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第12章(3)アカリside
3-5
しおりを挟む……。
説明を聞いている私の頭の中には、お母さんが亡くなる時の事が次々と浮かんできた。
ちゃんとした治療を受けていたら、お母さんはもっと生きられたかも知れない。
何かもっと出来る事はなかったのか……。
そう、悔やんだあの時の気持ち。
「私の血液型は、あいつ(ヴァロン)と同じだ。私なら、救ってやる事が出来る。
……まあ、アカリ様の返答次第。だがね?」
「ヴァロン様の御命を救う代わりに、離縁しろ……と?
っ……シャルマ様ッ、貴方という方はっ!また御自分の欲の為に、一つの家庭を壊すおつもりですかッ?!
リオン様の時と同じようにッ……!!」
シャルマ様の言葉に、側にいたディアスさんが懸命に言葉を返してくれる。
……。
でも……。
とても大きな声なのに、私には遠く感じた。
頭の中は真っ白で、何が正しいのか。
正直分からなくて……。
ギュッと自分の右手で左手を握り締めると、薬指にはめている結婚指輪の感触に気付く。
ヴァロンと交わした永遠の誓い。
”共に歩み、敬い。
愛する事を誓います。
良き時も、悪きで時も、共に歩み他に依らず。
死が、2人を分かつまで……。”
……ずっと。
ずっと一緒に、いられると思ってたよ。
ヴァロンと一緒なら、どんな事でも乗り越えていけるって思ってた。
たくさん想い出を作って、時を重ねて……。
一緒に歳をとって、子供達が巣立っても、おじいちゃんおばあちゃんになっても仲良しで……。
いつか、どちらかが死ぬ間際まで傍に居て……。
さよなら、じゃなく。
”ありがとう、またね。”って束の間の旅立ちを見送るんだと……。思ってたよ。
……
…………。
〈回想終了〉
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