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第8章(1)ヴァロンside
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しおりを挟む『クククッ……。それは、お前次第だ』
片手で頭を押さえてうずくまる俺に、通信機の向こうから嘲笑うアランの声が響く。
『これから送る場所に24時間以内に来い。
依頼書にサインをして、お前一人で、だ』
……。
そこからは、もう頭の中なんて……空っぽだった。
道端でうずくまる俺に声を掛けてくれる人なんて、邪魔にしか思えなくて……。
まるで奴に洗脳されたみたいに、聴こえるのはアランの声だけで……。
『もし、可笑しな真似をしてみろ。
お前の大切な女、もうお前の元へなんて帰れない程の辱めを受けさせてやる』
アランの笑い声と共に、ブツッと切れる通信機。
……。
もう、何も考えられなかった。
アカリを助ける。
それだけしか、俺にはなかった。
……。
無意識に俺の瞳から流れていた涙が、地面に落ちた瞬間。
俺は通信機と鞄を掴んで、駆け出した。
足元に落ちていた白いバラには見向きもせず、俺は踏み潰して、走った。
……
…………。
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