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第6章(3)ユイside
3-1
しおりを挟む可愛い女の子になろう。
女性として生まれながら、人とは違う珍しい容姿で苦労して……。
幼い頃から我慢ばかりで、そう在りたくてもなれなかったリディア母さんの代わりに、その夢を叶えてあげたかった。
王子様とお姫様が幸せになる絵本。
何度も、何度も……。
ページが擦り切れるくらいに読んだ世界。
引き込まれて、大好きだった。
……。
でも……。
でも、ね。
私がその絵本の世界で憧れたのは……。
お姫様やヒロインじゃなかったんだ。
「……リディア母さん。
……。ごめんなさい……」
自然と口から出た私の呟きに、「あ?」と目の前の男の手が一瞬止まる。
私はキッと決意を固めると、自分の胸倉を掴んでいる男の手を取って、思いっきり背負い投げで床に叩きつけた。
ガッタァーーーンッ……!!!!
激しく廊下に響く音。
私に倒された男は床に寝転んだまま気絶している。
……。
そう。
私がリディア母さんから貰った絵本で憧れたのは……。リディア母さんの望んだ姿じゃなかった。
王子様がお姫様を助け出す時に、一緒にお供をして手助けをする、戦士達。
その中でも、ある絵本で王子様に想いを寄せながらも一緒にお姫様を救出して、二人の幸せを願う女戦士が……。私は大好きだった。
憧れて、憧れて……。
私を育ててくれた先生や奥さんに相談して、こっそりと習い始めた武闘の数々。
でも、決してみんなには見せない。
友達や患者さんには、悟られない。
どんなに学んでも、強くなっても、実際に喧嘩したり暴力を振るったりはしないと決めていた。
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