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第11章(5)ヴァロンside

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【自宅】

「母さん、ただい……ま。……っ?!」

ガチャッと玄関の扉を開けて帰宅すると、俺の目に飛び込んできたのは複数の黒いスーツを着た男達。
そして、まるで俺の帰宅を待ち構えていたように玄関の扉付近に潜んでいた奴等に左右から両腕を掴まれた。

突然の出来事に状況が飲み込めなくて、俺は無我夢中で暴れる。


「!っ……何すんだよッ!!
放せっ!放せよッ……!!」

「……威勢のいいガキだな」

暴れる俺を奴等は容赦無く押さえ付けて自由を奪うと、黒スーツの男のリーダーらしい人物が正面にやってきて俺の顎をガッと掴んだ。


「ふ~ん、確かにこれは珍しい。髪も瞳も、白金色に輝いている。
これなら高額で取り引きが出来そうだな」

「!?っ……」

高額で、取り引き……?

俺には奴等の事も、高額で取り引きという言葉も疑問でしかなくて……。
訳が分からなくて、呆然とした。


……。
いや、本当は……。
心の何処かでこの状況を理解しながらも、俺は信じたく……なかったんだ。


「……これは珍品ですよ。
しかも、奥さんに似て綺麗な顔立ちをしていて将来有望。女性客も欲しがるでしょう。
どんな子供も産んでおくものですね、奥さん」

”奥さん”……。
そう呼ばれた母さんが、奥の部屋から出てきて……。


「それで?その子、いくらで買って頂けるんですか?」

と、リーダーの男に尋ねた。

その言葉を聞いたら……。
固く握り締めていた拳から力が抜けて、俺の掌から母さんへのプレゼントの小さな包みが……。
ポトッと、床に落ちた。


「そうですね……。
これくらいで、いかがですか?」

そう言いながらリーダーの男が、大きな鞄から大量の札束をだして食卓のテーブルの上に積んだ。
それまでの生活では、見た事もない金額だった。
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