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第11章(2)ヴァロンside
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しおりを挟む幼い頃から娼婦の道しかなかった母は、学問が一切出来ない。
俺が解く問題集に付いている答え合わせの資料を見て、◯と×を付けているだけだった。
つまり、解き方は一切教えてもらえない。
俺には最初についている例題からヒントを得て、自分で考えて解く事しか出来なかった。
母さんが持ってくる問題集の文章には、いつもまだ見た事もない解らない文字も使われていて……。
おそらく、どう考えても当時の俺の年齢にあった課題ではなかったんだ。
でも、毎日一生懸命熟していた。
母さんは自分の両親を知らない。
棄てられて、大人達にいいように扱われ、本当の愛情を知らずに育った母さんは……。いつも俺への接し方に困っているように見えた。
俺への無茶振りも、母さんにとっては愛情。
何も学問を学ばせてもらえず、文字もあまり読めなければ簡単な計算すら手間取る自分のように俺をしたくなかったから。
そう、俺は自分に言い聞かせていた。
いつか、きっと褒めてくれる。
優しい言葉をかけて、微笑ってくれる日が来る。
だって、母さんは笑顔を知らない訳じゃないから……。
その証拠に。
「ただいま。アンナさん、ヴァロン」
家の扉がチャッと開いたかと思うと、穏やかな口調で、優しい笑顔を見せながら、黒に近い灰色の髪と瞳の男性が帰ってきた。
その男性こそ、俺の父親のリオン。
「!……おかえりなさい!とうさ……」
「リオ!おかえりなさいっ!」
俺の言葉を遮って、母さんは嬉しそうに声を弾ませながら父さんに駆け寄ると抱き付く。
そして。
幼い頃から習慣のように見ていても、目のやり場に困るくらいに口付けを交わし始め、母さんは父さんを”女の顔”で誘い始めるんだ。
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