上 下
8 / 20

8話 秘密の第二王女殿下 その2

しおりを挟む

「秘密の第二王女殿下……ふふふ、面白い響きよね」

「フィルア姉さま……楽しんでますよね?」


 私は書類を通して第二王女に戻ることが出来た。お父様やお母様とは涙のお別れを通して……とは、意外とならなかったけれど。フィルア姉さまの言う通り、子爵家の家族は私が王家に戻ることに賛成なようだった。もちろん、悲しんではくれていたけれど、大切な王家の人間を守れなかった責任を感じているとか言っていたっけ。

 守れなかった責任というのは、ブンド・マルカール侯爵との婚約破棄を意味している。


「こういうのは楽しんだ方が勝ちなのよ」

「そういうものですかね……」

「そういうものよ」


 そんな状況ではあるけれど、フィルア姉さまは平常運転だった。私達は宮殿内の舞踏会会場に来ている。今回の主催の目的は第二王女である私のお披露目ということになっている。聞くところによると、一部の人以外には正体を明かしていないのだとか……これの意味するところは……。


「私の正体が明らかになっていないのは、フィルア姉さまの発案ですか?」

「まあね。これでも私、王家の中でも発言力があるから」

「まあ、それは分かっていますが……」


 フィルア姉さまは王位継承権第三位ではあるけれど、発言力で言えば、第一王子殿下並とも言われている。それは10年前の権力争いが起因しているらしいけれど。ちょうど、私がシネスタ子爵家の養女になった時期と重なっているわね。

 その時にはバスティン王国では珍しい、女王を生み出そうとする勢力が台頭していて……まあ、男女平等論に近いのかな。その関係で私は王家から離されたのだけれど。フィルア姉さまの権力が強くなったのはその辺りからと言われている。

「でも……私の正体を隠す意味ってありますかね? よく分からないんですが……」

「滅茶苦茶あるじゃない。ふふふ」


 怪しく笑っている姉さまはとても美しかったけれど、とても怖かった。まあ、私の為にしてくれているのだろうけれどね。

「ほら、噂をすれば……現れたわよ」

「えっ? あれって……ブンド様とルーザ様?」

「そうみたいね」


 ブンド様とルーザ様がまさか現れるなんて……確かに驚きだった。しかも、フォルテ兄さまが案内しているし。これはどういう状況なのかしら?
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

婚約破棄?私、貴方の婚約者ではありませんけれど

oro
恋愛
「アイリーン・ヒメネス!私は今この場で婚約を破棄する!」 王宮でのパーティにて、突然そう高らかに宣言したこの国の第1王子。 名前を呼ばれたアイリーンは、ニコリと微笑んで言った。 「あらあらそれは。おめでとうございます。」 ※誤字、脱字があります。御容赦ください。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます

白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。 そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。 最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。 『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

婚約者にざまぁしない話(ざまぁ有り)

しぎ
恋愛
「ガブリエーレ・グラオ!前に出てこい!」 卒業パーティーでの王子の突然の暴挙。 集められる三人の令嬢と婚約破棄。 「えぇ、喜んで婚約破棄いたしますわ。」 「ずっとこの日を待っていました。」 そして、最後に一人の令嬢は・・・ 基本隔日更新予定です。

処理中です...