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3話 同じ趣味を持つお方

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「舞踏会に出て正解だったかもしれないわね……」

「ん? どうかされましたか、シルヴィア嬢」

「いえ、こちらの話でございます。お気になさらないでください、バルク様」

「左様でございますか、それなら良いのですが……」


 私は例の事件以降、初めてとなる舞踏会に出席していた。元々、出席を予定していた催し物をキャンセルするのは印象としては良くないと思えたからだ。お父様やユグド兄さまの許可も出たので、普段通りに出席したのだけれど……。私にとっては嬉しい? 誤算があった。

「しかし、こうしてシルヴィア嬢と知り合えたのは、本当に良かったと思います。貴方様とは一度、お話をしてみたいと考えておりましたから」

「ありがとうございます、バルク様。とても光栄なことでございます」


 舞踏会会場で起こった嬉しい誤算……それは目の前にいらっしゃるバルク・キリストール辺境伯に会えたことだった。

「バルク様が料理を趣味にしていたなんて、本当に驚きでした」


 そう……彼は辺境伯という立場にありながら、料理研究を自らの楽しみにしているらしい。それは私も同じだった。暇な時間を見つけては、使用人達と一緒に料理のレシピを考えるのが好きだった。だから、バルク様の方から声を掛けて来た時はビックリしてしまったけれど……その理由が趣味に関しての話がしたいから、というものだったのだ。

「そうでしょうか? 確かに使用人や父上、母上などにも同じことを言われたことがございますが」

「私も言われたことがあります、本来は必要のないスキルだと」

「なるほど、ただまあ趣味の範囲で持つ分にはとても良いスキルではないでしょうか。もしもの時、役に立つスキルであるとも言えますしね」

「確かにそうかもしれませんね」


 バルク様の言う「もしもの時」というのは、私達が一般人になってしまった場合などを指すのだろうか。周囲に料理を作ってくれる人が居なくなれば、自分の能力が頼りになるしね。そういう局面では有利だと思えた。

「シルヴィア嬢、よろしければ今度、一緒に料理を楽しみませんか? 貴方さえ宜しければ、ですが……」


 具体的なことをバルク様は言わなかったけれど、彼はおそらく、私が婚約破棄されたことを知っている。だからこそ、気を使ってくれているのだろう。もちろん、私の答えは決まっている。

「はい、畏まりました。是非、ご一緒させてください」

「それは良かった。では、決まりですね」


 まさかバルク様という同じ趣味を持つお方と知り合いになれるとは思わなかったわ。アルヴィド様との婚約破棄で精神的に病みかけていた私だけれど、上手く発散させることが出来るかもしれない。
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