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第11章(1)ヴァロンside

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【2月28日/高級ホテル】

「……では、契約の存続を考え直して頂けるのですね?ミネア様」

ホテル内にあるレストラン。
テーブルを挟んで正面に座っているミネアに尋ねると、彼女は笑顔を見せながら頷いてくれた。


「ええ。わたくしはマオ様が今後も担当して下さるのなら構いませんわ。
父も、この件はわたくしに一存して下さってます」

「ありがとうございます。
どうぞ、今後ともよろしくお願い致します!」

椅子から立ち上がり、俺はミネアに向かって深く頭を下げる。


冷静を装っていたが、内心はホッとした気持ちでいっぱいだった。
アカリを取り戻す為の条件である、打ち切られかけた契約の全てを結び直すという任務。

このミネアとの契約で、約束の全てが成立。


これで、アカリを取り戻す事が出来る。
一緒に港街へ帰る事が出来る。


勿論、契約を存続してもらう為には俺の担当が条件。
暫くアランの元で働く事が優先になり、夢の配達人として他の仕事は受けられなくなるが。それは仕方ない。

今はただ、これでアカリを無事に助け出せるとという安堵しかなかった。


「お顔を上げて下さいな、マオ様。
久々にお会い出来たのです。さ、ランチを楽しみましょう」

「はい」

すっかり緊張が解けてしまった俺。
ミネアの言葉に返事をして、席に戻ろうと頭を上げた瞬間。


「!ッ……」

「!……マオ様?!」

目の前が一瞬フワッと揺れる様にボヤけて、ミネアに名前を呼ばれたと思ったら……。

ガシャーンッ!!
と、ガラスが割れた音が辺りに響いた。


「……っ?」

フッと揺れた瞳が定まった自分の目に映るのは、俺がテーブルに手を着いた為に倒れて割れてしまった水の入ったグラス。
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