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第8章(2)ヴァロンside

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【夢の配達人隠れ家/マスターの部屋】

アランとの通信機が切れてから、この場にたどり着くまでの記憶なんてない。
多分、全速力で駆けてきた。

それなのに……。
俺はまるで機械のように冷めていて、息一つ乱していなかった。

目標を達成する為に、ただ……。
ただ動く人形のように、無表情で……。
部屋の扉を壊す様に蹴って開けると……。
中に居たのは、マスターとシュウだけ。

好都合だ。
他には見向きもせず、鞄を床に置くと、すぐさまターゲットである獲物を捕らえた。


「!っ……ヴァロンッ!?
何をする!シュウを放せッ……!!」

マスターが、今までに見た事がない程の慌てた表情と態度で俺に訴えてくる。

……。
でも、そんなの関係ない。
今の俺には、自分の目的しか頭にない。


俺は……。
シュウの首を片手で絞めながら壁に押さえ付けて、横目でマスターを見た。


「……依頼書。
アランの会社からの依頼書を出せ」

「ッ……」

マスターが一瞬ビクッと身体を揺らした後に、俺を睨むように見つめてくる。

いつもと違う俺の様子に戸惑いながらも、さすがはマスター。冷静に対応しようという様子だった。


「ヴァロン、話を聞け。
ワシもシュウも、お前に話したい事が……」

「聞こえねぇのか?」

でも俺は、マスターの言葉を遮って低い声で問いかけながら……。首を絞めている手と腕に力を込めて、グッと少しシュウの身体を浮かせる様に持ち上げる。


「時間がねぇんだよ、依頼書を出せ」

「っ……は、ッ……ぁっ!」

俺の行動に、苦しそうな呻き声を漏らすシュウ。


「……俺は本気だ」

俺はマスターを横目で見たまま、もう片手をシュウの頭に添えて言葉を続ける。
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