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第8章(3)ヴァロンside
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【アランの別荘】
……もう、後戻りは出来ない。
たくさんの後悔も、今更振り返っても意味がない。
大切な人や親友を傷付けてまで選んだ道。
進むしかない。
アカリを助けるという目的を達成しなければ、全て無駄な事になってしまう。
……。
「お待ちしておりました」
通信機に送られてきていた指定場所までたどり着くと、門で警備をしていた黒スーツの男の一人が俺を建物の中へ導く。
アランから送られてきた、指定場所。
てっきり以前の長期任務で滞在したアランの本邸に呼ばれるのかと思ったが、どうやらここはアランが祖父から受け継いだ別荘のようだ。
今の深夜という時間帯や森の奥に位置するせいもあるが、本邸やアカリの祖父アルバートの別荘よりも暗く、何だか不気味な雰囲気が漂っている。
黒スーツの男に案内され別荘内を歩く間も、あまり人の気配も感じないし……。警備や使用人も最低限しかいない、という感じか。
「アラン様、失礼致します。連れて参りました」
黒スーツの男がある部屋の前で立ち止まり、ノックしながら声をかけると、「入れ」と短く答える嫌な響きの声が中から聞こえた。
その声に、多少収まっていた激しい感情がまたジワジワと溢れてくる。
開けられた扉を潜って部屋の中へ入ると、奥の椅子に座り机に頬杖を着いたアランが、不敵な笑みを浮かべて俺を見ていた。
「ずいぶん早かったな」
「アカリは何処だッ?!」
案内係りの黒スーツの男が下がり、部屋の扉がバタンッと閉まったと同時に発した俺達の言葉が重なる。
本当はすぐにでもアランに飛び掛かりたいが、今はアカリの安否確認が優先。
気持ちを抑えながら一定の距離を保って睨み付けていると、奴はフッと笑い俺に向かって手を差し出した。
「……まあ、そう焦るな。
まずは仕事の話をしよう?全てはそれからだ」
差し出されたアランの手が、”依頼書をよこせ”と動く。
……もう、後戻りは出来ない。
たくさんの後悔も、今更振り返っても意味がない。
大切な人や親友を傷付けてまで選んだ道。
進むしかない。
アカリを助けるという目的を達成しなければ、全て無駄な事になってしまう。
……。
「お待ちしておりました」
通信機に送られてきていた指定場所までたどり着くと、門で警備をしていた黒スーツの男の一人が俺を建物の中へ導く。
アランから送られてきた、指定場所。
てっきり以前の長期任務で滞在したアランの本邸に呼ばれるのかと思ったが、どうやらここはアランが祖父から受け継いだ別荘のようだ。
今の深夜という時間帯や森の奥に位置するせいもあるが、本邸やアカリの祖父アルバートの別荘よりも暗く、何だか不気味な雰囲気が漂っている。
黒スーツの男に案内され別荘内を歩く間も、あまり人の気配も感じないし……。警備や使用人も最低限しかいない、という感じか。
「アラン様、失礼致します。連れて参りました」
黒スーツの男がある部屋の前で立ち止まり、ノックしながら声をかけると、「入れ」と短く答える嫌な響きの声が中から聞こえた。
その声に、多少収まっていた激しい感情がまたジワジワと溢れてくる。
開けられた扉を潜って部屋の中へ入ると、奥の椅子に座り机に頬杖を着いたアランが、不敵な笑みを浮かべて俺を見ていた。
「ずいぶん早かったな」
「アカリは何処だッ?!」
案内係りの黒スーツの男が下がり、部屋の扉がバタンッと閉まったと同時に発した俺達の言葉が重なる。
本当はすぐにでもアランに飛び掛かりたいが、今はアカリの安否確認が優先。
気持ちを抑えながら一定の距離を保って睨み付けていると、奴はフッと笑い俺に向かって手を差し出した。
「……まあ、そう焦るな。
まずは仕事の話をしよう?全てはそれからだ」
差し出されたアランの手が、”依頼書をよこせ”と動く。
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