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3話 舞踏会にて その1

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 私は予定していた舞踏会にミーファと一緒に参加することにした。ミーファ以外にも護衛が3人いるけれど、彼らは基本的に離れて歩いている。私の身に危険が及んだ場合に助けてくれるというわけだ。


「伯爵以上の方々が集まっているわね……流石だわ」

「本日の舞踏会はユーライア侯爵の誕生日祝いを兼ねていますから。伯爵家以上の方が呼ばれているのだと思います」

「なるほど、確かにそれなら納得できるわね」

 今回の舞踏会の主役であるマグス・ユーライア侯爵は会場の中央で結婚相手と思われる人物と踊りを披露していた。周囲の人物はそれを拍手で見送っている。私も周囲に合わせて拍手をしていた。

「アンナ様はユーライア侯爵と話をされたことはございますか?」

「いえ、ないわ。ミーファはあるんじゃないの?」

「僭越ながら2回程ございます。ユーライア侯爵は非常に人間の出来たお方ですので、アンナ様もお話をされてはどうでしょうか」

「そうね……考えておくわ。ありがとう」

「いえ、とんでもないことでございます」

 このようにミーファには大変お世話になっている。挨拶すべき貴族を教えてもらったのは、今回だけではない。

 まあ、ルード様への挨拶も彼女に勧められたので、全てが良い方向に行っているわけではないけれど、基本的には良い方向に向かうことが多い。

「思えば、ルード・フィクス公爵への挨拶も私が勧めたのでしたね」

「え、ええ……確かそうだったかしら」

「アンナ様の婚約は、あの挨拶がきっかけだったと聞いております。その節は大変申し訳ありませんでした……」

「いえ、気にしないでミーファ。ミーファは私の為を思って勧めてくれたのだと思うし……」

「それは事実ですが、結果としてアンナ様を不幸にさせてしまったのですし……」


 ミーファは非常に責任感の強い人だ。こういう場合には人一倍に責任を感じていることだろう。放っておけば、償いとして使用人を辞めかねない。それはなんとしても阻止したかった。

「私は全く気にしていないわ。どうかミーファも気にしないで? ね?」

「さ、左様でございますか……アンナ様がそうおっしゃるのでしたら……畏まりました」

「うん、ありがとう」

 良かった。彼女は責任感の強い人物だけれど、同時に目上の者の意見は尊重する傾向がある。今回はこれで大丈夫そうね。さてと、せっかく舞踏会に出ているのだし楽しまないとね。

 私は近くのテーブルに用意されていた料理に手を出した。すると……。

「ああ、済まない……」

「あ、いえ……こちらこそ……」

 男性と手が当たってしまった。咄嗟にその人物に視線を合わせると……。

「お前は……アンナか?」

「ルード様……」


 まさか、同じ舞踏会に出席していたとは。普通に考えればあり得ることだけれど、最悪なタイミングで出会ったものね……私は自然と歯を食いしばっていた。
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