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最終章(3)アカリside

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「良かった!俺達、以心伝心だな!」

声を弾ませて、とても嬉しそうに、幸せそうに微笑ってくれたから……。ただそれだけで、心が満たされていくのを感じるの。
ヴァロンはそうやって、一つずつ私の心を解放していく……。

「シュウとね、もう一度友達になったよ」

「!……本、当?」

「うん。だから、もう大丈夫。
それに夢の配達人の俺は、ちゃんと俺の中に居るから……。
今まで心配かけて、ごめんね」

「っ、……ううんっ」

私がずっと心残りだったシュウさんとの事、夢の配達人の事。大切な親友と大好きなお仕事を失った彼の事がずっとずっと心配だった。
でも、私に話してくれるヴァロンの清々しい表情にようやく安心出来て、涙腺が緩む。

っ……いけない、涙が。

晴れの日に相応しくないと思って涙を隠すように暫く俯いていると、ようやく歩みを止めた彼が再び口を開いた。

「よし、到着!」

その声と共に聞こえる波の音、そして潮の香り。
顔を上げると、そこは別荘の近くにある砂浜だった。


ここにはたくさんの想い出がある。
17歳の時、召使いになってくれるバロンと出逢った場所。花嫁修行の最終日に、二人で散歩しながらたくさん話した場所。
記憶を失くした彼と……。マオさんとも、大切な話をした。ここでは本当に、色々な事があった。
……そして。『月姫の祈り』の、舞台になった場所。


「もう一度ここから、やり直したいんだ」

「!……え、っ?」

彼はそう言って私を腕から降ろすと、正面でひざまずきながら左手を取って言った。

「ずっと俺の傍で、微笑っていて下さい」

「っーーー……」

その告白プロポーズを聞いた瞬間。"何故、今この場所に?"と、疑問を抱いていた私の身体にトクンッと大きな鼓動が響いて、波の音が消える。聴覚も、視覚も……私の五感は目の前にいる彼に惹きつけられる。

そして"ある事"を思い出した。
私は、この告白プロポーズを……。
ーーううん。この場面を、知っている。

ヴァロンと18歳に結婚する時に、言われたーー?

……っ、違う。
この告白プロポーズに、この場所砂浜
もっともっと、以前まえに……。私は"彼"に言われたんだ。
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