3 / 11
3話 舞踏会にて その1
しおりを挟む
私は予定していた舞踏会にミーファと一緒に参加することにした。ミーファ以外にも護衛が3人いるけれど、彼らは基本的に離れて歩いている。私の身に危険が及んだ場合に助けてくれるというわけだ。
「伯爵以上の方々が集まっているわね……流石だわ」
「本日の舞踏会はユーライア侯爵の誕生日祝いを兼ねていますから。伯爵家以上の方が呼ばれているのだと思います」
「なるほど、確かにそれなら納得できるわね」
今回の舞踏会の主役であるマグス・ユーライア侯爵は会場の中央で結婚相手と思われる人物と踊りを披露していた。周囲の人物はそれを拍手で見送っている。私も周囲に合わせて拍手をしていた。
「アンナ様はユーライア侯爵と話をされたことはございますか?」
「いえ、ないわ。ミーファはあるんじゃないの?」
「僭越ながら2回程ございます。ユーライア侯爵は非常に人間の出来たお方ですので、アンナ様もお話をされてはどうでしょうか」
「そうね……考えておくわ。ありがとう」
「いえ、とんでもないことでございます」
このようにミーファには大変お世話になっている。挨拶すべき貴族を教えてもらったのは、今回だけではない。
まあ、ルード様への挨拶も彼女に勧められたので、全てが良い方向に行っているわけではないけれど、基本的には良い方向に向かうことが多い。
「思えば、ルード・フィクス公爵への挨拶も私が勧めたのでしたね」
「え、ええ……確かそうだったかしら」
「アンナ様の婚約は、あの挨拶がきっかけだったと聞いております。その節は大変申し訳ありませんでした……」
「いえ、気にしないでミーファ。ミーファは私の為を思って勧めてくれたのだと思うし……」
「それは事実ですが、結果としてアンナ様を不幸にさせてしまったのですし……」
ミーファは非常に責任感の強い人だ。こういう場合には人一倍に責任を感じていることだろう。放っておけば、償いとして使用人を辞めかねない。それはなんとしても阻止したかった。
「私は全く気にしていないわ。どうかミーファも気にしないで? ね?」
「さ、左様でございますか……アンナ様がそうおっしゃるのでしたら……畏まりました」
「うん、ありがとう」
良かった。彼女は責任感の強い人物だけれど、同時に目上の者の意見は尊重する傾向がある。今回はこれで大丈夫そうね。さてと、せっかく舞踏会に出ているのだし楽しまないとね。
私は近くのテーブルに用意されていた料理に手を出した。すると……。
「ああ、済まない……」
「あ、いえ……こちらこそ……」
男性と手が当たってしまった。咄嗟にその人物に視線を合わせると……。
「お前は……アンナか?」
「ルード様……」
まさか、同じ舞踏会に出席していたとは。普通に考えればあり得ることだけれど、最悪なタイミングで出会ったものね……私は自然と歯を食いしばっていた。
「伯爵以上の方々が集まっているわね……流石だわ」
「本日の舞踏会はユーライア侯爵の誕生日祝いを兼ねていますから。伯爵家以上の方が呼ばれているのだと思います」
「なるほど、確かにそれなら納得できるわね」
今回の舞踏会の主役であるマグス・ユーライア侯爵は会場の中央で結婚相手と思われる人物と踊りを披露していた。周囲の人物はそれを拍手で見送っている。私も周囲に合わせて拍手をしていた。
「アンナ様はユーライア侯爵と話をされたことはございますか?」
「いえ、ないわ。ミーファはあるんじゃないの?」
「僭越ながら2回程ございます。ユーライア侯爵は非常に人間の出来たお方ですので、アンナ様もお話をされてはどうでしょうか」
「そうね……考えておくわ。ありがとう」
「いえ、とんでもないことでございます」
このようにミーファには大変お世話になっている。挨拶すべき貴族を教えてもらったのは、今回だけではない。
まあ、ルード様への挨拶も彼女に勧められたので、全てが良い方向に行っているわけではないけれど、基本的には良い方向に向かうことが多い。
「思えば、ルード・フィクス公爵への挨拶も私が勧めたのでしたね」
「え、ええ……確かそうだったかしら」
「アンナ様の婚約は、あの挨拶がきっかけだったと聞いております。その節は大変申し訳ありませんでした……」
「いえ、気にしないでミーファ。ミーファは私の為を思って勧めてくれたのだと思うし……」
「それは事実ですが、結果としてアンナ様を不幸にさせてしまったのですし……」
ミーファは非常に責任感の強い人だ。こういう場合には人一倍に責任を感じていることだろう。放っておけば、償いとして使用人を辞めかねない。それはなんとしても阻止したかった。
「私は全く気にしていないわ。どうかミーファも気にしないで? ね?」
「さ、左様でございますか……アンナ様がそうおっしゃるのでしたら……畏まりました」
「うん、ありがとう」
良かった。彼女は責任感の強い人物だけれど、同時に目上の者の意見は尊重する傾向がある。今回はこれで大丈夫そうね。さてと、せっかく舞踏会に出ているのだし楽しまないとね。
私は近くのテーブルに用意されていた料理に手を出した。すると……。
「ああ、済まない……」
「あ、いえ……こちらこそ……」
男性と手が当たってしまった。咄嗟にその人物に視線を合わせると……。
「お前は……アンナか?」
「ルード様……」
まさか、同じ舞踏会に出席していたとは。普通に考えればあり得ることだけれど、最悪なタイミングで出会ったものね……私は自然と歯を食いしばっていた。
0
お気に入りに追加
2,349
あなたにおすすめの小説
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜
雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。
だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。
平民ごときでは釣り合わないらしい。
笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。
何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!
夢草 蝶
恋愛
伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。
しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。
翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。
家柄が悪いから婚約破棄? 辺境伯の娘だから芋臭い? 私を溺愛している騎士とお父様が怒りますよ?
西東友一
恋愛
ウォーリー辺境伯の娘ミシェルはとても優れた聖女だった。その噂がレオナルド王子の耳に入り、婚約することになった。遠路はるばる王都についてみれば、レオナルド王子から婚約破棄を言い渡されました。どうやら、王都にいる貴族たちから色々吹き込まれたみたいです。仕舞いにはそんな令嬢たちから「芋臭い」なんて言われてしまいました。
連れてきた護衛のアーサーが今にも剣を抜きそうになっていましたけれど、そんなことをしたらアーサーが処刑されてしまうので、私は買い物をして田舎に帰ることを決めました。
★★
恋愛小説コンテストに出す予定です。
タイトル含め、修正する可能性があります。
ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたします。
ネタバレ含むんですが、設定の順番をかえさせていただきました。設定にしおりをしてくださった200名を超える皆様、本当にごめんなさい。お手数おかけしますが、引き続きお読みください。
身勝手な婚約破棄をされたのですが、第一王子殿下がキレて下さいました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢であるエリーゼは、第ニ王子殿下であるジスタードに婚約破棄を言い渡された。
理由はジスタードが所帯をを持ちたくなく、まだまだ遊んでいたいからというものだ。
あまりに身勝手な婚約破棄だったが、エリーゼは身分の差から逆らうことは出来なかった。
逆らえないのはエリーゼの家系である、ラクドアリン伯爵家も同じであった。
しかし、エリーゼの交友関係の中で唯一の頼れる存在が居た。
それは兄のように慕っていた第一王子のアリューゼだ。
アリューゼの逆鱗に触れたジスタードは、それはもう大変な目に遭うのだった……。
婚約破棄って、貴方誰ですか?
やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。
何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。
「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる