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第9章(3)ディアスside

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【夢の配達人寮/ディアスの部屋】

「……リオン様の想い、無駄には致しません」

部屋に置いてある、鍵付きの机の引き出しを見て私は呟いた。
そこにはリオン様より託された”ある物”を、厳重に保管している。

いつか、ヴァロン様に渡してほしいと託された物。


でも。
ヴァロン様が御自分の事を忘れ、今幸せに生きているなら渡さなくてもいいと……。言われた物。

……。
私は迷っていた。

白金バッジの夢の配達人として活躍するヴァロン様は、隠れ家に居てもなかなか会う事が難しいお方。
その姿をお見掛けする事さえ稀だった。

……そして。
先日、やっと正面から顔を合わせられた時。
ヴァロン様は、私の事を忘れているようだった。

それに……。


「驚いてしまいますよね。
アラン様の婚約者だったアカリ様と、まさかヴァロン様が御結婚なさるとは……」

心の中でリオン様に語り掛けながら、私は思わず微笑んだ。


去年のクリスマスイブに、御家族で商店街に買い物に来ていたヴァロン様は本当に幸せそうで……。
御自分の憧れた家庭を築いたヴァロン様の笑顔は、かつてのリオン様にとてもよく似ていた。


”ヴァロンが幸せなら、今のままでいい。”
リオン様なら、きっとそう言うと思った。

……。
だが、それでは余りにも悲しすぎる。

ヴァロン様の奥深くに眠るリオン様との最後の記憶が、間違いである事。
あの日、アンナ様とヴァロン様の元を去ったリオン様には理由があったのだと……。

誤解である事を、私は解きたかった。


そこで、私はある賭けに出た。
私の住所を書いた紙をヴァロン様に渡し、もしも彼が自らこの部屋を訪れて来てくれたら……。


「その時は……。貴方様の意向に背き、真実を告げる事を許して下さいね?リオン様」

その日が来たら、私はヴァロン様に私が知る全てを語ろうと決めていた。
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