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14話 アーチェに会いに行く その2
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「ニーナだけでなく、ウォーレスも来るのね……」
「そうみたいです、アーチェ姉さま」
「ウォーレス殿とニーナ嬢……一体、何を考えておるのか」
ウォーレスとニーナ……二人がノーム伯爵家の屋敷に来るという連絡は、お父様に最初に伝わった。現在、お父様とフォルセが私の前で話している。二人とも怪訝な表情を見せながら。
「内容的には、前のパーティーの続きになるでしょうね」
「そうですね、姉さま。ニーナ嬢は正直、何を考えているのか分かりませんが、ウォーレス殿はなんとなく想像できますね」
「そうね……」
ニーナに適当な甘言に惑わされて、私に再度の告白などを考えていそうだ。今度はパーティーの席ではないし、成功するかもしれないと思っていそう……。そんなわけないのに……。
「それでアーチェよ。二人と会うのか? 正直、会う必要性が感じられないが……」
「それはそうなのですが、二人とは幼馴染でしたし。ウォーレスはともかく、ニーナとは話がしたいという想いがあります」
「ふむ……お前のその幼馴染を大切にする、という感情は優しさから来ているのだろうが、諸刃の剣にならなければ良いがな」
「父上、流石にそれは言い過ぎかと思います。姉さまは別に悪気があるわけでは……」
「そんなことは分かっている。しかし……このまま二人と話をした場合、アーチェ一人では押し切られてしまうだろう」
「えっ……それは……」
フォルセは私を庇ってくれているけれど、お父様の言い分は正しいと思えた。私は少し幼馴染という関係に固執し過ぎているのかもしれない。親友と思っていた二人だし、裏切られるのが怖いのだ。いえ、既にウォーレスには裏切られているけれど……。
ウォーレスはともかくとして、ニーナは仕方なく、ウォーレスと婚約していると思いたかった。表向きはともかく、心の底ではニーナは悪いと思っていると。だからこそ、今回はニーナと腹を割って話したかった。まあ、ウォーレスがおまけで付いて来るのは避けられないけれど。
「ニーナ嬢は、高級なお茶菓子を持ってくるのだそうだ。滅多に手に入らない、他国のお菓子のようだぞ」
「そうなんですか……仲直りの証のつもりなんでしょうか」
「それは都合よく考えすぎだろう。向こうからすれば、話をする為の撒き餌のようなものだろう」
「そうですね……撒き餌というのは正しいかと」
お父様もフォルセも、二人のことを全く信用している気配はなかった。私もこれくらい割り切れたら楽なのに……。どうしてもそこまでは割り切れない自分が居る。
「しかし、今回は私も居るのだから、安心しても大丈夫だろう」
「お父様……はい、ありがとうございます。それからフォルセも……」
「いえ、気になさらないでください、姉さま」
母様は不在だけれど、弟のフォルセ、お父様が味方をしてくれる。ニーナだって迂闊なことを言うわけにはいかないだろう。さらには……。
「私の出番はないことを祈っている」
「ネプト国王陛下……」
ノーム家の屋敷には既にネプト国王陛下が待機しているのだった。強力な専属護衛と一緒に。正直、この場にいらっしゃるのが奇跡のように感じられる。
ニーナとウォーレスにとっては、本当に迂闊なことを言えない状況になりそうね。
「そうみたいです、アーチェ姉さま」
「ウォーレス殿とニーナ嬢……一体、何を考えておるのか」
ウォーレスとニーナ……二人がノーム伯爵家の屋敷に来るという連絡は、お父様に最初に伝わった。現在、お父様とフォルセが私の前で話している。二人とも怪訝な表情を見せながら。
「内容的には、前のパーティーの続きになるでしょうね」
「そうですね、姉さま。ニーナ嬢は正直、何を考えているのか分かりませんが、ウォーレス殿はなんとなく想像できますね」
「そうね……」
ニーナに適当な甘言に惑わされて、私に再度の告白などを考えていそうだ。今度はパーティーの席ではないし、成功するかもしれないと思っていそう……。そんなわけないのに……。
「それでアーチェよ。二人と会うのか? 正直、会う必要性が感じられないが……」
「それはそうなのですが、二人とは幼馴染でしたし。ウォーレスはともかく、ニーナとは話がしたいという想いがあります」
「ふむ……お前のその幼馴染を大切にする、という感情は優しさから来ているのだろうが、諸刃の剣にならなければ良いがな」
「父上、流石にそれは言い過ぎかと思います。姉さまは別に悪気があるわけでは……」
「そんなことは分かっている。しかし……このまま二人と話をした場合、アーチェ一人では押し切られてしまうだろう」
「えっ……それは……」
フォルセは私を庇ってくれているけれど、お父様の言い分は正しいと思えた。私は少し幼馴染という関係に固執し過ぎているのかもしれない。親友と思っていた二人だし、裏切られるのが怖いのだ。いえ、既にウォーレスには裏切られているけれど……。
ウォーレスはともかくとして、ニーナは仕方なく、ウォーレスと婚約していると思いたかった。表向きはともかく、心の底ではニーナは悪いと思っていると。だからこそ、今回はニーナと腹を割って話したかった。まあ、ウォーレスがおまけで付いて来るのは避けられないけれど。
「ニーナ嬢は、高級なお茶菓子を持ってくるのだそうだ。滅多に手に入らない、他国のお菓子のようだぞ」
「そうなんですか……仲直りの証のつもりなんでしょうか」
「それは都合よく考えすぎだろう。向こうからすれば、話をする為の撒き餌のようなものだろう」
「そうですね……撒き餌というのは正しいかと」
お父様もフォルセも、二人のことを全く信用している気配はなかった。私もこれくらい割り切れたら楽なのに……。どうしてもそこまでは割り切れない自分が居る。
「しかし、今回は私も居るのだから、安心しても大丈夫だろう」
「お父様……はい、ありがとうございます。それからフォルセも……」
「いえ、気になさらないでください、姉さま」
母様は不在だけれど、弟のフォルセ、お父様が味方をしてくれる。ニーナだって迂闊なことを言うわけにはいかないだろう。さらには……。
「私の出番はないことを祈っている」
「ネプト国王陛下……」
ノーム家の屋敷には既にネプト国王陛下が待機しているのだった。強力な専属護衛と一緒に。正直、この場にいらっしゃるのが奇跡のように感じられる。
ニーナとウォーレスにとっては、本当に迂闊なことを言えない状況になりそうね。
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