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第1章(3)アカリside
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しおりを挟むあんなに恥ずかしかった筈なのに、濡れて揺れた様なヴァロンの瞳に見つめられて逸らせない。
いつもの射る様なヴァロンの強い眼差しにもときめくが、今日の穏やかな優しい瞳は胸が締め付けられる様に惹かれる。
……キス、したいな。
思わずそう思って、そっと目を閉じた。
普段なら、言葉にしなくても彼は私の頬に優しく触れて口付けてくれる。
しかし……。
「……先に、上がるから」
「!……え?」
「向こうむいてた方が、いいんじゃない?」
目を開けて耳を疑う私の頭をポンポンッと撫でて、ヴァロンは微笑みながらそう言った。
間違いなく自分の行動が生んだ展開だが、胸がズキッと痛む。
ショックで呆然としている私の顔を、ヴァロンは少しズラす様に横に向けると、ゆっくり背を向けて湯船から上がろうとした。
「……。
ヴァロン。怒っちゃったの?」
「!……え?」
「っ……!」
私は追いかける様に立ち上がると、問い掛けに振り返ったヴァロンに抱き付いて……。自ら唇を重ねた。
咄嗟にとってしまった行動。
勢い余って浴槽の隅にある段に尻餅を着いたヴァロンを、私がまるで押し倒す様に……。唇を奪っていた。
唇を離した私の瞳に映るのは、私の下で驚いた表情を浮かべる、きっと誰もがドキッとする程の色気溢れたヴァロン。
「っ……ゃ、っ……ごめんなさッ」
なんか色々と失敗ばかりしてしまう。
恥ずかしいのに、触れたい。
裸を見られたくないのに、離れないでほしい。
そんな矛盾だらけの感情が混ざり合って、どうしていいのか分からない。
「……わ、私が先に上がっ……。
!……きゃ、っ」
必死に考えた結果、自分が先に上がってしまおうと決めた私が動こうとすると……。
腕を掴まれて、引き寄せられて、ヴァロンの腕の中に閉じ込められる。
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