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3話 アグリットの想い
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(アグリット視点)
「ねえ、アグリット。今日はどこへ行きましょうか?」
「あ、ああ……そうだね、どこへ行こうか……」
アーシェラとの婚約破棄からしばらくの時間が経過していた。私とレンナの二人は無事に婚約を締結することが出来た。アーシェラへの慰謝料の支払いも完了し……全ては順調だった。
そう、順調だったはずなのだ……。
「アグリット、顔色が良くないように思えるわ? 本当に大丈夫? 今日は出掛けるのは止めにしましょうか?」
「そ、そうだな……済まない、レンナ。体調が少し悪いようだ……可能であればそうしていただけないだろうか」
「わかったわ」
「ありがとう、レンナ」
「いいのよ、アグリット。気にしないで」
レンナは私に気遣いをしてくれる。幼馴染ということもあり、お互いの性格なども熟知している。周囲から見れば、理想的な婚約と言えるのかもしれない。
しかし、私の中でのわだかまりは大きくなっていくばかりだった。それは……アーシェラへの想いだ。私はレンナという女性と一緒になる為に、彼女とは婚約破棄をしたのに……こんな想いを持つことなど、許されるはずはない。
だが、生まれてくる想いというのは止めることが出来なかった。
「レンナ……」
「アグリット?」
私はアーシェラのことを愛している。いや、彼女をより愛しているといった方が正しいだろうか。アーシェラとしばらく離れて、そのことに気付いた。レンナよりもアーシェラに対する想いの方が確実に強いのだ。彼女に別れを切り出した時とは真逆のことを言っており、ハッキリ言って矛盾しているのだが……。
「アグリット、今日は失礼させてもらうわ。また、お出かけしましょうね」
「ああ……レンナ、ありがとう」
レンナの笑顔が眩しい……本来であれば、このまま彼女との恋を成就させるのが正しいと言えるだろう。しかし……ここで動かなければ、私は一生後悔するような気がしてしまっていた。
アーシェラ……本当に勝手な言い分だが、私のところへ戻って来て欲しい……そのように彼女に伝える。レンナとは別れることになるだろう……最低なことをしているが、今度こそ決して間違えないように。
「ねえ、アグリット。今日はどこへ行きましょうか?」
「あ、ああ……そうだね、どこへ行こうか……」
アーシェラとの婚約破棄からしばらくの時間が経過していた。私とレンナの二人は無事に婚約を締結することが出来た。アーシェラへの慰謝料の支払いも完了し……全ては順調だった。
そう、順調だったはずなのだ……。
「アグリット、顔色が良くないように思えるわ? 本当に大丈夫? 今日は出掛けるのは止めにしましょうか?」
「そ、そうだな……済まない、レンナ。体調が少し悪いようだ……可能であればそうしていただけないだろうか」
「わかったわ」
「ありがとう、レンナ」
「いいのよ、アグリット。気にしないで」
レンナは私に気遣いをしてくれる。幼馴染ということもあり、お互いの性格なども熟知している。周囲から見れば、理想的な婚約と言えるのかもしれない。
しかし、私の中でのわだかまりは大きくなっていくばかりだった。それは……アーシェラへの想いだ。私はレンナという女性と一緒になる為に、彼女とは婚約破棄をしたのに……こんな想いを持つことなど、許されるはずはない。
だが、生まれてくる想いというのは止めることが出来なかった。
「レンナ……」
「アグリット?」
私はアーシェラのことを愛している。いや、彼女をより愛しているといった方が正しいだろうか。アーシェラとしばらく離れて、そのことに気付いた。レンナよりもアーシェラに対する想いの方が確実に強いのだ。彼女に別れを切り出した時とは真逆のことを言っており、ハッキリ言って矛盾しているのだが……。
「アグリット、今日は失礼させてもらうわ。また、お出かけしましょうね」
「ああ……レンナ、ありがとう」
レンナの笑顔が眩しい……本来であれば、このまま彼女との恋を成就させるのが正しいと言えるだろう。しかし……ここで動かなければ、私は一生後悔するような気がしてしまっていた。
アーシェラ……本当に勝手な言い分だが、私のところへ戻って来て欲しい……そのように彼女に伝える。レンナとは別れることになるだろう……最低なことをしているが、今度こそ決して間違えないように。
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