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第8章(1)ヴァロンside
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しおりを挟む『……私が、誰だか分かるか?』
「……っ、アラン」
なぜ奴がこの通信機に連絡を取れたのかは分からないが……。忘れる筈もない響きの、声。
通信相手は、アランだ。
『ほぅ、覚えててくれて嬉しいよ』
「……。何の用だ?」
以前と変わらない、少し笑いを含んだ奴の声に、早く切ってしまいたい気持ちを抑えて問い掛ける。
すると、アランは飽きれたように『おやおや』と言って話し続けた。
『”何の用だ?”とは頂けないな。
我が社の依頼をなかなか受けてもらえないから、こうして直々にお願いしようと思ったんじゃないか』
「?……我が社の、依頼?」
俺には、何の事だかさっぱり分からなかった。
仕事をシュウに選んでもらっている、とは言っても自分へ届く指名依頼書くらいは把握している。
最近届いた指名依頼書のリストに、アランの名前など……なかった。
奴の名前があったら警戒して、見落とす事なんて絶対にしない。
それなのに……。
『とぼけちゃって、酷いよなぁ……。
まあ、貴様はあれだな。みんなに愛されて守られてるから、何も知らないんだろう?』
「……どういう、意味だ?」
”何も知らない。”……?
また、だ。
最後に顔を合わせた時と同じ様な、アランの意味深な言葉が……。俺の胸を騒つかせ始める。
通信機を持つ手が、震える。
『夢の配達人のマスターや、あの補佐の男が間に入ると邪魔だ。
だから、私はお前と個人的に取り引きしたい。その為に少々、強行手段を取らせてもらったよ』
「強行、手段?」
『……今から画像を送る。確認しろ』
奴の言葉の意味が分からず、問い掛けを呟く事しか出来ない俺。
そんな俺が耳に当てている通信機が、ブブッと揺れた。通信中に、メッセージや画像が受信された報せ。
……。
俺は自分の耳から通信機を離し、ゆっくりと画面を開く。
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