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(2)アランside
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しおりを挟む改めて目の当たりにした"完敗"に、焦らず、ゆっくりと自分の失恋の傷と向き合っていこうと思えた。
「……。
で?結局何を悩んでたんだ?」
「別に。何でもないですよ」
「嘘付け。何か心に引っかかってる事、あんだろ?」
兄上がオレを見てニッと微笑う。
すると、表面を覆っていたモヤモヤが消えたからか、自分の中に生まれ始めていた新たな悩みが思い浮かんだ。
それは、今朝あの女に言われた言葉ーー。
「……。"私の欲しい物は……私の手には、入らないもの"」
「ん?」
「……欲しい物を聞いたら、ある女がそう答えたんです。どういう意味だか、分かりますか?」
オレは大体の事の経緯(相手が使用人とか処女とかは省いて)を兄上に話し、女の言葉の意味の正しいの答えを求めた。
すると兄上はポカンとして言う。
「え?お前さ、それって……マジで分かんねぇの?」
「!……兄上、分かるんですか?」
「え、だってそれって……あ~、いや。それは、俺が教えちゃ駄目なやつだろ」
「は?」
兄上の言葉もオレには意味不明だった。と、言うか益々分からず、モヤモヤとしてくる。
そんな頭の中に浮かぶのは、女の悲しそうな表情。
気に入らない。
オレの前であんな表情するなんて気に入らないーー。
オレはこの問題をさっさと解決したくて、探している答えを知っているかのような兄上に深く追求する事にした。
「悩みがあるのか?と聞いたのは兄上でしょう?それなのに、教えてくれないんですか?」
「うっ、……」
「困っている可愛い弟を助けて下さいよ。ね?兄上」
「……お前、ずりぃな」
滅多に見せないしんみりとした表情、からのニコニコスマイルの合わせ技。弟思いの優しい兄の弱みを突いて、オレがなんとか答えを聞き出そうとすると、「仕方ねぇなー」ってため息混じりに微笑んだ兄上が箸を置いて席を立った。
しかし、心の中で「やった!」とガッツポーズするオレの元に、一旦自分の仕事机の方へ行き、引き出しから何かを持って戻ってきた兄上が差し出してきたのは……。
「ほい、これやるよ」
「?……香水、ですか?」
「ああ。ミネアにホテルとかで使うアメニティグッズのコラボ頼まれてさ。それ、試しに作ってみた商品の試供品なんだ。
それをその女の子に渡してみろ」
兄上に手渡されたのは、妖精を象った小瓶の香水。
これが、女の言葉の答え?あの女は何もいらないと言っておいて、実は香水が欲しかったのか?
と、難しい表情でガン見していると、また疑問に思うオレに勘づいたように兄上が補足の言葉を述べる。
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