2 / 6
2話 リューガ・サンドフ公爵令息 その1
しおりを挟む「リューガ様、お久しぶりでございます」
「う、うん……久しぶりだね、メアル」
「はい、リューガ様」
「……」
私はリューガ・サンドフ公爵令息の屋敷を訪れていた。何人かの付き人と一緒に。久しぶりの再会に感動していることを伝える。
「こうしてリューガ様とお会い出来たことは、至上の喜びでございますわ」
「あの……メアル」
「如何なさいましたでしょうか、リューガ様?」
「その話し方、なんとかならないのか? 凄くむず痒いんだけど……」
「いえ、一応は公爵令息相手なのだし……言葉遣いに気を付けたつもりなんだけれど」
「一応も何も私は紛れもなく公爵令息だぞ」
「そう言えばそうだったわね」
リューガは丁寧な話し方を私がするのを嫌がっているようだった。私もそろそろキツイので戻っているけれど。まあ、久しぶりに会ったので照れくささを隠す為のスキンシップみたいなものだ。
「それじゃあ、そろそろ戻すわね。久しぶり、リューガ。こうして会えて嬉しいわ」
「私もだよ、メアル。君がナバット殿と婚約してからは会えなかったからな。婚約者に失礼になってしまうし」
「え、ええ……そうね……」
既にリューガには婚約破棄の話をしている。非常に驚いていたけれど、しっかりと聞いてくれた。
「まあ、その婚約も無くなったみたいだけどな」
「そうね……」
「びっくりしているよ。まさか、ナバット・アレクセイ侯爵令息ともあろう者が、別の女性と結婚するという理由で君との婚約を破棄するなんてな。しかも強制的に……信じられん」
「私も今だって信じられないわ。半分夢を見ていたかのようだったし」
今でもあの婚約破棄は何だったのか信じられない。私の半年間の婚約生活を無駄にさせただけでなく、傷物令嬢という汚名まで背負わせたのだから……ナバット様のことは本当に許せないわ。
「ナバット様のことは許せないわ……でも、彼のことを考えて神経を使うのは、とても勿体ないと思っているのよ」
「それは確かにそうかもな。私に会いに来てくれたのは、気持ちを切り替える為か?」
「そんなところね。今なら、誰にも気を遣う必要はないのだし」
リューガにも婚約者はまだ居ない。私も婚約破棄をされたのだから、幼馴染同士で出会っても特に問題はないはず。
「それなら、昔の遊び場にでも行かないか? 私としても君の気分転換には付き合いたいと思っているしな」
「昔の遊び場って……貴族街の時計塔の辺りかしら?」
「そうだな、どうだい?」
「別に構わないわよ、行きましょう」
あの辺りは現在はデートスポットになっているけれど……まあ、問題はないか。別にリューガはデートのつもりで連れ出すわけじゃないだろうしね。
ふふふ、久しぶりのリューガとのお出かけか。楽しみだわ。
10
お気に入りに追加
1,388
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
妹がいらないと言った婚約者は最高でした
朝山みどり
恋愛
わたしは、侯爵家の長女。跡取りとして学院にも行かず、執務をやって来た。婿に来る王子殿下も好きなのは妹。両親も気楽に遊んでいる妹が大事だ。
息詰まる毎日だった。そんなある日、思いがけない事が起こった。
わたしはそれを利用した。大事にしたい人も見つけた。わたしは幸せになる為に精一杯の事をする。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる