いのか分からなくなったからだ。

 私とネプト様が一緒になる未来はない……私は完全に別の道を歩む方が良い。そう思えて仕方がなかったから。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?

水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。 メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。 そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。 しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。 そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。 メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。 婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。 そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。 ※小説家になろうでも掲載しています。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

処理中です...