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16話 ルーザについて その1

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「ルーザ嬢、少し宜しいかしら?」

「フィルア王女殿下……? な、なんでしょうか……」


 ブンド様は完全敗北で放心状態になっている。付き人が寄り添っているけれど、一定の罰は免れないでしょうね。それよりも、フィルア姉さまの興味はルーザ嬢に向かっているようだった。さっき、自分が見られていたことを知っているのね。

「ルーザ嬢……なかなか、好判断だったじゃない。あなたが事前に第二王女が誰なのか分からなかったというのは、嘘じゃないかしら?」

「ど、どういう意味でしょうか……?」


 明らかにルーザ嬢の態度が変わった。それに合わせてフィルア姉さまも声を落とす。周囲に聞こえないようにしているみたいだ。えっ、何が始まるんだろうか?

「どういう意味か、この場で話しても良いのかしら? 別に私は困らないけれど、あなたは困るでしょう? あんまり大きな声で言うようなことではないだろうし」

「……流石ですね、フィルア王女殿下。私の心の中は全てお見通しのようですね……」

「いえ、あくまでも予想でしかないわ。根拠なんて何もないんだから」


 ルーザ嬢とフィルア姉さまは怪しい会話をしていた。私は少し置いてけぼりになっている。


「少し離れるけれど、あちらの部屋で話さないかしら? 私の部屋になっているわ」

「よろしいのですか? フィルア王女殿下の部屋に入っても。私などが……」

「別に構わないわよ。ああ、良かったらフェリスも来ない? 意外と楽しい会話が出来るかもね」

「わ、わかりました……でも、ブンド様はどうするのですか?」

「あの男はもう何も出来ないわよ。護衛の連中に任せておけば大丈夫よ。もちろん、フォルテ殿にも手出しはさせない。これ以上、罪を重ねたらこの場で死刑にするわ」


 フィルア姉さまでも死刑にする権限はないだろうけれど、本当にやりそうなところが非常に怖かった。流石、10年前には次期女王に推薦する貴族が多かった人物だけあるわ。フィルア姉さまは過激派の推薦を受けていた……私はその過激派の勢いに巻き込まれないようにする為に、養女という形で子爵家に移動させられたのだ。

 だから、フィルア姉さまの言葉は非常に重みがあった。ルーザ嬢も行くことには同意しているし、私も付いて行ってみよう。
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