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2話 大勢の味方 その1
しおりを挟む子爵令嬢という身ではあるけれど、侯爵様との婚約が決まった。それはとても喜ばしいことで、お父様もお母様も喜んでくれた。でも、その喜びは2カ月で失ってしまったのだ……。
私の婚約者だったブンド・マルカール侯爵は、伯爵令嬢のルーザ・オニオール様との婚約を選び、私は捨てられたのだ。その事実を二人に告げるのはとても心苦しかった。幼かった私を17歳になるまで育ててくれた二人なのに……。
「ブンド殿……侯爵としてあるまじき行為を……」
「信じられないわ。そんな身勝手なことをする方が侯爵という上位貴族に就いているなんて……」
「ああ、確かにな……」
お父様とお母様はとても暗い表情になっていた。私は二人の前で涙を見せないようにしていたけれど、本当に申し訳ないくて泣いてしまいそうだ。なんとか堪えることに集中しているけれど……。
「本当に申し訳ありません……お父様、お母様」
「何を言っているんだ、フェリス! お前は何も悪くないのだぞ!」
「ええ、その通りですよ。フェリスは完全に被害者なのですから……全てはブンド様の身勝手さにあると言えるわ」
「あ、ありがとうございます……」
私は二人の優しさに助けられてしまった。シネスタ家は既に跡取りである兄さまが二人いる。その為に次期当主という意味合いで困ることはないのだけれど……。
私は少し特殊な立ち位置なのだ。嫁ぎ先がなくなってしまった場合、心配になることがある。
「お父様……私はどうなるのでしょうか?」
「ん? どういう意味だ?」
「いえ、その……」
「ああ、そういうことか。まあ、その件に関しては私の方から報告はしておく。とにかくお前はゆっくりするのだ。兄達は今は屋敷に居ないが、会いに行くのも気分転換になるだろう?」
兄さま達は現在、それぞれの婚約者のところに行っているはず。確かに会いに行くのは良いのかもしれない。
「左様でございますね、ありがとうございます」
「ははは、本当に感謝の言葉など必要はないさ。本来であれば、こうして普通に接することが失礼に値するのだからな」
「お父様……止めてくださいよ。私はお父様に本当に感謝しております」
「そうですよ、あなた。フェリスに対して失礼です」
「これは済まなかった。とにかく、フェリスは身体を癒すことに集中するのだ。後のことは任せておけ」
「本当に申し訳ありません……」
特殊な環境にある私……そのおかげで、お父様やお母様達にも心配を掛けているのかもしれない。二人や兄さま達はそのことで気を遣われるのを嫌っているけれど。
私は元々は王家の人間なのだ……。
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