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第22章(1)スズカside
1-1
しおりを挟む2月上旬ーー。
まだまだ春には遠いが、この日はとても天気が良かった。
私が勤めているアラン様のお邸は、今日の為に数日前からバタバタと大忙し。
「驚いたわよね~!」
「ね~!まさか、あのアラン様がご結婚なさるなんて!」
突然訪れたビックニュースに、私達使用人達は未だに驚きを隠せない。
そう、今日は私達の主人であるアラン様のご結婚相手がこちらへいらっしゃる日。
今までアラン様がご帰宅される際も、お客様を連れて来られる際も忙しく緊張したが、そんな日々なんて比べものにならないくらい、私達は恐縮していた。
何故ならお相手は、あのアラン様が選んだ方ですもの……。
確かに最近では私達使用人に対する扱いも、女性関係の噂も大人しくなってはきていたけれど……。
きっとこの邸にとって、また何か大きな影響をもたらすのではないか?と、私達は心配でならなかった。
しかも、私はその奥様のお世話役を任せられてしまったのだ。
15歳から奉公に出て、もうすぐ九年。
でも私は勤めている年月が長いだけで、たいした取り柄もない凡人なのに……。
そんな私をアラン様が奥様専属の使用人に指名してくるとは、まさか思わなかった。
今も不安で不安で、断れるものなら断りたい。誰かに代わってもらえるのならば、代わってもらいたいくらいだ。
憂鬱な気持ちでベッドメイキングをしていると、数年前に同じような気持ちになった事を思い出した。
それは18歳の時、アラン様のお仕事を手伝う為にこの邸に下宿していたあのお方の専属の使用人になった時だ。
マオ様ーー。
あの時はアラン様の親戚の方と聞いていたあの方が、後に実はアラン様の異母兄弟だったと知った時は驚いた。
でも、確かに初めてお会いした時にお父上様であるリオン様に何処となく似ていると感じたっけ。
アラン様とご一緒の時やお仕事の際にビシッとしている時は一見クールな冷たい印象を受けるけれど、本当はとてもお優しい方。
夜お部屋で二人きりになる時、朝のお支度を手伝う時、私は仕事だと言う事を忘れて胸をときめかせていた。
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