上 下
13 / 60

13話 王太子殿下の計画 その2

しおりを挟む
「おお、お美しい……! あれが、噂のメリア・デルトーイ第一王女殿か……!」

「ふ~む、確かにとてもお美しいですな」


「いやですわ、殿方は……すぐに女性の外見のお話しになるのですから!」


 姿を現したメリア・デルトーイ王女様に対して、様々な言葉が飛び交っていた。ほとんどが彼女の外見を称賛する声になっており、必然的に男性の声が大きい。私の兄さまも例外ではなかった。

「メリア王女様……確かに、美しい」

「ダンテ兄さま……!」

「しかしながら、我が妹……ではないけれど、レオーネの方が美しい、うん」

「いえ、そういうことを言っているんじゃなくてですね……」


 驚くほどにダンテ兄さまは直角に意見を曲げた、それで何とかなると思っているのが面白いけれど。私は別に、自らの外見が上回っていると言って欲しかったわけじゃない。外見で負けているのは私自身が一番分かっているのだし、別に彼女に負けたからといって、悲しくなるものでもない。


 ビクティム・クラウス侯爵への想いは既に霧散したも同然なのだから、そこに嫉妬という感情は生まれるはずもなく。強いて言うなれば……彼女がフューリと何らかの繋がりを持っているであろう部分の方が気になるかもしれない。

 フューリへの想いは最近になって、より明確になって来た気がするし……私ってはしたない女かしら? ビクティム侯爵に婚約破棄されて、すぐに別の男性になんて……!

「大丈夫だ、レオーネ。決して、はしたなくはないぞ?」

「心の中を読まないでください、兄さま」

「声に出ていたぞ?」

「本当ですか……? う……?」


 とても恥ずかしいことをしてしまったようだ。穴があったら、入りたい気分かもしれない……。


「それに、悲しみに伏していた時に優しくされれば、通常はそちらに傾くものだ。それが幼馴染で、初恋の相手ならば猶更な」

「な、なんで知っているんですか……!」

「いや……昔のお前を見ていたら、一目瞭然だったが……当時の使用人達を含めて、皆わかっていたと思うぞ?」


 本当に……? 今は亡き、お母様やお父様にもバレていたのかしら? そう考えると、さらに恥ずかしくなってしまう……。

「お前の父君、母君……私からすれば伯母上と叔父上になるが、天国から見守っているだろう」

「はい、兄さま」

 良く分からない感情と言ってしまえるのか……なんだか、私の心は満ち足りた気分になっていた。そんな時、ビクティム侯爵の自信満々の声が鳴り響く。会場内で轟いている、メリア王女への賞賛の声に賛同するかのように。

「我が妻となる、メリア・デルトーイ王女になります! 彼女と私との結婚を機に、両国の繋がりはより一層、強固なものとして……!」

「あら、ビクティム様? より一層強固な繋がり? どういうことでしょうか?」


「ん? なにを言っているのかな……メリア王女?」


 あれ? 少し、雲行きが怪しくなってきたような……私は直感的にそう感じた。主に、計画通りと言わんばかりのメリア王女様の表情からそう察したのだけれど。


「ビクティム侯爵、あなた……独立を考えているとおっしゃっていませんでした?:


「……えっ? 独立?」


 ビクティム侯爵は素っ頓狂な声をあげている。まるで意味が分からないとばかりに……。これは……ビクティム侯爵にとっては、物凄く不利益なことが起きる前兆だと思われる。なぜなら、メリア王女が出て来た場所から、フューリの姿があったから。これはフューリの計画の一部ということかしら?

 いえ、それよりも……なぜメリア王女の背後から、彼が現れたのかしら? 私はむしろ、そっちの方が気になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝る間が極楽、だが寝れない

Hk
恋愛
【第14回恋愛小説大賞にて奨励賞を頂きました】  修道女のステファニーは国王の庶子だが、幼い頃から修道院で暮らしていた。ある日還俗してオーウェン・バートン伯爵の元へ降嫁することを命じられる。  一方、オーウェンは自身が携わった鉱山採掘における崩落事故のトラウマで、不眠と閉所恐怖症に悩まされていた。強制的な結婚だったので、3年で離縁することをステファニーに約束するオーウェン。  しかし降嫁してきたステファニーはなんだか変わっていて、一緒に過ごすうちにトラウマが薄れだんだんステファニーのことが気になって仕方なくなってきて… ※本編完結。たまに番外編を更新しています ※他サイトにも投稿しています ※主人公の仕事については一部ふわふわ設定です ※表紙イラストはあまもり様(@amamori_stst)に描いて頂きました

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!

らんか
恋愛
 あれ?    何で私が悪役令嬢に転生してるの?  えっ!   しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!  国外追放かぁ。  娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。  そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。  愛し子って、私が!?  普通はヒロインの役目じゃないの!?  

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~

瑠美るみ子
恋愛
 サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。  だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。  今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。  好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。  王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。  一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め…… *小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

婚約者様にお子様ができてから、私は……

希猫 ゆうみ
恋愛
アスガルド王国の姫君のダンス教師である私には婚約者がいる。 王室騎士団に所属する伯爵令息ヴィクターだ。しかしある日、突然、ヴィクターは子持ちになった。 神官と女奴隷の間に生まれた〝罪の子〟である私が姫君の教師に抜擢されたのは奇跡であり、貴族に求婚されたのはあり得ない程の幸運だった。 だから、我儘は言えない…… 結婚し、養母となることを受け入れるべき…… 自分にそう言い聞かせた時、代わりに怒ってくれる人がいた。 姫君の語学教師である伯爵令嬢スカーレイだった。 「勝手です。この子の、女としての幸せはどうなるのです?」 〝罪の子〟の象徴である深紅の瞳。 〝罪の子〟を片時も忘れさせない〝ルビー〟という名前。 冷遇される私をスカーレイは〝スノウ〟と呼び、いつも庇護してくれた。 私は子持ちの婚約者と結婚し、ダンス教師スノウの人生を生きる。 スカーレイの傍で生きていく人生ならば〝スノウ〟は幸せだった。 併し、これが恐ろしい復讐劇の始まりだった。 そしてアスガルド王国を勝利へと導いた国軍から若き中尉ジェイドが送り込まれる。 ジェイドが〝スノウ〟と出会ったその時、全ての歯車が狂い始め───…… (※R15の残酷描写を含む回には話数の後に「※」を付けます。タグにも適用しました。苦手な方は自衛の程よろしくお願いいたします) (※『王女様、それは酷すぎませんか?』関連作ですが、時系列と国が異なる為それぞれ単品としてお読み頂けます)

処理中です...