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第26章(1)アンナside
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もう三十年以上前になるのよね。
愛おしい夫リオンと、彼との間に産まれた息子ヴァロンと暮らしていたのは……。
そして、別れる事になったのは……、……。
幼い頃の記憶を失くしていた私は、娼婦の館の主人から「お前は金持ちの男が愛人との間に作った子供で、汚らわしいからこの館に売り飛ばされた」と、聞かされて育った。
私を捨てた両親が……。そして、金持ちの奴等が許せなかった。
媚びて、甘えて、上手に嘘を吐いて、奴等から大量の金を貢がせて、今度は私が捨ててやるの。
……そう思って、娼婦としての日々に力を注ぐ事しか私にはなかった。
けれど、そんな毎日に虚しさを感じ始めた頃。
『っ……僕は、こんな事をしに来たんじゃありません!』
『僕は、貴女が好きですっ!
だからっ……もう、こんな仕事辞めて下さい!!』
リオに、出逢った。
初めは、訳が分からなかった。
でも、共に時間を過ごして、彼と一緒に居る日々を重ねるうちに離れたくなくなっていた。
娼婦の館に来て以来、初めて私に"本当に優しくしてくれた"たった一人の男性。
だからヴァロンが産まれた時、怖かった。
私にも、彼にも似ていない髪と瞳の色を持つヴァロンを見る度に"私はリオに捨てられてしまうんじゃないか?"って、ずっと怯えていた。
その弱い心から、私は必要以上にヴァロンに厳くしてしまった。
ヴァロンが逆らわない事を……。私が怒っても、決まってあの子が「ごめんなさい」って微笑んでくれるのを良い事に、甘えていたの。本当に、ダメな母親。
ヴァロンが6歳の誕生日の夜。
きっとあの日が、私があの子に1番優しくしてやれた日だった。
リオが一日中家に居てくれて、私のお腹には新しい命が居て、精神的に安定していた私がヴァロンに怒鳴る事は一度もなかった。
『ねぇ!おとうとがうまれたら、アランってなまえにしよ~!』
誕生日パーティーの用意をしている最中、ヴァロンがそう提案した。「まだ男の子か女の子か分からないよ?」って言うリオに、絶対に弟だってあの子は言い切った。
アランーー。
その名前の響きに心地良さを感じて、私がお腹を撫でながら「良い名前ね」って呟いたら……。
『!っーー……ほんとう?!』
ヴァロンは声を弾ませて、その後ボロボロ泣いて、涙を拭いながら嬉しそうに微笑った。
もう三十年以上前になるのよね。
愛おしい夫リオンと、彼との間に産まれた息子ヴァロンと暮らしていたのは……。
そして、別れる事になったのは……、……。
幼い頃の記憶を失くしていた私は、娼婦の館の主人から「お前は金持ちの男が愛人との間に作った子供で、汚らわしいからこの館に売り飛ばされた」と、聞かされて育った。
私を捨てた両親が……。そして、金持ちの奴等が許せなかった。
媚びて、甘えて、上手に嘘を吐いて、奴等から大量の金を貢がせて、今度は私が捨ててやるの。
……そう思って、娼婦としての日々に力を注ぐ事しか私にはなかった。
けれど、そんな毎日に虚しさを感じ始めた頃。
『っ……僕は、こんな事をしに来たんじゃありません!』
『僕は、貴女が好きですっ!
だからっ……もう、こんな仕事辞めて下さい!!』
リオに、出逢った。
初めは、訳が分からなかった。
でも、共に時間を過ごして、彼と一緒に居る日々を重ねるうちに離れたくなくなっていた。
娼婦の館に来て以来、初めて私に"本当に優しくしてくれた"たった一人の男性。
だからヴァロンが産まれた時、怖かった。
私にも、彼にも似ていない髪と瞳の色を持つヴァロンを見る度に"私はリオに捨てられてしまうんじゃないか?"って、ずっと怯えていた。
その弱い心から、私は必要以上にヴァロンに厳くしてしまった。
ヴァロンが逆らわない事を……。私が怒っても、決まってあの子が「ごめんなさい」って微笑んでくれるのを良い事に、甘えていたの。本当に、ダメな母親。
ヴァロンが6歳の誕生日の夜。
きっとあの日が、私があの子に1番優しくしてやれた日だった。
リオが一日中家に居てくれて、私のお腹には新しい命が居て、精神的に安定していた私がヴァロンに怒鳴る事は一度もなかった。
『ねぇ!おとうとがうまれたら、アランってなまえにしよ~!』
誕生日パーティーの用意をしている最中、ヴァロンがそう提案した。「まだ男の子か女の子か分からないよ?」って言うリオに、絶対に弟だってあの子は言い切った。
アランーー。
その名前の響きに心地良さを感じて、私がお腹を撫でながら「良い名前ね」って呟いたら……。
『!っーー……ほんとう?!』
ヴァロンは声を弾ませて、その後ボロボロ泣いて、涙を拭いながら嬉しそうに微笑った。
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