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第8章(3)ヴァロンside
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しおりを挟む「ここに書いてある契約を期限内に全て取ってこられたら、人質は解放してやろう。
勿論、それまで危害は一切加えない。ちゃんと衣食住を整え、丁寧に持て成してやる」
有無を言わせない態度のアラン。
怪しさが滲み出ているが……。アカリが何処に監禁されているのか分からない以上、今は奴の言葉を信じるしかない。
「……。分かった」
返事をするとアランは俺から手を放し、胸ポケットから万年筆を取り出すと、依頼書と共に押し付けるように渡してきた。
夢の配達人になってから、数え切れない程書いてきた契約を結ぶサイン。
依頼人の夢を叶える為の、契約だった。
もしかしたら、色んな意味で最後になるかも知れないサインを書くのが……。人の為ではなく、自分の為だと言う現実に苦笑いが漏れる。
結局俺も最後の最期には、自分の事しか考えられなかった。
”ごめんなさい”……。
誰に対してか、分からない。
けど、俺は心の中でそう呟いて……。
依頼書に、契約を結ぶサインをした。
「……では。
また今日から働いてもらおうか、マオ?」
契約書に変わった依頼書を満足気に手に取って、アランが笑った。
”マオ”、そう呼ばれた瞬間。
これまで溢れていた様々な感情が、嘘みたいに消えて行く。
……。
ああ、そっか……。
これで、いいんだよね?
ボクガコウシテタラ、スベテガ、オサマル……。
「……はい。
必ずや御期待に応えてみせます。アラン様」
胸に片手を当てて、俺は軽く頭を下げて、依頼者に従う。
こんな状況でも、いつもみたいに夢の配達人としてのスイッチが入る。
……。
いや、違うか……。
多分、これが生まれながらに俺に与えられた役割。
何も望まず、自我を捨てて、その状況にあった生き方をすればいい。
そしたら誰も傷付けず、もう誰も悲しまない。
俺が全て引き受けて、空に持って行こうと思った。
……
…………。
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